今年の第1四半期、中国では倒産した外食店の数は46万軒に達し、前年同期比で232.6%増加しました。その一方で、支出を節約するため、「貧乏人向けメニュー」を選ぶ消費者もますます増えています。
中国の飲食店の窮境(きゅうきょう)
中国国家統計局の最新データによると、今年の第1四半期に中国全国のレストラン関連企業の営業停止や倒産した件数は45.9万件に達しました。そのうち、1月には16.7万件、2月には11.2万件、3月には18.0万件が倒産しました。2023年の第1四半期には倒産したレストラン関係企業は14万件以下であり、2024年の第1四半期の倒産した件数は前年同期比で232.6%増加しました。
中国の飲食業界に特化した新しいメディアプラットフォーム「飲食業界インサイダー(餐飲老板内参)」は4月20日の投稿で次のように述べました。「昨年の起業ブームを経て、今年の第1四半期のレストラン市場は急速な淘汰期に入っている。苦境から脱する突破口を見つけられなかった飲食店のオーナーたちは、厳しい現実に淘汰されるしかない」
既存の大手レストランも苦境に
新しく起業したレストランだけでなく、今年の第1四半期には多くの有名な老舗や大手飲食企業も次々と廃業しました。
新中国式スイーツのトップ2のブランドである「虎頭局(とらがしらきょく)」と「墨茉点心局(もくまてんしんきょく)」は、約2年近くの苦闘の末、今年の初めに「虎頭局」は破産と清算を申請し、「墨茉点心局」は会社の経営許可を取り消しました。また、鍋料理のチェーン店である「呷哺呷哺(しゃぶしゃぶ)」や茶飲料チェーン店である「奈雪的茶(ナイシュエのチャ)」などの大手が創立したサブブランドも大規模に閉店、休業しました。
呷哺呷哺グループのサブブランド「趁焼(焼肉店)」は初の業績公開時に、「月間平均売上高が250万元(約5500万円)を超え、年間店舗売上高が3000万元(約6.6億円)を超えた」と驚異的な成績を示しました。しかし、焼肉市場の急速な変化や若者の消費傾向の変化に伴い、趁焼は小規模で安価な焼肉店には対抗できず、多くの店舗が閉店を余儀なくされました。
ある外食業界の従事者は「客が来ない、本当に来ないのだ。昨年は一昨年よりも悪い、今年は昨年よりも悪い、今年3月末には記録的な低水準を更新し、売上が全くない」と嘆いています。
消費者の変化
飲食店は業界参入が容易なため、この業界へ進出する起業家が増えています。独立起業した多くの起業家は、職を失って就職先を見つけられなかったか、投資したい資金は手元にあったものの、どこに投資すべきかが分からなかったという状況から、開業前に「民は食を以て天と為す(食は人々にとって最も重要なもの)」という考えをもとに飲食店の開業を選んでいます。しかし、中国経済が全体的に下降線をたどっていることから、人々の収入も全般的に減少しており、飲食業界の従事者はますます多くの厳しい状況と失望に直面しています。
中国東北地域の吉林省にある焼肉店のオーナーは、「年々厳しくなっている。みんなが販促プロモーションを行っていて、2人前で99元(約2000円)のセットメニューをあちこちに見かける。一見多くの人が並んでいるように見えるが、それはすべて偽りの繁栄であり、実際に儲かるかどうかはオーナーだけが知ることだ。低価格競争でまず相手を倒し、次に結局自分自身も倒産してしまう」と述べ、「以前は赤字で商品を売って、人気を集め、将来の商売繁栄につなげる。つまり、赤字でも宣伝効果があったが、今では赤字でも宣伝効果すら得られない。ほとんどの場合、最終的には手元に残っているわずかの貯金を使い果たしてしまうか、借金までしてしまうのだ」と語りました。
収入の減少に伴い、中国の若者は生活費を節約するようになりました。昨年登場した「貧乏人向けメニュー」と呼ばれる低価格で大ボリュームのセットメニューが、中国の若者の間で人気を集めています。
貧乏人向けメニューの実態
ある若者の1日分の「貧乏人向けメニュー」の中身がネット上で広まっています。朝食には3元(約66円)の食べ放題で満腹になるまで食べ、昼食にはケンタッキーの19.9元(約440円)の「OK定食」を選び、午後には9.9元(約219円)のコーヒーを飲み、夕食にはコンビニで10元(約220円)の麺類セットを購入、夜8時半以降には生鮮スーパー「盒馬鮮生」で割引商品を買います。
中国の若者向けのライフスタイルプラットフォームである小紅書(シャオホンシュー)では、さまざまな「貧乏人向けメニュー」攻略法が溢れています。
データによると、昨年6月1日から12月1日の半年間において、小紅書での「貧乏人向けメニュー」関連の投稿は、1日平均「いいね」数が2366件だったが、2024年初頭から3月中旬までの1日平均「いいね」数は5799件に達し、特にここ半月では1日平均「いいね」数が8265件に急増し、昨年に比べて4倍に増加しました。
「貧乏人向けメニュー」は本当に儲かるのでしょうか?
実際には、「貧乏人向けメニュー」を楽しむ若者が本当に貧乏なわけではなく、単に「非必要なもの」にお金を使わないという意識が強くなっているのです。ニールセンIQが発表した「2023年中国消費者インサイトおよび2024年展望」報告書によると、回答者の43%が「総支出額を厳しく管理する」と答え、37%が「最適価格や低価格の商品を求めて消費スタイルを変更する」と回答しています。
「貧乏人向けメニュー」の人気の背後には、若者たちの「コスパ」への追求があるのです。
現在、飲食業界はどの分野も非常に競争が激しく、若者の支持を得るために多くの企業が総力を挙げています。西洋風のファーストフード業界では、以前はマクドナルドやケンタッキーだけでしたが、現在では多くのブランドが競い合う状況になっています。マクドナルド、ケンタッキー、ディコス、ウォレスなど、これらはすでに若者たちの第一選択肢となっており、選択肢が増えたことで、各ファーストフード企業が得られる客足は自然に減少します。
マクドナルドやケンタッキーが低価格の「貧乏人向けメニュー」を提供しても、それ自体ではあまり利益を上げられないが、顧客は非常に満足しています。マクドナルドやケンタッキーは、このようなメニューを通じて客数を増やし、他のメニューからの利益を狙っています。
財通証券研究所のアナリスト、呉文德氏は、「消費者の意識の変化により、現在の環境はパルス消費の状況を呈している。祝日には集中して消費し、日常では比較的理性的・保守的。また、二極化が進み、顧客の流れはますます希少で貴重なものとなっている」と述べました。
以上のように、中国の飲食業界は厳しい状況に直面しており、多くの企業が閉店を余儀なくされています。特に若者の消費観念の変化が顕著で、低価格で高品質な商品が求められています。この業界の動向に注目が集まります。
(翻訳・藍彧)