このほど、米国に逃れた中国人男性が海外メディア「大紀元」の取材に応じました。彼の口から語られたのは、自身が目撃し体験した数々の悲惨な出来事でした。
天安門事件で父が降格
男性は黄暁明(こう・しょうめい)さんといい、その父親はかつてリネン工場の副工場長を務めていました。1989年の天安門事件のとき、黄さんの父親は工場の全体会議で学生を支持して街頭に出るよう従業員に呼びかけました。その結果、黄さんの父親は逮捕され、一般の従業員に降格されました。
その後、黄さんの父親はリネンの製造に従事しました。毎日仕事が終わって家に帰ると、髪の毛や眉毛、そして体全体がリネンの細かい繊維で覆われていました。長年、粉塵が舞う劣悪な環境で働いたため、黄さんの父親はじん肺病を患うことになり、2002年頃から病状が徐々に悪化し始めました。
病状が進行するにつれて、黄さんの父親は呼吸がますます困難になり、しばしば息苦しさを感じるようになり、歩くのも非常に困難でした。2009年の終わり頃には、完全に寝たきりの状態になりました。父親の苦痛を和らげるために、黄さんとその家族は治療法を探し求めるようになりました。
臓器狩りの真相を知る
2013年、とある医師が黄さんに対し、肺移植手術を行うために江蘇省無錫市(こうそしょう・むしゃくし)人民病院へ行くことを勧めました。黄さんが無錫市の病院に連絡を取ると、病院側は、ドナーが不足していること、そして手術費用が100万元(約2,000万円)にまで上昇していることを告げました。黄さんは医師に、臓器のドナーに会えるかどうか尋ねたところ、医師は、それはできないと答えました。というのも、その病院は刑務所と提携しているからだというのです。
一方、医師は「ドナーの健康状態は非常に良い。お父さんはあと20年生きられる保証がある」と言いました。さらに「20年後にまた肺を交換すればいい」とさえ付け加えました。黄さんは医師に対し、なぜそれほど自信があるのかと尋ねると、医師は彼の耳元で「煉功をしている人だ(法輪功の修煉者である、という意味)」と言いました。この言葉を聞いて、黄さんは大きな衝撃を受けました。
黄さんがすぐ父親に電話をかけたところ、父親は肺移植を断固として拒否しました。「これはお金の問題ではなく、一人の人間の命の問題だ。自分のために他人の命を奪うことはできない」と父親は言いました。
黄さんは、父親が肺移植を受けなかった理由を話しました。黄さんの父親には少年時代から親しくしている法輪功の友人がいて、二人は固い友情で結ばれていました。父親は法輪功修煉者がいかに善良な人々であるかをよく知っていたため、彼らを傷つけたくなかったのです。
中国共産党は善人の敵
黄さんは、彼が知っている法輪功修煉者は皆、中国で悲惨な境遇に置かれていると語りました。法輪功を修煉する一人の友人は、地元で最も裕福な人物で、多くの従業員を抱える会社を経営していました。しかし、法輪功を修煉していることが原因で、中国当局から長年にわたり嫌がらせや恐喝を受け、彼の企業は衰退していきました。企業経営は極めて難しくなりましたが、黄さんの友人は30年以上にわたり共に働いてきた従業員たちを失業させたくない一心で、必死に会社の運営を続けています。
その友人の息子は政府機関で公務員になる夢を持っていました。しかし、政治審査に毎回不合格となっていました。もう一人の孫娘も公務員を目指していましたが、同様に政治審査に通らず夢を実現できませんでした。黄さんはさらに、法輪功修煉者であり、実業家でもある孫茜さん(そん・せん)の例を挙げました。孫さんはカナダ国籍を持っているにもかかわらず、信仰を放棄しないとの理由で中国で8年の実刑判決を受け、獄中で様々な拷問を受けました。さらに、中国当局は彼女の夫と結託し、孫さんが所有していた数億元相当の資産を奪い取りました。
黄さんは「中国共産党は善良な人を罰し、悪人を奨励している。このような政権に正当性があるはずはない」と断言しました。
悪夢のような社会
2022年5月、黄さんは重慶市を旅行していたとき、警察と民衆の口論を目撃しました。口論の最中、警察は突然拳銃を取り出し、民衆の胸を狙って発砲しました。この光景に黄さんは愕然とし、すぐにスマートフォンを取り出してビデオを撮り始めました。
殺された男性の妻は警察にしがみつき、なぜ夫を殺したのかと泣き叫んでいました。黄さんがビデオを撮影していることに気づくと、警察はすぐに黄さんの方へ駆け寄り、拘束して近くの交番に連行しました。そして、黄さんからスマートフォンのパスワードを聞き出し、ビデオを削除しようとしました。
黄さんはパスワードを教えようとしませんでした。それから黄さんは午後6時から深夜にかけて、複数の警察官から殴る蹴るなどの暴行を受けました。彼らは拳や足で暴行を加え、特に股間を狙って蹴りつけました。さらに、警察官らは電気棒を使いました。特に下半身に集中して電撃されたため、黄さんは失禁してしまったといいます。
黄さんはその夜の拷問を経て、わずか2週間で髪が半分以上白くなり、健康状態が急激に悪化しました。それ以降、彼は頻繁に悪夢に悩まされ、自分が再び殴られたり電撃されたりする夢を見ました。アメリカに移住しても悪夢に付き纏われているとのことです。黄さんは夜が怖くなり、悪夢で目を覚ますこともしばしばあります。
交番での拷問について、黄さんは中国当局に陳情しましたが、却下されました。陳情している間、黄さんは頻繁に脅迫電話を受けました。「お前は死にたいのか。陳情を取り下げなければ、命はないぞ」と脅されました。このことは黄さんを再び恐怖に陥れました。
黄さんは「中国共産党は根っこから腐敗している」と言いました。「彼らは人民と対立し、鎮圧する処刑人だ。中国警察の行動を見れば、この政権はもう救いようがないことが分かるだろう」
苦しむ中国人に救いの手を
幾度もの困難を経て、黄さんは2023年にアメリカに逃れました。最も印象的だったのは、アメリカの動物は人を恐れないということだそうです。黄さんは小鹿やリス、キツネ、そして様々な小鳥が共存する様子を見て、大いに感動しました。彼は「中国では想像できないことだ。動物たちの生き様を見れば、アメリカの人々がいかに善良であるかが分かる」と話しました。そして、これこそが人間らしい社会であると指摘しました。
黄さんは、中国の社会は極めて歪であり、一般庶民は高圧的な統治のもと、生き延びるために必死だと話しました。一方で、権力者たちは無駄遣いを続けています。
黄さんは、中国共産党は人類史上類を見ないほどの邪悪な独裁政権であり、中国の一般庶民は非常に苦しい状況に置かれていると強調しました。高圧的な統治はいつか崩壊するとし、苦しむ中国国民に救いの手を差し伸べて欲しいと話しました。
(翻訳・唐木 衛)