中国北東部の吉林大学の中国・ロシア専門家ビョルン・アレクサンダー・デュベン氏は、米国メディアとのインタビューで、習近平氏の欧州訪問の成果についてコメントしたところ、辞職を強いられ、期限内に中国を離れるよう求められました。管理者は「これは上からの指示であり、交渉の余地はない」と告げました。
習近平氏への発言で国外退去が強制される
ボイス・オブ・アメリカの29日の報道によると、事件はビョルン・アレクサンダー・デュベン博士のインタビュー記事が掲載された翌日に発生しました。吉林大学はまず、「大学側は国内外のメディアによるいかなる形式のインタビューにも責任を負わなければならない」とデュベン博士に伝えました。その数日後の朝、デュベン博士は翌日に予定されていた2つの講義の準備をしていたところ、「使用可能な教室がない」として当日の講義が中止される通知を受けました。さらに30分後には、すべての講義と授業が無期限にキャンセルされ、即刻に吉林大学での職務が終了することを告げられました。
デュベン博士は、中国の高級外国人材ビザ(Rビザ)を保有しており、有効期限は2033年まででした。しかしながら、彼はこのビザが取り消され、残り2週間しか中国に滞在できない「短期滞在(人道的)」ビザに変更されると告げられました。短期滞在ビザはビザの種類ではなく、中国に非常に緊急で必要な理由で入国するための手段です。例えば、葬式に出席するためや、重病の家族を見舞うためなどです。
大学はデュベン博士に「自主的に辞職する」か「辞職を強制される」かのどちらかを選ぶように求め、さもなければ何らかの懲戒調査や裁判を受けることになると告げました。デュベン博士は「これは避けられない解雇である。私は自主的に辞職するつもりはなかったが、解雇に異議を申し立てることは、実際には中国当局との対立を意味し、そのリスクが大きすぎる上、いずれにせよ同じ結果にしかならないだろうと懸念した。だから私はあきらめた」と述べました。
デュベン博士が辞表を提出した後、大学側は5月30日までに中国を離れるよう通知し、今後中国に再入国しようとしても入国を拒否されると告げられました。管理者は「これは上からの指示であり、交渉の余地はない」と明言しました。
デュベン博士は吉林大学で9年間働いていました。ボイス・オブ・アメリカが5月11日に掲載した「習近平の欧州訪問の成果は何か?」という記事で、デュベン博士は、中国当局が「米国と欧州連合(EU)の間にくさびを打ち込むことは、間違いなく北京の基本的な長期目標の1つであり、これがおそらく習近平氏が自ら訪問した理由の1つであるだろう」と述べ、「長年にわたり、中国(当局)は欧州諸国を米国との同盟から引き離そうと試みてきたが、これまでのところほとんど成果はなかった」と語りました。
デュベン博士はまた、「習近平氏の行程には興味深いことにブリュッセルが含まれていないが、これは意図的に無視された可能性が高い」とし、「フランス大統領のエマニュエル・マクロンが欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長をパリに招待して習近平氏との会談に参加させたにもかかわらず」と述べました。
ブリュッセルはEUの事実上の首都であり、多くの主要なEU機関が置かれており、その名前はEUおよびその機関を指すのによく使われます。
デュベン博士はまた、ロシアのウクライナへの侵攻についてもコメントし、「長い間、ロシアは基本的な軍需品が不足していたが、現在では多くの供給不足は解消されている」とし、「ロシアが今最も必要としている部品は、中国が提供できるが、追跡が難しい特定の軍民両用部品である」と指摘しました。
ボイス・オブ・アメリカは、デュベン博士が遭遇した出来事は中国共産党の厳しい言論統制と、中国のますます閉鎖的になっている言論環境を反映していると述べました。
外国人に対する言論の自由の抑圧
近年、中国共産党は内憂外患(ないゆうがいかん)に直面し、その政権を強化するためにあらゆる手段を尽くし、外国人の言動を制御し、世界中の言論空間に圧力をかけることで、その強圧的な手を世界に広げています。
台湾の国防部(防衛省)のシンクタンク「国防安全研究院(INDSR)」配下の国防戦略・資源研究所の劉姝廷氏政策分析員は、2022年に発表した論文で、中国当局が中国に駐在する外国人の言論の自由を抑圧する手段を詳細に分析しました。
1. 法的制裁による異議者の国外退去
「国境なき記者団」は、中国当局が政治的要求に適合せず、中国共産党の利益を損なう国内外のメディアに対して、記者証の取り消し、取材許可の撤回、ニュースサイトの遮断などを行っていると指摘しました。例えば、新型コロナウイルスのパンデミック中には、ウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズの記者証が取り消され、英国放送協会(BBC)の取材も禁止されました。また、欧州最大の中国研究シンクタンクである「メルカトル中国研究所」や、新疆問題に長年関心を寄せてきた外国人学者を制裁するなど、外国人の反体制派のビザ発給を妨害したり、ビザの延長を拒否したりして、反体制派の入国を制限しました。
2. 法的資格を利用した外国人の思想統制
2022年、中国教育部(省)、科技部(省)、公安部(省)、外交部(外務省)は、「外国籍教員の招聘と管理弁法」を発表・実施し、外国籍教師が採用条件として歴史、国情、文化などの思想(イデオロギー)教育を受け、合格することを義務付けました。また、外国籍教師の信用記録制度を設け、外国籍教師の授業内容や素行を厳密にチェックし、中国共産党の利益を損なうと判断した場合は、直ちに解雇し国外退去を命じることとしました。
3. 行政監視による外国人の言論制御
中国の外国特派員協会(FCCC)の報告によると、中国当局は中国国内の外国メディアの記者に対して監視、追跡、取り調べ、拘留を行っています。新型コロナウイルスのパンデミック中には、国家防疫監視システムを通じて、外国記者の敏感地域への取材を妨害・阻止し、強制隔離などの行政措置を脅威として用いました。 2021年3月31日、BBCのジョン・サドワース北京特派員が、新疆ウイグル自治区の人権問題に関心を寄せたために、中国当局による長期にわたる監視、妨害、嫌がらせを受け、中国からの退去を余儀なくされました。
吉林大学のデュベン博士が遭遇したのは、3つ目の手段、すなわち行政監視であると考えられます。中国共産党の支配下にある中国に入った者には、言論の自由などはないようです。
(翻訳・藍彧)