新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、多くの外資系企業が中国から徐々に撤退してきたが、最近ではその撤退の動きが加速しています。これに対して、7月15日から18日にかけて北京で開催された中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で有効な対応策を講じることができず、むしろ矛盾する信号を外資系企業に送っています。

外資系法律事務所が次々と中国から撤退

 最近、中国の公式データでさえ、中国の経済成長率が予想を下回っていることが示されています。一方、米中貿易戦争が続き、中国と欧米各国との関係がますます緊張し続けています。

 オブザーバーの中には、この内憂外患のなかで、多くの外資系法律事務所が中国から全面撤退を決定したことが、中国にとってさらに大きな打撃であると指摘する者もいます。

 中国の弁護士も中国在住の外国籍の弁護士も、中国経済の低迷が法律事務所の経営不振を招き、業績を悪化させていることを認めており、これが外資系法律事務所の撤退の主な原因となっています。

 また、中国共産党が制定した反スパイ法も、外資系法律事務所が中国から撤退する決意を固めさせました。

 世界有数の弁護士データベースである「Leopard Solutions(レオパード・ソリューションズ)」によると、中国における米国資本の法律事務所の事務所数は、2022年の643から2024年7月には545に減少したといいます。つまり、100近い法律事務所が閉鎖されたのです。また、最近の1年間でも、米国資本の法律事務所が中国市場から全面撤退する準備を進めている、またはすでに撤退したというニュースが後を絶ちません。

 ニューヨーク市に本部を置く、約1100人の弁護士を擁するアメリカの国際法律事務所「Weil, Gotshal & Manges LLP(ワイル・ゴッチェル&マンジス法律事務所)」は、昨年にまず北京の代表事務所を閉鎖し、今年3月には上海事務所の閉鎖を検討していると発表しました。

 元米国大統領のオバマ夫妻が勤務していた「Sidley Austin LLP(シドリー・オースティン法律事務所)」は、今年5月に上海の代表事務所の賃貸契約を更新せず、北京と香港の事務所のみを残すと発表しました。

 「Morrison Foerster LLP(モリソン・フォースター法律事務所)」も、今年秋に北京事務所を閉鎖すると今年の5月に発表しました。

 香港と北京に14名のパートナーと従業員を擁する「Dechert LLP(デチェルト法律事務所)」は、今年中に中国市場から完全に撤退することを発表しました。

 「Akin Gump Strauss Hauer & Feld LLP(アキン・ガンプ・ストラウス・アウアー&フェルド法律事務所)」、「Perkins Coie LLP(パーキンズ・コーイー法律事務所)」、「Orrick Herrington & Sutcliffe LLP(オリック・ヘリントン&サトクリフ法律事務所)」、「Lathem & Watkins LLP(レイサム&ワトキンス法律事務所)」などの米国の法律事務所も、今年上半期に中国のオフィスを閉鎖するか、閉鎖を検討していると発表しました。

 また、米国が中国の一部と見なしている香港も、中国市場からの撤退だけでなく、影響を受けています。米国の大手法律事務所であり、世界の主要企業、ファンド、金融機関の中でも重要かつ複雑な取引や紛争を代理する国際法律事務所「Mayer Brown(メイヤー・ブラウン)」は、現在の香港の業務を段階的に縮小する計画を示しており、段階的に閉鎖しています。

 中国から撤退していないとしても、中国に残り続けている米国の法律事務所は規模を縮小しています。レオパード・ソリューションズが発表したデータによると、中国にある米国の大手法律事務所73社のうち32社が過去10年間に弁護士の人数を減らしました。北京にある48社の大手米国法律事務所のうち、26社が2018年から毎年弁護士の人数を減らしています。

 ボイス・オブ・アメリカの7月26日の報道によると、外資系法律事務所の中国市場からの撤退は、中国の法律事務所にとっても競争相手が減るというわけではなく、むしろ厳しい状況に直面する前兆だといいます。四川省の川卓法律事務所の法定代表人である冉彤(ラン・トン)氏は、中国の法律事務所と外資系法律事務所の間は依存と協力の関係にあると述べました。彼は、「これは決して良いことではない。外資系法律事務所は外資系企業のためにサービスを提供しており、彼らは中国の機関、企業、一般市民とも接触する必要がある。だからこそ、中国の環境に慣れている私たちとの協力が重要であり、協力し合うことでビジネスが成り立つ。しかし、今や外資系企業はもうお金を稼げず、撤退している。その結果、外資系・地場系法律事務所ともに苦境に立たされている」とし、「最近の経済低迷によって、彼の事務所のビジネスも劇的に落ち込んでおり、数年前の好況時と比べて少なくとも半減している」と語りました。

 経済的な要因以外にも、中国の法執行機関の慣行が法律事務所の活動を困難にしています。冉彤氏はボイス・オブ・アメリカに対し、自社のクライアントの一人は、非常に優れた民間企業家であり、企業家協会の会長を務めるほどの人物でしたが、ある日突然、その企業家は政府部門から暴力団の一員であるとされ、逮捕されただけでなく、その企業が信託統治された結果、数千人の従業員が失業し、生計が困難になりました。

三中全会で外資系企業を引き止め、公式目標は逆

 中国の官製メディア「中国青年報」は7月26日の記事で、三中全会が終了した数日後に、アップルやボーイングなどの米国企業の幹部で構成された代表団が訪中し、彼らが多くの中国共産党幹部と会合したと報じました。記事では、「この時期に米国企業の重役が中国を訪れたことは、改革をさらに包括的に深化させる中国の政策的取り決めを学び、そこからウィンウィンのチャンスをつかみたいという彼らの熱意を示している」と述べました。

 しかし、ブルームバーグの7月26日の報道によると、ある情報筋が明かしたところによれば、中国の官僚は米国企業に対して中国でのイノベーションを促進するよう呼びかける一方で、三中全会で掲げた目標は、中共当局の私的会合では自給自足が最優先事項であることが強調されているといいます。この情報筋は、一部の米国企業の重役がこの二つの目標は矛盾していると感じていると述べました。

 記事は、米国企業が米中緊張の焦点となっていると指摘しました。米共和党候補のトランプ氏が当選した場合、米中という2つの経済大国の関係がさらに悪化する可能性があります。なぜなら、トランプ前大統領が巨額の関税を課すと宣言しているため、両国間の貿易額はほぼゼロになる可能性があります。

 中国外交部(外務省)の公式サイトによると、王毅外相は7月22日、北京でこれらの米国企業の重役と会合した際、中国の対米政策は安定性と継続性を保っているが、「守るべき利益、守るべき原則、そして堅持すべきボトムライン」があると述べました。

(翻訳・藍彧)