中国製電気自動車(EV)は、当局から大きな支援を受けているにもかかわらず各地で事故が多発しているため、ネット上では「四つの車輪を持つおもちゃ」と皮肉られています。所有者たちは大金を払って最先端の車を購入したものの、運が悪ければ命の危険に晒される可能性があり、高い勉強代を支払うことになります。

頻繁に自然発火するBYDの電気自動車

 中国製電気自動車は近年、当局の莫大な補助金のおかげで欧米市場を席巻しています。多くの中国人も政府の呼びかけに応じて次々と国産車を購入しています。 しかし、車両の自然発火、バッテリーの火災、ブレーキの故障、自動運転の不具合などの問題が頻発しているのも紛れもない事実です。 最近、四川省でBYD車が路上で自然発火する事件がありました。 映像では、道路脇に停まっている白い乗用車が炎上し、車両全体が炎に包まれています。 撮影者によると、この電気自動車の運転手は車内で焼死したとのことです。

 SNS「X」には、「愛国車を購入するには命を賭ける勇気が必要だ」「運転手の尊い命が惜しい」といったコメントが寄せられました。また、「運転手が亡くなるはずがない。なぜなら『この車のドアは開けられる』から」と皮肉るコメントも見られました。これは、ファーウェイの運営システムが搭載された電気自動車が事故発生後、ドアが開かずに搭乗者3人が死亡する事故が発生したことを受けてのコメントでした。

 一方、BYDの自然発火の動画について、メーカーの公式発表や中国国内の報道は見られませんでした。

 中国製電気自動車の故障問題も近年絶え間なく報告されています。6月1日、広西チワン族自治区のある市民はBYDの「秦PLUS」の新車を購入しましたが、納車日に事故を起こし、民家に衝突しました。衝突で民家のコンクリート柱が破壊され、車両が大きく破損しましたが、エアバッグは作動しなかったといいます。 ネットユーザーからは「これほどの衝突でもエアバッグが開かないとは、言葉も出ない」と非難されています。

 5月20日には、四川省アバ県の路上でBYDの電気自動車が自然発火して火花を散らしている動画が投稿されました。

電気自動車の事故は後を絶たず、安全性がガソリン車よりも劣るのではないかと疑う声も聞かれています。電気自動車のバッテリーには酸化剤と可燃性電解液が含まれるため、一旦火がつくと深刻な結果を招きます。電気自動車の車両火災の発生率はガソリン車より高く、同様の事故が多数報告されています。

 また、BYDの販売店などでも火災が発生しており、過去2年間で、少なくとも10件以上火災が発生しています。

 福建省福州市閩候県(びんこうけん)で5月16日未明、高速道路出口近くにあるBYD の販売店で大規模火災が発生しました。ショールームは全焼し、焼け焦げた黒い鉄くずだけが残りました。

手抜きと材料のごまかし

 中国共産党当局は2008年から電気自動車への補助金を拡大しています。初年度は2億7600万元(約60億円)の自動車補助金を損益計算書に計上していますが、その大部分が深圳BYD自動車の研究開発費として使用されました。しかし、2008年のBYDの財務報告によると、BYDの完全子会社である深圳BYD自動車は4億2200万元(約 90 億円)の補助金を取得しており、この補助金は主に自動車の研究開発活動を支援するために地方政府から提供されました。

 財新網の報道によると、BYDは2008年から2022年にかけて55回もの政府補助金を受けており、その総額は67億8400万元(約1470億円)に上ります。

 これほどの莫大な資金を投入しているのに、出来上がった車の品質はまるでおもちゃ以下であると非難されています。 BYDの王伝福(おう・でんふく)会長は、バッテリーの発表イベントで、「自然発火という言葉を新エネルギー車の辞書から完全に消し去る」と豪語しましたが、現実は、今だに自然発火を防ぐことができていません。

 手抜きと材料のごまかしは、中国の電気自動車産業の代名詞となっています。王伝福会長は6月初旬に開かれた「2024年中国自動車重慶フォーラム」で、「市場競争は過剰経済であり、過剰があってこそ競争が生まれ、競争が繁栄を生む」と発言しました。さらに「全ての企業家は競争を受け入れ、競争の中で抜きん出て世界的なブランドを築くべきだ。それが自然の法則だ」と述べました。

 一方、中国吉利(ジーリー)汽車の李書福(り・しょふく)会長は、「中国の自動車産業の過剰競争は世界一で、価格競争が次々と起こっている。この現象は市場化の水準を高めるかもしれないが、同時に価格競争を引き起こし、その結果として自動車メーカーが手抜きや材料のごまかしをする可能性がある」と警告しました。

インテリジェントドライビングの問題

 バッテリーの自然発火問題だけでなく、中国製電気自動車のインテリジェントドライビングシステムも度々問題を起こし、様々な事故を引き起こしています。

 6月7日午前、海南省海口市のある居住区の前で、シャオミSU7が制御を失い、2台の電気自動車と衝突し、1人が死亡、3人が負傷しました。メディアは、事故原因はブレーキの故障によるものだと伝えましたが、シャオミは否定しました。情報筋によると、事故原因は車両の制御不能またはブレーキの故障に関連している可能性があります。

「SU7」は、中国のスマートフォン大手のシャオミの初のEVモデルで、今年3月28日に発売されたばかりですが、発売直後から事故が相次いでいます。

 例えば今年5月、広東省佛山市在住のSU7所有者は、「4月29日と5月1日に高速道路でSU7を運転中に、インテリジェントドライビングが機能しなくなり、走行不能になった」と報告しています。納車から1か月も経っていないとのことです。

5月6日、福建省厦門(あもい)市在住の温(おん)さんはSNSに動画を投稿し、購入したばかりのSU7が販売店を出た直後、高速道路でエンストしたと語っています。

 4月9日、江蘇省のSU7所有者もSNSに投稿し、シャオミ車の自動駐車機能で柱に衝突したと訴えました。

一部のネットユーザーは、中国ではこれほど事故が多発しているが、その原因は一体何なのかと疑問を呈しています。

 これに対し、あるネットユーザーは「この種の災難は中国では解決不能だ。なぜなら問題の根本は中共の悪にあり、それは命に対する真の尊重が欠けているからだ!庶民の命を真に尊重することができてはじめて、法律を制定し自動車メーカーに改良を迫ることができる。しかし、自動車メーカー自体が中共所有の企業なので、庶民の命を守るために真に改良することなどあり得ないのだ。庶民の運命は前から決まっている!」と、怒りを込めて返信しました。

(翻訳・銀河)