中国経済は低迷し続け、失業率は高止まりしています。倒産、解雇、失業の重圧下で、一線都市の中産階級から三、四線都市の賃金労働者が苦境に立たされています。彼らは失業問題をどう見ているのでしょうか?失業によってもたらされる生活の困難や心理的重圧にどのように向き合っているのでしょうか?また、将来どのような計画を立てているのでしょうか?
未完成物件で苦しむ庶民
最近、あるネットユーザーが中国の微博(ウェイボー)で星の数で悲惨さを表す「2024年悲惨ランキング」を投稿し、話題になっています。日本では一般的に星の数が多ければ多いほど良いと認識されているが、この悲惨ランキングでは星が多いほど悲惨であるとされています。
悲惨ランキングでは、失業して仕事が見つからない状態は、悲惨さが最も低い、つまり1つ星にランク付けされています。さらに悲惨な状態には、貯金なし、住宅ローン、子育て、借金、ローン返済の催促、病気、親の病気、家の差し押さえなど、さらに悲惨な状況です。これは一種の皮肉であるが、現実にはこれらの困難のうち4つや5つに同時に直面している人々は少なくありません。
河南省の小都市で教育関連の仕事をしていた趙さん(女性)は、昨年末にアメリカに移住しました。彼女は「ラジオ・フリー・アジア」とのインタビューで、中国にいた頃、自分の周りでは多くの人が失業し、住宅ローンなどのプレッシャーに苦しんでいると述べました。同僚(女性)の一人は悲惨さの星がかなり多かったのです。
趙さんは、「当時、同僚は双子を出産した。家はもともと2DKで、両親と一緒に住んでいたため、新しい家を買おうとしていた」と述べました。コロナの流行前、趙さんはその同僚と一緒に地元の物件を見に行き、趙さんは購入しなかったが、同僚は購入しました。その後、その物件の建設が中断され、未完成物件となりました。この出来事は趙さんにとって大きな不安の種となりました。
趙さんは「家を買った同僚の生活全体が絶望的な状況に陥ったように感じた。彼女が家を購入するための頭金は、三世代の貯金を使い果たしたものだった」と語りました。趙さんによると、同僚の夫妻と双方の両親は全ての貯金を使い果たし、さらに多額の借金をして頭金を支払いました。その上、毎月住宅ローンを支払う必要もあります。さらに悪いことに、家を購入した後、同僚の義父が肺がんと診断され、しかも末期でした。義母は義父の介護をしなければならず、子どもたちの世話を手伝うことができなくなりました。その同僚自身もコロナ禍で失業しました。
趙さんによると、その同僚の義父は、「病気の治療を受けなくても、子どものために住宅ローンの返済を助けなければならない」と言いました。趙さんは、その同僚の家族全員が(同僚の)夫のわずかな収入だけで生活していた時期があり、頭金の借金や住宅ローン、親の医療費、子どもの養育費を支払わなければならなかったと明かしました。
趙さんは同僚の苦労を次のように語りました。「彼女(同僚)は大変だった、本当に大変だった。そのため、子どもたちが幼稚園に慣れて少したってから、家計を少しでも補うためにすぐに働き始めたのだ。そのような状況下でも、彼女は住宅ローンの返済を止めようとは考えなかった。彼女にとって、支払いを止めれば、それまでの努力が全て水の泡になるし、住宅ローンを払い続ければ、まだ家を手に入れる可能性があるからだ。彼女は『必ず引き渡しが行われる』と政府の言うことを信じていた。しかし、数年たっても引き渡しは行われていない。友人たちは彼女に陳情するよう勧めたが、彼女はそうすれば、家を引き渡さない理由がさらに増えるのではないかと心配していた」
趙さんの住む河南省は全国で最も未完成物件が多い地域の1つです。省都の鄭州市は「未完成物件の都」として知られており、未完成率は9%に達しています。
趙さんの夫の同僚(男性)も数年前に地元の恒大グループの物件を購入したのですが、未完成になってしまい、厳しい状況に直面しています。趙さんは夫の同僚の状況を次のように語りました。「彼(夫の同僚)の家は農村部にあり、彼が家を買うのは一層困難だった。この夫婦は一人がティックトックのセールスマン、もう一人がスーパーで働いており、収入は少なく不安定。彼の両親も農民工で、長年にわたる苦労の末に貯めた全ての老後の資金をつぎ込んで息子にこの家を買わせた。それは孫が大きくなったら都市で学校に通わせるためでもあった。不動産の営業マンは当時、子どもが小学校に入学する前に必ず家が引き渡されると約束したが、今、子どもはすでに小学3年生で、依然として引き渡しを待ち続けている。彼らが購入した物件のマンションはまだ建設が開始もされていないのに、いったいどうやって引き渡しが行われるのだろうか?しかし、彼らは依然として政府の言うことを信じており、『絶対に騙されることはない』と考えているようだ」
未来が見えない長沙市の底辺労働者
公式統計によると、中国の「フレックス雇用」の人数はすでに2億人に達しており、全国の雇用人口の27%を占めています。湖南省株洲市(しゅしゅうし)で生まれ、現在長沙市に住む孫さん(男性)もその一人に数えられるでしょう。
孫さんは以前、建設業で働いており、仕事は大変でしたが待遇は良く、毎月の収入は6000元から8000元(約13万円から17.7万円)でした。しかし、コロナの流行が始まってから、建設業界は非常に不況に見舞われ、一部の会社は業務があっても資金を回収できず、税務部門の監査もより厳しくなっています。最終的に孫さんが勤める会社の社長は全ての会社を閉鎖しました。2022年、孫さんと同僚たちは失業しました。2023年には中国の不動産業が全面的に崩壊しました。
孫さんは、「私の同僚たちは、DiDi(中国のタクシー配車サービス)や宅配業に就職したが、それでもプレッシャーが大きい。なぜなら、皆が失業したから、競争相手が増えているからだ。長沙では最近、配達員が暴風雨の中、浸水した道路に誤って入り、命を失いかけ、警察に救助された事件があった。一回の配達で5、6元(約108~130円)を稼ぐために自分の命を代償にするのは、全く必要ないと思う」と語りました。
20代の孫さんは、長沙市で6年近く働いており、結婚して子どももできて、家と車を購入し、根を下ろそうとしています。しかし今、彼は仕事を失い、住宅ローンと車のローンを支払わなければならず、大きなプレッシャーに晒されています。彼は合計70万元(約1500万円)のローンを抱えており、妻の看護師としての収入は日常生活しか維持できず、株洲市にいる両親にローンの返済を一緒に手伝ってくれるよう頼むしかありません。
孫さんは自分がまだ「幸運」だと感じており、「悲惨ランキング」では中程度に過ぎないという理由からです。家を早期に購入したため、未完成物件に遭遇せず、ローンも一部返済しています。
将来を見据えて、孫さんは非常に悲観的で、中国の経済が好転することは難しいと感じています。彼は、「過去に急速な発展を遂げすぎて、今後20年、さらにはそれ以降の経済発展の潜在力を全て使い果たしてしまったように感じる。将来の見通しについては、私は間違いなく不安の方が大きく、先が見えないからだ」と述べています。
(翻訳・藍彧)