最近、大規模な洪水が中国の東北部を襲っています。7月下旬から8月初旬の短い期間で、洪水被害は遼寧省から吉林省、そして黒竜江省へと急速に拡大しました。

 現在、中国東北部の3つの省では多くの都市が深刻な洪水に見舞われています。遼寧省丹東市では鴨緑江(おうりょくこう)の水位が急上昇し、市内の道路が水浸しになっています。

 公式発表によると、上流のダムが放水をしていたとのことです。吉林省の臨江市(りんこうし)や長白(ちょうはく)朝鮮族自治県も浸水被害を受けています。黒竜江省の五常市(ごじょうし)や寧安市(ねいあんし)では、多くの家屋が浸水しています。

 中国国営メディアの報道によると、7月31日には東北部や雲南省、広西チワン族自治区で広範囲にわたる強い降雨が発生しました。東北部の牡丹江(ぼたんこう)、鴨緑江、東遼河(とうりょうが)では複数回にわたって洪水が発生しました。

 遼寧省では31のダムが全力で放水しています。吉林省では17の河川が警戒水位を超え、36のダムが安全容量を超えたため放水を行っています。黒竜江省では牡丹江の洪水が寧安市を襲い、およそ9千人が避難を余儀なくされました。

遼寧省、ダム放水で洪水被害悪化

 遼寧省気象局のデータによると、7月下旬、すなわち7月20日から29日8時にかけての降水量は平均215.9ミリメートルで、1951年以来の最高水準に達しました。強い降雨の影響により、遼寧省内の37の大型ダムと76の中型ダムでは水位の上昇が観測されました。当局はダムの安全を確保するため、遼寧省内の31のダムで放水を行いました。その結果、下流域の洪水被害がさらに悪化しました。

 現地メディアの報道によると、中国東北部の大河・鴨緑江の下流域に位置する丹東市(たんとうし)では7月29日の夜、河川の水が堤防を越えて市内に流れ込み、川沿いの地域が浸水しました。丹東市政府の担当者は中国メディア「新京報(しんきょうほう)」の取材に対し、「現在、上流の放水が原因で水位が高くなっており、川沿いの地域は封鎖され立ち入り禁止だ」と語りました。丹東市防災部門の担当者も「上流のダムでは放水が続いている。鴨緑江の水位は上昇する一方だ」と述べています。

 遼寧省では多くの地域が洪水被害に直面しています。丹東市の公式SNSアカウントによると、7月30日から31日にかけて、遼寧省の一部地域では大雨による被害が発生し、瀋陽市(しんようし)や大連市(だいれんし)、鞍山市(あんざんし)など11の都市で都市型水害が発生しました。撫順市(ぶじゅんし)や丹東市など11の市や県では山間部で水害が発生しています。さらに、鴨緑江や遼河(りょうが)などの大規模河川の流域では、支流の氾濫に対する注意も呼びかけられています。

吉林省、洪水で家屋が水没

 吉林省(きつりんしょう)気象局のデータによると、7月22日から28日までの降水量は平均168.7ミリメートルとなり、同時期の歴代観測値を更新しました。吉林省内の多くの河川では一部区間が氾濫し、水害が発生しています。7月29日までに、吉林省では8万人以上が避難しました。

 7月28日、吉林省東部を流れる鴨緑江で大洪水が発生しました。鴨緑江沿いの臨江市は深刻な被害を受け、川沿いの公園は洪水で水浸しになりました。都市部では内水氾濫が起こり、市内の学校は休校し、工場や企業なども臨時休業となりました。地元政府は、平屋に住む住民に対し高所への避難を呼びかけ、マンションの3階以下に住む住民に対しては高層階への避難を呼びかけました。7月28日夜までに、臨江市では7792世帯、18673人が避難しました。中国水利部の松遼(そうりょう)水利委員会によると、7月28日2時頃、鴨緑江では2024年の第2号となる洪水が確認されました。

 ネット上に公開された動画では、7月29日、吉林省長白県(ちょうはく)八道溝郷(はちどうこうごう)で発生した水害の様子が記録されています。多くの家屋が水没するなか、撮影者は「なんてことだ!大変だ!」と叫んでいますが、動画に救援隊の姿はありませんでした。

黒竜江省、稲作王国の悲劇

 中国の新華社通信が7月31日に報じたところによると、同日20時に中国水利部は黒竜江省についてレベル4の洪水緊急対応措置を発動しました。

 7月31日の中国水利部の洪水警報によると、継続的な降雨の影響で、8月初めに黒竜江省内を流れる松花江(しょうかこう)や嫩江(のんこう)といった河川の水位が上昇し、大雨にさらされた地域では河川が警戒水位を超え、洪水災害が発生する可能性があると予測されています。

 X(旧ツイッター)のある中国人ユーザーが投稿した動画によると、連日の豪雨により黒竜江省の牡丹江の水位が急上昇しました。7月31日、牡丹江の水位は寧安市でピークに達し、水位は堤防周辺の市街地をはるかに上回るほどの高さでした。寧安市の河川沿いの家屋や農地が浸水し、一万人近い住民が避難を余儀なくされました。人的被害に関する公式発表は現時点で確認されていません。

 7月31日、黒竜江省五常市(ごじょうし)の一日の降雨量は史上最高記録を更新しました。市内では内水氾濫が発生し、多くの通りでは成人の腰あたりまで水に浸かりました。

 ここで注意すべきなのは、五常市が中国の穀倉地帯であるということです。五常市の稲の作付け面積は黒竜江省の面積の10分の1を占めており、「稲作王国」と呼ばれています。

 昨年8月上旬にも五常市は洪水災害を経験しました。当時、五常市の250万ムー(約16.7万ヘクタール)の水田のうち、100万ムー(約6.7万ヘクタール)が浸水しました。浸水した水田はおよそ40%から50%の減産となりました。

 黒竜江省政府の公式サイトによると、7月31日から8月1日にかけて、黒竜江省の多くの都市で大雨が発生し、一部の都市では豪雨となりました。特に五常市を含む6つの市と県では、最も多い降雨量が記録されました。黒竜江省の緊急災害対策本部は7月31日7時にレベル4の災害対策を発動しました。

 現在、中国各地が洪水災害に見舞われています。「中国日報」の8月1日の報道によると、今年の気候は例年と大きく異なるそうです。豪雨の継続時間が長く、河川の氾濫時期も例年より早まっているとのことです。中国水利部の7月31日の統計によると、今年の雨季に入ってから、珠江や長江、淮河、黄河、松花江、遼河などの主要河川では合計25回もの洪水が発生しました。そのため、今年は統計を始めた1998年以来、最も洪水が多い年となっています。

 今年の中国では、多発する洪水が無視できない災害となっているのです。

(翻訳・唐木 衛)