中国経済は不況に陥っており、全国で大量の店舗が閉店や譲渡を余儀なくされています。中国当局も安定を維持するための対策を強化しています。

 山東省臨沂市(りんぎし)では、店舗の貸し出しや譲渡を行う際には都市管理部門への登録が義務付けられています。

 また、同市の蘭山区にある警察交番の電子掲示板には「戦区」という文字が大きく表示されています。これは経済不況による社会の混乱を防ぐためのようです。

安定維持は戦争の如く

 山東省の男性市民、李さんは記者に対して、最近同省の臨沂市を訪れた際、都市中心部周辺の多くの沿道の商店が賃貸や譲渡を行っているのを目撃したと語りました。「沿道の譲渡店舗が増えており、市民が非常に困窮しているのが分かる。コロナの流行時期にも多くの店舗が譲渡されていたが、今ほど多くはなかった」

 目立っていたのは、店舗賃貸や譲渡のどの告示にも「総合行政執法局監制」と書かれており、カラー統一されたフォーマットで印刷されています。これは店舗所有者が都市管理部門から譲渡許可を取得し、公式に印刷された通知書を店舗の入口に掲示する必要があることを示しています。

 また、臨沂市公安局蘭山分局泰盛広場警察交番では、電子掲示板に「蘭山戦区」という文字が大きく表示されています。

 中国の公式メディアである新華社通信の記事によると、「戦時状態」という表現は軍事用語を借用しており、特に深刻で緊急性が高く、高度な動員と大規模な組織が必要な事態にのみ使用されるべきだと述べています。コロナのパンデミック対策において「戦時状態」という表現を使用することは可能ですが、各地が随意に「戦時状態」を宣言はできません。

 李さんは、現在臨沂市の監視カメラの密度が非常に高く、普通の電柱に5、6台のカメラが取り付けられ、複数の方向を向いていると述べました。これは交通違反を撮影する通常のカメラではありません。交差点にはコンテナ型の警備所も増設されています。このような「戦時状態」は景気後退後の安定維持に関係している可能性が高いと彼が分析しました。

 李さんは、「経済の衰退が非常に明らかになっている。一部の地域では30軒もの店舗が譲渡されています。飲食店、デジタルサービス、教育機関、ホテル、クリニック、クラブなどがあります。これらの店舗の周辺には物流センター、農産物市場、学校などがあり、いずれも人通りが多い場所だ」と語りました。彼はまた、政府機関も補助職員の削減を始めており、約10人中3人が削減されていると述べました。裁判所も例外ではありません。補助職員とは、一般的にアウトソーシング会社のスタッフのことで、さまざまな設備のメンテナンスなどに従事しているスタッフです。

卸売業者の苦闘と無力感

 山西省の男性市民、張さんは、多くの店舗が閉店していると述べました。例えば、太原市最大の繁華街である柳巷地区では、コロナ禍で通りの両側の店舗が大量に閉店しており、経済は深刻に衰退しています。彼の住むコミュニティのラーメン屋も最近閉店し、大きな南京錠が掛けられました。柳巷の海子辺は太原市中心の繁華街です。

 彼は、「海子辺東街はコロナのパンデミック前には非常ににぎやかで、衣料品店が多く、顧客が多いため、しばしば交通渋滞が発生していた。現在、すべての店が閉店した。これはコロナのパンデミック後の経済不振が原因だ」と語りました。

 張さんが提供した動画には、海子辺東街が閑散としており、歩行者が少ない様子が映っています。多くの店舗のシャッターが閉まっており、開いている店はわずか数軒です。

 山東省の王さんは卸売業に従事しており、川上のサプライヤーと川下の商人をつないでいます。彼は大紀元時報の記者に対し、大型卸売市場では、スナック菓子や家庭用品に関係なく、卸売業が厳しい状況にあり、業者はさまざまな方法で内部管理を強化し、新技術を導入して販売利益を向上させようとしていると語りました。彼は例として、ある卸売業者が以前は1200社の小売顧客を持っていましたが、ここ数年間で900社以上の顧客が仕入れを停止し、川上の仕入れ先もここ3年間で十数社が倒産したと述べました。「今年の旧正月明けの時期は比較的忙しかったが、4月になると状況が悪化した。多くの企業は内部管理を強化し、従業員に川下の顧客との接触頻度を増やすよう促している」

 「大型卸売市場では冷凍食品以外のビジネスはすべて利益を上げるのが難しい」と王さんは言います。王さんは、日用化学製品を扱う中間業者が、川上の商品の多くが新しく生産されたものではなく、膨大な商品の滞留がある一方、川下の顧客は新しい商品を求めており、この状況が中間業者にとって難題となっています。

消費のダウングレードで商売が困難

 中国のオンラインマーケットプレイス運営会社「同城58」のサイトでは、毎日大量の店舗譲渡情報が掲載されています。南京市秦淮区(しんわいく)侯家橋路のある店舗は、譲渡情報のタイトルに直接、次のように書かれています。「もう持ちこたえられない!故郷に帰って農作業を手伝う!沿道の店舗を低価格で譲渡するが、業種は問わない」

 あるネットユーザーは、「この時代に誰が起業するのか?私のような強い男でも、タンピン(寝そべり)したい。社会全体的な景気が悪く、お金を稼げない。私は故郷で1年以上観察したが、飲食店を開く勇気がなかったのだ。街中の歩行者の数は、開店している人の数よりも少ないからだ」と投稿しました。

 河北省のあるネットユーザーは、コロナのパンデミック以降、一般市民がお金を稼ぐのがそう簡単ではないと分かり、無駄遣いをしないようになったと述べています。特に飲食業界では、外から見ると食事をする人が多いように見えますが、実際には多くの飲食店がかろうじて生計を立てており、多くは損失を抱えています。大量のお金が飲食店に投資されているため、中途でやめることができず、苦しみながらも続けている人が多いです。

 広東省のあるコンビニエンスストアのオーナーは、最近投稿した動画で、今年は本当に多くの店舗が譲渡されていると述べました。ブランド店、スナック菓子店、自営店などがすべて譲渡されています。人が少ないからです。本当に消費者がいないからです。彼は現在、消費の縮小が顕著だと考えています。「ほとんどの人が会話の中で、必要なものは買うけど、必要でないものは買わないと言っている。子供や家庭の支出を除いて、必要な支出以外は基本的に他のものを買わない」

 人々は「店を開くことは、仕事に行くよりも良い」とよく言いますが、このオーナーは、「新規参入者が店を開くことはもちろんのこと、経験者でも店を開くのは非常に難しいと感じている。店を開く前に、まず家賃と人件費を考慮することを勧める。コストが高い場合、維持するのは難しく、家賃が低ければなんとか持ちこたえられるかもしれない」と述べました。

(翻訳・藍彧)