ワシントンに拠点を置くアメリカのシンクタンク、アトランティック・カウンシル(Atlantic Council)が6月13日、報告書を発表しました。この報告書には、中国当局の未公開政府文書が含まれており、中国共産党がその理念、政治モデル、党文化などを他国に広めようと試みていることが示されています。報告書によると、2021年から2022年にかけて、中国当局は計795回のオンラインセミナーに資金を提供し、経済発展のための権威主義体制の重要性を宣伝しており、これらのセミナーは2万人以上の参加者を集めました。

 報告書は、中国商務部傘下の国際商務官研修学院(AIBO)の1,000以上の文書を引用し、海外の中国大使館がセミナーへの招待の指示を出したこと、招待された国のほとんどがグローバルサウスの新興国であることを指摘しています。

 報告書によると、これらのプロジェクトは中国の大学や国家研究機関が主催しており、国家統治、治安管理、メディア、情報統制などのテーマを網羅しています。台湾の雲林科技大学財政金融学部の鄭政秉(てい・せいへい)教授はインタビューで、中国は過去数十年にわたり体系的に自国のモデルを広め、経済的成功を装ってグローバルサウスの国々に影響を与えようとしていると指摘しました。

 報告書は、多くの国が研修や経験共有を通じて国際的な拡張を試みていますが、中国共産党のモデルは政治的イデオロギーに深く根ざしていると指摘しています。鄭教授は、これは中国当局が組織的に浸透し、世界を改造しようとする野心があることを示しており、西側社会は警戒すべきであると述べています。

 研修では毎回、中国共産党のイデオロギーや組織、そして中国における「成果」を簡単かつ概括的に紹介しています。これは、参加者を誤解させ、中国が経済的課題を克服したのは独裁政治環境のおかげであると参加者に思わせるためです。専門家は、実際には中国当局が偽情報を拡散しているのだと述べています。

 報告書はまた、研修のテーマにはブロックチェーン技術や環境保護なども含まれているが、大量の中国当局のプロパガンダも含まれていると指摘しています。鄭教授は、アメリカとその同盟国が団結して対応し、グローバルサウス諸国に中国共産党の本質を理解するよう促し、その浸透に対抗する必要があると述べています。

中国共産党がアフリカに統治手法を伝授?

 中国当局は最近、アフリカの6カ国の与党に若手幹部を養成するため、4000万ドルの資金を提供し、中国共産党の統治モデルを輸出しようとしています。

 香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、タンザニアにあるムワリム・ジュリウス・ニエレレ・リーダーシップ・スクール(Mwalimu Julius Nyerere Leadership School)は2022年3月に正式に開校しました。この養成校は南アフリカ、タンザニア、モザンビーク、ジンバブエ、アンゴラ、ナミビアの6か国が共同で出資しています。中国当局の対外連絡部(中聯部)が4000万ドルの資金を提供し、今月初めの研修コースも担当しました。

 ボイス・オブ・アメリカ(VOA)はアナリストの話を引用して、この養成校は「政党外交」を強化するだけでなく、アフリカ諸国に「中国(共産党)モデル」、特に「一党独裁」や「党による政治の主導」などの統治手法を伝授しようとしており、これにより、「中国共産党中央党校のアフリカ分校」とも言える存在となっていると報じました。

 中国当局はまた、2022年6月にはアフリカの角(つの)諸国を招いて、エチオピアで第1回「安全保障・ガバナンス・発展会議」(Conference on Security, Governance and Development)を開催し、ケニア、ジブチ、ソマリア、ウガンダ、スーダンなどの6か国が高官を派遣し、出席しました。中共の公式発表によれば、中国とアフリカの上層部が会議で「地域の安全保障、開発、ガバナンスの課題について意見交換」を行ったとのことです。

静かな侵略 豪シンクタンクが中共の操作を暴露

 オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」(ASPI)の最新の研究報告書によると、近年、中国当局の民主国家に対する「サイバー影響力工作」はますます頻繁に、精密かつ効果的に行われています。外国の世論を操作する政府機関や企業もますます増えており、チー・アン・シン・テクノロジー・グループ(奇安信科技集団股分有限公司)などは、中国当局がソーシャルメディアを通じて外国の世論を操る手助けをしています。

 ASPIのアナリストで、報告書の共同著者であるアルバート・チャン(張羽揚、Albert Zhang)氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、中国の政府機関が海外の世論操作に以前よりも多く関与していると述べました。その中には、中国軍の戦略支援部隊や国家安全部だけでなく、中国共産党の中央宣伝部、公安部、中央サイバーセキュリティと情報化委員会弁公室、国家インターネット情報弁公室など、元々内部監視機関であった機関も含まれています。

 チャン氏によると、中国当局は西側諸国のアカウントに偽装してソーシャルメディア上で世論を操作しています。例えば、2021年には西側諸国のアカウントに偽装したソーシャルメディアアカウントのグループが、北京時間の勤務時間内に集中的に投稿し、アメリカ当局が中国や他の国のコンピュータネットワークをハッキングしたと非難していました。しかし追跡調査の結果、これらのアカウントは「偽装スパム」ネットワークから来ており、2019年に「ツイッター」上に出現しました。このネットワークは、中共の政治宣伝を広めるだけでなく、海外在住の人々への嫌がらせも行っていました。2021年の集中投稿作戦のコードネームは「ハニーバジャー作戦」と呼ばれていました。

 報告書はまた、中国の上場企業である奇安信(チー・アン・シン)についても言及しています。チャン氏によれば、奇安信の最大株主は中国の中央企業である「中国電子信息産業集団」であり、収入の4割は中国政府の業務を請け負うことから得ています。さらに、同社は中国当局の軍事情報関連業務において重要な役割を果たし、ソーシャルメディア上で外国に対してサイバー影響力作戦を展開するのを支援しています。

 オーストラリアの学者クライブ・ハミルトン(Clive Hamilton)氏は、オーストラリアなどの国々が外国勢力の干渉に対抗するための法整備や法執行を強化したため、中国当局がこれらの国で任務を遂行することが難しくなったため、インターネットを通じた地下活動がより重要になってきていると述べています。

(翻訳・銀河)