中国メディアの報道によると、今年の上半期、中国全国で倒産した飲食店の数は105.6万軒に達し、昨年1年分のデータに迫っており、中国の飲食業界にとって「最も苦しい上半期」となっています。
また、米メディアの報道によると、中国の若者はお金を使うことを恐れ、「リベンジ的貯金」がトレンドになっているといいます。
100万軒以上の飲食店が倒産
中国の飲食業界に特化した新しいメディアプラットフォーム「飲食業界インサイダー(餐飲老板内参)」の7月3日の報道によると、2024年は中国の飲食業界にとって「最も苦しい上半期」になる可能性があり、多くの飲食店経営者は、旧正月以降、心の底から笑えたことがなかったでしょう。
北京では、2024年1月から5月までの飲食店の売上高は530.7億元(約1.2兆円)で、前年同期比2.7%減少しました。また、上海統計局が発表した1月から5月までの消費財小売総額データのうち、宿泊業と飲食店の小売売上高は609.34億元(約1.34兆円)で、前年同期比3.1%減少しました。
中国の企業信用調査を行う「天眼査(ティエンイェンチャー)」のデータによると、2024年6月30日まで、国内の飲食関連企業の新規登録数は134.6万社に達したが、倒産件数は105.6万社という驚異的な数字に達しました。2023年の全年では、倒産した飲食企業の数は135.9万社でした。したがって、2024年1月から6月までの倒産件数は昨年通年にほぼ匹敵しています。
北京のレストラン経営者
北京で雲南料理のレストランを経営している胡さん(男性)は、2022年に450万元(約9900万円)を投資しましたが、未だに元が取れていません。
胡さんは自分のレストランが2024年上半期に見舞われた変化について次のように語りました。「まず、旧正月以降、客足が以前より減少した。実際、昨年故郷に帰った多くの若者は戻ってこなかった。次に、1テーブルあたりの消費額が30%から40%減少するのが常態化している。5から6人用の個室では、以前は平均で700から800元(約16000円)の平均消費はごく一般的だったが、今では300から400元(約8000円)しか消費しないことが多い。個室以外の席の減少はさらに顕著で、2人で1品を注文するケースさえある。定番の人気メニューは42元(約900円)で、2人の客がこの1品とご飯2膳だけ注文して合計50元(約1100円)しか消費しない。これは昨年では考えられなかったことだ」
価格競争に勝てるのは?
飲食業界の不況は直接的に飲食業界内部の価格競争を引き起こしました。限られた顧客を自分のレストランに引き付けるために、各飲食店は競って値下げをしています。今年も価格戦争は続いています。しかし、各カテゴリーで「プライス・コントローラー」がひっそりと現れているようです。彼らは長い間潜伏し、ひそかに市場の動向を観察し、突然大幅に値下げして他の業者を困惑させます。
例えば、鍋料理の分野では、現在は南城香が業界トップです。同社の39.8元(約880円)の食べ放題は多くの高齢者を引きつけました。突如現れた南城香が、これほどの低価格で他の鍋料理業者を打ち負かすとは誰も予想していませんでした。南城香の売りは、「100%オリジナルカットの牛肉とラム肉で、合成肉は一切使わず、野菜は自由に食べられる」というもので、つまり、品質やコスパが良く、満腹できるというすべての顧客のニーズに的確に応えています。
一方、中国最大の火鍋料理店「海底撈(ハイディラオ)」も負けず劣らず、ハイディラオのサブブランド「小嗨火鍋(ショウハイヒナベ)」は、ハイディラオのお手頃版として知られています。開店以来、1人当たり80元(約1700円)前後と、庶民にも手頃な価格に抑えられています。今年の春先からは値下げが続き、現在の1人当たり価格は50から60元(約1100~1300円)で、さらに、39.8元(約880円)の平日ランチセットも提供しています。
このようにして、火鍋業界の価格は業界の先頭企業によって引き下げられました。
ウォーレン・バフェット氏は2011年の講演で、「企業を評価する際の唯一重要な要素は価格決定能力である。もし価格を上げても顧客が競合他社に流れないなら、その企業は良い企業だ。価格を10%上げる前に祈る必要があるなら、それは劣る企業だ」と述べました。興味深いことに、バフェット氏が言及したのは値上げの話ですが、現在のトレンドは値下げです。しかし、根本的な論理は変わっていません。経済が冷え込む時に値下げの能力を持つのは、優れた企業のみです。
中国若者の「リベンジ的貯金」
なぜ中国の飲食業界が生き残るために値下げに頼らざるを得ないのでしょうか?その根本的な理由は、飲食業界の消費を主導する中国の若者が倹約するようになったからです。
米CNBCによると、中国経済が不景気にある中、中国の若者はできるだけお金をためる「リベンジ的貯金」をしていると報じました。中国のソーシャルメディアをチェックすると、「リベンジ的貯金」がトレンドになっており、多くの若者が極端な月々の貯金目標を設定しています。
例えば、26歳のネットユーザー、「小宅宅(ショウザイザイ)」は、毎月の支出を300元(約6600円)に制限しようとしており、最近の動画では日々の食費をわずか10元(約220円)に抑えた様子が紹介されています。
また、一部の人々はソーシャルメディアで「貯金パートナー」を探し、貯金サークルを結成し、メンバーが貯金目標を守るように励んでいます。その他の節約方法としては、高齢者向けの地域食堂での食事が挙げられます。これらの食堂では、新鮮な食材を比較的安い値段で楽しむことができます。
上海を拠点とする中国市場研究グループ(CMR)の創設者兼マネージングディレクター、ショーン・レイン氏は、「現在の中国の若者は貯金意識が強い。10年前のように、稼いだ以上に使い、ブランド品やiPhoneを購入するために借金する若者とは異なり、現在の中国の若者はより多く貯金をするようになっている」と述べました。
「逆消費」や「みみっちい経済」といった流行語は、中国の若者が支出を抑えるもう1つの兆候です。前者はより意識的に支出を削減することを指し、後者は買い物時に積極的に割引やお買い得品を探すことを意味します。
ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査部門のクリストファー・ベドー氏はCNBCに対し、「(中国の)若者は他の人々と同様に経済状況が良くないと感じているかもしれない」と述べました。
ある専門家はCNBCに対し、特に若者にとって労働市場の厳しさが困難を増していると語りました。
ニューヨーク大学上海校の苗佳(ミョウカ)准教授は、「中国人がお金を使うことを拒否するのは、本当に現実的な現象だ。一部の若者にとっては、仕事を見つけられないか、収入を増やすことが難しくなっているからだ。彼らには少ない支出しか選択肢がない」と述べました。
飲食業界が現在直面している苦境から抜け出すには、より多くの雇用機会を創出するしかないようです。
(翻訳・藍彧)