近年、中国経済は困難に直面しており、多くの産業が不況に陥っています。航空業界も大きな打撃を受け、中国の四大国営航空会社は上半期に総計70億元以上の赤字を出しました。消費力の低下に加え、中国政府が制定した国家安全関連の法律も外国人観光客の激減につながっています。

 『第一財経』の報道によると、中国東方航空の赤字が最も深刻で、上半期の純利益は前年比で33億元から38億元減少する見込みです。次に中国国際航空が続き、上半期の純損失は約23億元から30億元に達すると予測されています。南方航空と海南航空はそれぞれ8.2億元から15.8億元の赤字を計上する見込みです。

 中国東方航空によると、上半期の赤字が深刻だったのは、一部の路線が現地の発着枠制限や空港の支援不足の影響を受けたためとしています。北米や日本などの国際市場の輸送力はまだ完全に回復していない上、国内の旅客輸送市場の競争が激化し、原油価格が高いなどの要因も赤字を拡大させています。

 それに対して、民間航空会社の状況は異なります。『経済観察報』によると、春秋航空は特に顕著で、上半期の純利益は12.9億元から13.4億元に達しました。吉祥航空と華夏航空も黒字を見込んでいます。

貧乏旅行の増加と航空券の値下げ競争

 中国の金融学者である賀江兵氏は、ラジオ・フリー・アジアとのインタビューで、航空会社が赤字の原因を為替レートの影響に帰するのは主要な理由ではなく、消費の低迷が主な原因だと述べました。

 国際旅行のピーク時期の栄光は過去のものとなり、旅行シーズンにはもっと多くの人が貧乏旅行を選択し、人々は観光地で写真を撮るだけで、できるだけ出費を抑えています。

 賀江兵氏はさらに、顧客を引きつけるために、中国の航空会社が価格競争を展開していると述べました。

 「国内の需要は非常に不足しており、ゴールデンウィークには航空券が値下げされ、普段はもっと大変です。国際的には、外国人の訪中が激減しており、特に『国家安全法』施行後、アメリカや台湾などの国々が相次いで旅行警告を発し、外国人や海外からの観光客に対する悪影響が出ています。」

 統計データによると、外国人観光客の数ははるかに落ち込んでいます。2 019年には9800万人近い国際観光客が訪中しましたが、2023年にはビジネス旅行や学生を含めて3500万人にとどまります。

 現在、多くの人々は消費力が低下しており、基本的な生活にも困難を感じているため、旅行には最低限の出費しかかけられません。

海外旅行よりも国内の貧乏旅行

 高価で手続きが煩雑な海外旅行と比較して、より多くの中国人がより安価な国内旅行を選んでいます。

 米コンサルティング会社オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)が発表した調査によると、昨年海外旅行に行った中国の高所得世帯のうち、14%だけが2024年に再び海外旅行を計画していることが分かりました。

 調査では、国内旅行を選ぶ主な理由として「国内旅行の選択肢が豊富」「海外旅行のコストが高い」が挙げられています。調査対象は月収3万元(約65万円)以上の中国家庭です。

 オリバー・ワイマンによると、中国国内の旅行の一人当たりの費用は1000元未満であるのに対し、香港や日本への旅行には数千元が必要です。各地を結んで四方八方に通じている高速鉄道により、中国人が小都市に旅行するのも比較的容易であり、たとえ2、3日しか時間がなくても旅行が可能です。ますます多くの消費者が小都市を選ぶ傾向にあり、オリバー・ワイマンはこれらの都市の旅行予約数が最も急速に増加していると報告しています。

 広西自治区南部の桂林市では今年、宣伝を強化し、観光補助金を導入して、地元の観光業を刺激しました。データによると、広西自治区は第一四半期に国内観光客を2.37億人受け入れ、前年同期比20.2%増加しました。国内観光収入は2581.76億元で、23.9%増加しました。

 従来の人気観光地以外にも、県レベルの観光地が新たなトレンドとなっています。旅行予約サイトTrip.comによると、2023年の中国の県レベルの旅行予約数はパンデミック前の2.6倍に増加しました。

 Trip.comのデータによると、今年のメーデー休暇期間中、揚州、洛陽、秦皇島、桂林、淄博などの小都市の旅行予約数は平均11%増加しました。安吉、桐廬、都江堰、陽朔、弥勒、義烏などの人気県域観光地では、平均36%増加しました。

 大都市以外の地域がより多くの観光客を引き寄せるためには、ソーシャルメディアを活用して積極的に宣伝活動を展開することが重要です。地方政府も観光客を誘致するための努力を強化しています。

 昨年、山東省淄博市のバーベキュー文化がソーシャルメディアで話題となり、多くの人々が訪れました。同様に、ハルビンの氷彫刻と独特の北方風情がソーシャルメディアで注目され、元旦の三連休中に300万人の観光客が訪れました。

 現時点では、観光客が中国の発展していない地域にどれだけ興味を持ち続けるのか、現地の持続可能な経済成長につながるのかは不明です。しかし、短期的には一部の地域に大きな影響を与えています。

外国人は訪れず、国内の人々は出国できない

 内モンゴル自治区政府の杜文前法律顧問によると、3年間のパンデミックが航空業界をほぼ壊滅させ、今年の航空会社も多くの課題に直面していると述べました。まず、上半期の国際原油価格の上昇により、航空業者のコストが大幅に増加しました。次に、為替レートの変動により、航空会社の燃料費や海外の空港費用が増加しました。

 また、パンデミック後の回復は遅く、予想された反発は見られませんでした。四大航空会社は互いに競争し、価格競争を展開しており、協力して利益を共有するという姿勢は見られません。さらに、国内では近年ナショナリズムが高まり、強烈な反外国人感情が投資環境を急速に悪化させ、多くの外国人を追い払いました。

 杜文氏は、「中国の政治環境の悪化により、外国人は安全を感じず、国際的な交流が減少しました。また、国内では公務員の出国が厳しく制限され、パスポートが回収されています。航空会社の飛行機は増え続けているのに、乗客は減少しており、赤字は避けられません。現在の赤字は一部に過ぎず、再編や破産が避けられない可能性があります」と述べました。

(翻訳・吉原木子)