2024年7月5日、湖南省洞庭湖で堤防が決壊し、多くの村が浸水し、5000人以上が緊急避難を余儀なくされました。甚大な被害が出ており、政府の防洪対策の不備が広く非難されています。中国の元メディア関係者の趙蘭健氏は『看中国』のインタビューで、2022年9月に85億元を費やして、建設された堤防が今では全く役に立っておらず、今回の洪水は政府の怠慢が引き起こした人災であると述べました。また、趙蘭健氏は、中国公式メディアの記者は、常に指導者が被災現場で指揮する姿の写真を撮ることで出世してきたが、最近ではその宣伝写真や動画の質も著しく低下していると嘆いています。
今回の洞庭湖堤防の決壊は、最初の10メートルから一気に226メートルに拡大しました。団洲郷の90%以上、約47平方キロメートルが浸水し、平均水深は5メートルに達しました。元々の農地は全て消失し、家屋は屋根だけが見える状態です。
2022年9月、政府は85億元を費やして洞庭湖の堤防を建設しましたが、2年も経たないうちに決壊しました。趙蘭健氏は、地元政府が決壊箇所に砂を噴射し、さらに被害を拡大させたと批判しました。
「決壊の修復には砂袋すら使わなかった。現場には2台の砂噴射機があり、決壊箇所に砂を噴射していました。しかし、砂の中に含んだ泥は洪水よりも密度が高く、堤防への破壊力が強い。洞庭湖の決壊は、このような急ごしらえの救援隊の雑な操作によって、226メートルに拡大しました。また、華容地区は浸水し、救援隊は夜通しモーターボートで捜索を行いましたが、タイタニックのような静寂だけが残りました。2日後、地元政府は世論の圧力に屈して、全力で決壊箇所を修復しようとしましたが、既に手遅れでした。両岸の水位が同じ高さになってしまったため、修復は全く意味を成さず、被害を食い止めることができませんでした。」
また、趙蘭健氏は、中国当局はまた大量の人員を深夜に堤防修復現場に雇用し、形式主義的なショーを行っていると批判しました。
「修復に関係のない人々が、夜中に赤旗を振り回してスローガンを叫んでいました。この奇妙な光景は、ネットユーザーから精神疾患の発作として嘲笑されました。消極的な怠業は意図的な殺人と同じです。無効な修復は全てパフォーマンスショーのためです。これが醜悪な社会主義の大躍進です。」と趙蘭健氏は言いました。
「悪いことを喜ばしいこととして扱うようなやり方は共産党が政権を握って以来の一貫した手法です。このような人間性を失った社会体制では、全てが白黒逆転しています。世論操作を利用して社会の注意をそらし、苦難や悲惨な現実を覆い隠します。国民を虚偽の幸せの中に誘導し、他人の生命損失を称賛の声に変えることは、人類に反する行為です。」
趙蘭健氏は、習近平政権は災害による人命と財産の損失に対して、歴代の政府の中で最も無関心であると考えています。「形だけでも装う態度すらなく、実際の行動は全く期待できません。」と述べました。
趙蘭健氏は、かつて北京で業務研修では、必ず公式メディアの有名な写真記者の「作品」を学んだと回想していました。これらの写真記者は1980年代から2000年代にかけて、ほぼ全員が防洪救援の「感動的」な写真を撮影してきました。
「涙と血の救援シーンを撮影することは、中国の写真記者の入門必修課でした。」「習近平以前の指導者たちは、防洪救援の機会を捉えて自己PRを行っていました。中央指導者や省市の書記たちは、一線に出向くことを名誉とし、自身の昇進や名声の政治資本としていました。そして、記者が上手に指導者の姿を撮影し、それを『光明日報』、『中国青年報』、『北京青年報』などの公式メディアの一面に掲載することができれば、その記者も一生の成功を収めたことになります」と趙蘭健氏は感嘆しています。
「私が知っている有名な写真記者の中には、一枚の写真で成功を収めた人が多くいます。衣食住に困らず、永遠に栄光に包まれます。私生活では指導者との関係を築き、中央テレビの番組司会者と結婚することも可能です。指導者の写真を上手に撮影すれば、中国政府のシステム内で何でも手に入れることができます。防洪写真を通じて、全国最大のニュース写真ポータルサイトのオーナーになり、億万長者になった人もいます。これはこれらの写真の後光効果です」
「しかし、習近平時代には水害がどれほど深刻でも、何人が死亡しても、全く無関心です。どれだけの人命が失われ、どれほどひどい洪水が発生しても、習近平は常に欠席しています。彼の能力不足が原因で、近年の中国の大規模水害では政府が完全に機能せず、被災者の死活を顧みません。夜中に洪水を放流し、事前通知もせず、国民を自生自滅の状態に置きます。水害発生後に行う唯一のことは、全国での情報統制です。被災者の声や惨状は一切発信されません」と趙蘭健氏は述べました。
7月5日に洞庭湖の堤防が決壊した後、趙蘭健氏は現場にいた人が取った動画に驚愕しました。「こんなに危険な状況にもかかわらず、現場の作業員は全く危機感を持っておらず、表情も真剣ではありませんでした。まるで社会主義人民公社のように散漫な操作でした。一方、子供の頃、鉄道修理員が大洪水と対抗する緊張した姿勢は、私の記憶に永遠に刻まれています。」
趙蘭健氏は、子供の頃に何度も遼河の洪水を経験し、鉄道システムが完全に戦闘態勢に入る様子を目撃しました。「リーダーから作業員まで全員が第一線に立ちました。天然巨石、コンクリートアンカー、鉄の籠、砂袋、大型クレーン、大型ローダー。これらは1970年代にはすべて第一線で見られました。しかし今回の洞庭湖の決壊では、最初の10メートルの決壊時にこれらの物資は全く見られませんでした。現場には数台の車が埋め込み物として決壊口に投げ込まれただけで、車の中には散砂が詰め込まれ、水に触れるとすぐに流されてしまいました。この動画は洞庭湖の決壊が完全に散漫な態度によって対応されていることを示していました。」
(翻訳・吉原木子)