中国の労働教養所から手紙を出した孫毅(スン・イー、?―2017年10月1日)(イメージ:Leon Lee)

 カナダの若い華人の監督が製作し、日本においてもNHKで1年間に6回も放送された、中国政府の人権迫害の実態を暴いた2018年製作のドキュメンタリー映画「馬三家からの手紙」(Letter from Masanjia)が、2020年3月21日から日本で劇場公開される

 2月15日午後、公開を前に東京大学で「馬三家からの手紙」の上映とシンポジウムが開催され、監督の李雲翔氏も来日し、会場で映画の制作意図や製作過程について語った。会場では多くの参加者が感働で涙を流し、心の洗礼を感受したようで、シンポジウムは満場の拍手をもって終了した。

 この映画は、米国の一般女性のジュリー・キース(Julie Keith)氏がスーパーで購入したハロウィンの装飾品の中から、八千キロ離れた中国瀋陽の馬三家労働教養所から秘密裏に送られてきた救助要請の手紙を発見した事を発端に、馬三家労働教養所の暗闇を暴露した事から、国際社会の注目を集めた。

 シンポジウムでは、国際協力NGOセンター事務局長の若林秀樹氏が、監督の李雲翔氏・主人公の孫毅氏夫婦・発端となった手紙を発見し公開したジュリー氏に敬意を表し、この映画について「労働教養所の製品が祝日のプレゼントとなることを明らかにすることで、一般の人々にビジネスと人権侵害の関係を理解してもらうことが、『真の市民社会を推進する上で非常に重要だ』と考えている」とコメントし、映画の中のエピソードを思い浮かべながら、「孫毅は正義が勝つと言ったので、皆様が覚えておいてほしい」と涙を浮かべた。

 出席者は、孫毅氏が命に係わる程の拷問を受けた後、危機的環境の中、命懸けで救助要請の手紙を出し、最後には異国で亡くなったことを嘆いた。明治大学准教授の水谷尚子氏は「中国では多くの人権被害者が不慮の死を遂げており、真相を明らかにしなければならない」と訴えた。映画で日本語字幕を監修した東京大学准教授の阿古智子氏も「中国の人権に注目しなければならない」と警鐘を鳴らした。

 有名な在日メディアの中国語翻訳者の肖迪(仮名)氏は「撮れないものを絵に描いて表現し、見えないものや困惑しているものも明らかにし、監督が大きな難関を突破したのが印象的だった」と映画製作上のたいへんな苦労に深謝した。

 Cinecraft社長の高嶋芳男氏は「色々なことを考えさせられる。このような素晴らしい作品は、もっと多くの人、特に中国人に見てもらいたい」と絶賛した。続けて「こんな崇高な人格者が“奇妙な死”で最後を迎えたことは受け入れられない。観た人すべてがそう思うだろう。いかなる政府でも、組織はこのような善良な人々を保護しなければならず、善良な人々を排除するやり方は間違いだ!」と強く嘆いた。

 毎日新聞の編集委員で政治コラム『風知草』担当の山田孝男さんによると、「この映画はNHKで放送された約100本の映画の中で、視聴率・人気度共に1位を記録した」という。

ジュリー・キース氏(ウェブサイトのスクリーンショット)と孫毅氏の手紙(ジュリー・キース氏のフェイスブック)

「馬三家からの手紙」予告編:

(翻訳・柳生和樹)