中国当局は貴州省に貧困層は存在しないと主張

 X(旧ツイッター)のあるユーザー(「時也命也」)が6月15日、「貴州省の皆さん、年収が1万元(約22万円)以下の所得者はまだいるか?貧困層のダイナミック・ゼロとは何か?一箇所に集めて一気に消滅させたのか?」と皮肉混じりのコメントを投稿しました。

 この「X」のユーザーはまた、貴州省の羅強副省長が最近行ったスピーチの動画も添付しました。羅強副省長は動画の中で次のように述べています。「再び規模的な貧困状態に戻ることが起こらないよう最大限に注意を払い、貧困脱却した国民を監視し支援を行う。住民の所得を増やすための3年間の計画を実施した結果、昨年末までには、一人当たり純所得が1万元未満の人口はダイナミック・ゼロ(ほぼゼロ)を達成した。今や貴州省の農村の風貌は日々改善されており、農民の日常生活はもはや毎日苦労して農作業に明け暮れるだけのものではなくなり、「村超」と呼ばれる農村サッカースーパーリーグや「村BA」と呼ばれる草の根のバスケットボール大会は、貴州省の農民の新しい生活の活気ある様子を描いている。今、ますます多くの都市住民が田舎や田園生活を憧れている」

 これを聞くと、貴州省の住民は幸せな生活を送っているように思えます。しかし、貴州省の住民は明らかにそうは思っていないようです。

その発言に対し、ネットユーザーから次々と非難するコメントが寄せられました。
「へえ、誰がそんなでたらめを言っているのか」
「貴州省の深い山に行ってみれば、何が恥知らずな嘘なのかが分かる」

 注目すべきは、羅強福省長が貴州省の貧困撲滅に「ダイナミック・ゼロ」という言葉を使ったことです。これはユーザーたちを非常に不快にさせました。この言葉は、2020年から2022年にかけて行った中国当局の防疫政策であり、大規模な人道的災害を引き起こしたからです。

 なぜ羅強氏のこの発言がこれほど多くの疑問を呼んだのでしょうか?それは、習近平氏が2015年に定めた国内政策における最重要課題の1つは「脱貧攻堅(こうけん)」、すなわち、農村の貧困という積年の課題を攻略することと関係があります。

 2021年2月25日、習近平氏は全国の貧困撲滅が「全面的な勝利」を収めたと発表し、9899万人の農村部の貧困層全員が現在の基準で貧困から脱却したと述べました。2020年末には、中国の最も貧困な省である貴州省も貧困から脱却したと宣言しました。

 しかし、中国人は本当にもう貧しくないのでしょうか?

 習近平氏がすべての中国人が貧困から脱却したと発表した半年前の2020年5月、李克強前総理は、「中低所得者の6億人、およびそれ以下の人々の平均月収は約1000元(約2.2万円)に過ぎない」と述べました。

 現在の中国の物価水準からすると、1000元では中国の中規模都市で家賃を払うのも困難でしょう。

 貴州省の副省長は、昨年末までに貴州省の人々の一人当たりの年収が1万元を超えたと述べました。しかし、今年4月24日、李強現任総理は貴州省を視察した際、「規模的な貧困状態に戻らないよう堅持する」と述べました。これは、貴州省の貧困問題が依然として深刻であることを示唆していると見られます。

貧困に苦しむ女子大生

 貴州省が2020年末に貧困撲滅を達成したと主張したものの、2020年初めに貴州省で貧困に苦しむ女子大学生、呉花燕さんが悲劇的な死を遂げたことは、大きな話題となり注目を集めました。

 呉花燕さんは生前、「他の子供たちのように、お金がなくなったら両親からもらうことができない。私には(親が)いないのだ」と語っていました。

 この小柄で痩せ細った貴州省の女子大学生は、2020年初めには24歳であり、両親はすでに亡くなっていました。2014年に父親が亡くなった後、彼女は精神疾患を持つ弟と2人で、毎月300元(約6500円)の貧困家庭手当で生活していました。節約のため、彼女は5年間唐辛子をご飯に混ぜて食べるばかりで、その結果栄養失調になり、まゆげや髪の毛が抜けてしまいました。彼女は23歳の時、身長が1.35メートル、体重がわずか21.5キロしかなかったので。2023年10月、彼女は心臓疾患で入院しました。

 中華少年慈善基金会は「呉花燕」の名義で募金活動を行い、100万元(約2200万円)を集めました。彼女の治療に使うと発表したものの、2020年1月13日、呉花燕さんが亡くなった際、この基金会は病院に2万元(約44万円)だけを振り込み、6万元(約132万円)の「コスト費用」を差し引きました。残りの金がなぜ呉花燕さんに渡されなかったのかという質問に対して、この基金会は「呉花燕さんの手術およびリハビリ段階で使用する」と述べました。しかし、医師は呉花燕さんの体重が30キロに達するまで手術ができないとしていたが、彼女が亡くなった時には30キロに達していませんでした。

貧困家庭の現状

 この動画は貴州省のミャオ族のある村で撮影されたもので、6人の子どもがいる家庭が映っています。父親は出稼ぎに行き、母親は長女を連れて農作業に行き、家には5人の小さな子どもだけが残されています。家は非常に質素で荒れ果てており、撮影時はすでに12月でとても寒い時期だが、子どもたちはまだ夏用のサンダルを履いている様子が映っています。

 ネットユーザーのDaniel Fang(ダニエル・ファン)さんが6月16日にXプラットフォームに投稿し、「こんな家がまだ存在することを想像できるか」と述べました。投稿で添付した動画には、2歳くらいと思われる小さな女の子が部屋をよろよろと歩き回り、母親がその子の名前を呼んで「おいで、ママが卵をあげるから食べにおいで」と言っている様子が映っています。動画から見ると、部屋はとても簡素で、壁には白いペンキが塗られておらず、床も地面もひび割れており、小さな女の子もまともな服を着ていません。

 この動画には、農村の留守児童の日常生活の場面が映し出されており、映っている子供たちは皆小さく、おそらく5歳から7歳くらいと思われるが、年齢にそぐわない生活を送っています。

 上述の現象は、中国の農村では非常に一般的なことです。

 2023年5月22日、Xプラットフォームのアカウント「真相伝媒」が次のような記事を掲載しました。「アメリカの学者ローズ氏が言った。『私は68歳で、96カ国を訪れたが、中国政府が理解できない。中国にはまだ1億人が貧困線以下で生活しており、90万人の山間部の子供たちは学校に通えず、150万人の物乞いがいる。(中国政府が)これらの問題を解決せずに、毎年数千億元も外国に援助している。国民はあなたたち(中国政府)にとって人間ではないのか?』」

(翻訳・藍彧)