今年の中国のゴールデンウィーク(5月1日〜5日)の期間中、多くの若者がSNSアプリ「微信(ウィーチャット)」のモーメンツ(朋友圏)で「朱珠と友人の中古バザー」の話題で賑わいました。

 台湾の歌手周杰倫(ジェイ・チョウ)の音楽CDが5元(約105円)、Dior(ディオール)のイヤリングが30元(約630円)、ミンクのコートが100元(約2000円)、クロコダイルのアンティークバッグが599元(約12700円)など、さまざまなお得な品々が目を引きました。入場料が20元(約420円)かかるにもかかわらず、会場の入口には良い品物を求める若者たちが押し寄せ、入場券をネットで転売する人も現れました。

 今では中古バザーが終わって2ヶ月以上経ちますが、「朱珠と友人の中古バザー」は依然としてソーシャルメディアや中古取引プラットフォームで話題となっています。

 これは、若者たちが「中古品」に夢中になっている一例でもあります。

中古品市場の活況

 中国のインターネット・ビッグデータ・プラットフォームであるQuestMobile(クエストモバイル)の最新レポートによると、若者が中古品取引市場の主要な顧客となっており、そのユーザー規模は急速に増加しています。

 2024年4月、中国の中古品電子商取引(EC)プラットフォームの月間アクティブユーザー数は1.78億人に達し、そのうち約5割近くは30歳以下の若者です。

 若者たちの中古品への夢中が中古取引市場の繁栄を促しています。中古品電子商取引プラットフォーム「閑魚(シェンユー)」などが急速に台頭し、多くの中古品実店舗も復興を迎えています。「閑魚」は中国のアリババグループが運営する電子商取引プラットフォームで、中国で最大級のユーザー規模を持つフリマアプリであり、日本のメルカリに相当します。中国のハイアール(海爾)のような家電メーカーなども中古市場に参入し始めました。

 これらの中古プラットフォームでは、若者たちは安価で質の良い日用品を見つけるだけでなく、希少(きしょう)で独特な宝物を交換することもできます。日用品から電子機器まで、生活必需品から高級ブランドまで、中古市場ではすべての中古品が値段を付けられ、縁のある買い手を待っています。若者たちは、中古品取引を通じて日々のニーズを満たすだけでなく、そこで喜びや達成感も見いだしています。

若者の消費観念の変化

 過去一年、中古品電子商取引市場は右肩上がりの成長を続けています。電子商取引のビッグデータベース「電数宝(でんすうほう)」によると、2023年の中古品電子商取引の取引規模は5486.5億元(約12兆円)に達し、前年同期比で14%増加しました。ユーザー規模は5.8億人で、前年比25%増となっています。

 いつの間にか、若者たちは中古市場の主要な顧客になっていました。しかし、多くの若者にとって最初の「中古品取引体験」は受動的なもので、その理由は単純、つまりお金がないからです。

 経済が不振な状況下で、若者の収入は生活費を賄えないのが普通で、生活費と消費欲の両方を満足させるため、多くの若者がより経済的な消費方法を探さなければならず、その結果、高コスパ(費用対効果)の「中古品」が彼らの新たなお気に入りとなったのです。

 若者が中古品に目を向けるのは、現実生活に対する妥協のように見えますが、実際には彼らがより現実的で合理的な消費観念を持ち、より責任ある生活態度を反映しています。若者たちはもはやブランドや新製品を盲目的に追求することなく、商品の実用性やコスパを重視し、低コストで高品質な生活を楽しむと同時に、積極的にグリーン消費や環境保護の理念を実践しています。

 若者たちが中古市場を選ぶ最初の理由は、節約かもしれません。しかし、時間が経つにつれ、彼らは中古品に夢中になる理由をより多く見つけるようになりました。

 個性を追求する一部の若者にとって、希少な古書、古着、古いカメラ、シングルレコード盤(ドーナツ盤ともいわれる)、ヴィンテージ家具などの中古品が持つ「歴史感」と「ストーリー感」は、彼らを惹きつける重要な魅力です。同時に、「あなたの不用品を私の宝物に変える」という過程で、友情が生まれることも多く、売り手も買い手も精神的に大きな満足感を得ることができます。

 ますます多くの若者が参入するにつれ、「中古品」と「不用品」の境界線も絶えず拡大しています。現在の中古市場は、家具、電子製品、衣類、化粧品などにとどまらず、手作り工房、ペットお見合い、苦悩や不安について語る場、スキル交換など、多くの新たで興味深いコミュニティや「微瑕(少しの傷・わずかの欠点)」プロジェクトを生み出しています。

 若者にとって、中古取引は単なる節約行為から流行の生活の代名詞へと進化しました。

買い手と売り手の信頼危機

 閑魚は今年3月12日に発表したデータによると、同プラットフォームの1日の平均取引額がすでに10億元(約210億円)を超え、過去1年間で1億人以上が閑魚に中古品や不用品を出品したといいます。

 しかし、一見繁栄しているように見える市場の裏側には、さまざまな問題も発生しています。

 早くも2018年には、ある顧客が閑魚で服を売って3000元を騙し取られたという体験談をウェイボー(微博)でシェアしており、検索ランキング上位にインしました。無料で消費者の紛争解決を支援する公共サービスプラットフォーム「黒猫」のビッグデータセンターの統計によると、2023年の中古プラットフォームに関連する苦情は10.5万件を超えているといいます。ユーザーの年齢から見ると、中古プラットフォームの苦情ユーザーは主に若者たちが多く、そのうち20歳から30歳のユーザーが6割以上を占めています。

 中古市場は玉石混交(ぎょうせきこんこう)でさまざまな人がおり、便利さの裏には多くの懸念が隠れています。多くの消費者は「中古品購入」で不愉快な経験をしたことがあります。実際、このような状況は珍しいことではなく、多くの中古取引には商品の説明が不正確であったり、アフターサービスがなかったりといった問題があります。

 中国のオンライン消費者紛争調停プラットフォーム「電訴宝(でんそほう)」のデータによると、2023年の中古品電子商取引の苦情は主に商品品質の悪さ、返金の難しさ、名前にそぐわない商品に集中しており、それぞれの苦情率が21.71%、18.65%、10.09%であり、苦情全体の半数以上を占めています。買い手がさまざまなセールス罠に不満を訴える一方で、多くの売り手も無力さと苦悩を感じているようです。

 中古業界がどこまで発展できるかは、信頼問題が常に鍵を握っています。このような混乱の中、多くのプラットフォームはブランドやメーカーとの協力を通じて、中古品の品質や出所のトレーサビリティを確保するよう努めています。
現在、消費市場は全体的に低迷しており、これが中古市場の発展をある程度推進しているとはいえ、長期的に見れば、消費者の消費意欲の低下は一次市場に影響を与えるだけでなく、中古市場にも影響を及ぼすでしょう。今後数年で、中古市場全体は厳しい再編成を迎えるかもしれません。

(翻訳・藍彧)