最近、中国のエコノミスト盧麒元(ろ・きげん)氏は、中国の経済成長が弱いのは資本蓄積率が低下しているからだと述べました。 資本蓄積率が低下した一番大きな要因は、大量の資本が中国から流出したことが挙げられます。
盧麒元氏は、「私はあえて3兆ドルを下回らないと言いたい。3兆ドルとは人民元で21兆元(約467兆円)だ。21兆元がどれくらいの数字なのか理解できないかもしれないが、中国の年間収入に等しい巨額が流出したということだ」と述べました。
盧麒元氏は、この数字の出所を明かしませんでした。しかし、中国の資本流出は紛れもない事実であり、汚職官僚や富裕層の相次ぐ中国脱出および大量の資本流出は以前から国際メディアを賑わせています。
世界一の富裕層移民数を誇る
ロンドンを拠点とする投資・移民コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズ(Henley & Partners)は、2023年下半期に報告書「プライベート・ウェルス・マイグレーション・レポート2023(Henley Private Wealth Migration Report 2023)」を発表しました。報告書によると、2022年に100万ドル以上の純資産を持つ中国人富裕層が1万人以上海外移住し、富裕層移住者数で世界1位となりました。この報告書は、100万ドル以上の純資産を保有し、毎年中国国外で半分以上の時間を過ごす人々に焦点を当てています。つまり、この報告書の統計には、居留許可を得るだけで移住しない人々は含まれていません。
報告書のデータに基づくと、中国は2023年に富裕層移住者の世界ランキングでトップになり、13,500人の富裕層の海外移住によって数百億ドルの資産が移転されると見られています。
止まらない資本流出
中国のここ数十年の資本流出は、公然の秘密となっています。2020年からのコロナ禍の期間中、多くの中国人が海外移住し、毎年数千億ドルの資本が中国から流出し、2023年には毎月平均500億ドルが国外に流出しました。
テンセントの報道によると、2022年4月と5月、上海ではロックダウンが実施されていましたが、WeChatと百度での「移住」に関する検索が2022年4月のある1週間で急増し、「カナダ移住の条件」の検索数は前週比2846%増加しました。特に、当局が「ゼロコロナ」政策の実施を発表した4月3日には、移民に関する動画のソース数が 1455%増加しました。
ニューヨーク・タイムズ紙は2023年11月に、「金の延べ棒と外貨に東京のマンション、中国のカネがいかに海外に流れているか」と題した記事を掲載し、中国人が300万ドル以上の東京の高級マンションの主な購入者となり、現金をスーツケースに詰め込んで支払っていると伝えました。また、香港の保険商品の購入も中国人が海外に資産を移転する方法の一つとなっており、本土からの香港保険業界への新規契約は、2023年第1四半期に約27倍の96兆香港ドルに急増したといいます。
2023年8月、中国の資本流出は490億ドルに達し、過去8年間で最大の流出となりました。中国共産党当局も資本流出の抜け穴を塞ぐ方法を模索しているものの、結果は芳しくありません。習近平総書記の「ゼロコロナ」と「共同富裕」政策は、実に多くの富裕層を恐怖に陥れ、多くの人に「中国脱出」を決心させました。
汚職官僚の国外逃亡 汚職マネーも流出
中国共産党の汚職官僚や国有企業の犯罪容疑者の国外逃亡は1980年代後半から始まり、1991年には最高検察院が業務報告で正式に「資金持ち逃げを画策」という言葉を使いました。
2008年6月、中国の中央銀行は中国社会科学院の調査を引用し、1990年代半ば以降、国外逃亡した官僚の数が1万6000人から1万8000人に上り、8千億元もの資金を持ち逃げしたことを明らかにしました。また、1995年から2005年までだけでも、配偶者や子供を海外に送り、自身は中国国内に残って不正を働いた「裸官(らかん)」と呼ばれる官僚は118万人に達したといいます。
中国商務部の金融研究者である梅新育(ばい・しんいく)博士は、1985年から2005年までの中国の対外債務の増加の50%以上をキャピタルフライトが占めていると考えています。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、カナダ移民局の文書によると、2011年4月から2012年6月にかけて、トロントとバンクーバーの空港が中国人から1300万ドルの申告漏れ現金を押収したと報じました。
また、中国の貿易黒字と外貨準備の増加の乖離は、1〜2か月だけの短期的な現象ではありません。2023年にも同様の話題がネット上で激しい議論を巻き起こしました。つまり、「過去3年間、中国の貿易黒字は合計2兆ドル近くに達したが、外貨準備は同期間ほぼ横ばいだった。2兆ドルを超える分の外貨準備はどこに行ったのか」と疑問が呈されています。
中国共産党の汚職官僚がどれだけ国外に逃亡し、汚職マネーがどれだけ国外に流出したかは知る術もありませんが、国外に流出した金額が天文学的な数字であることは間違いありません。 不完全な統計によると、2023年、1億元以上を横領したことで公判にかけられた中国共産党の汚職幹部は19人に上りました。
では、海外に流出したこれらの資金は回収できるのでしょうか? 「中国法院網」は、国外逃亡した汚職官僚が持ち逃げした資金は、ほとんど回収されていないことを自ら認めています。
米国が中共上層部の海外資産を調査
中国共産党上層部の汚職スキャンダルは、2016年の「パナマ文書」スキャンダルを含め、国際社会で長い間暴露されてきました。パナマ文書には、中国共産党の歴代最高指導部の親族がオフショア企業を使って巨額の資金を隠していた証拠が含まれています。情報によると、江沢民一族は海外に5000億ドルの資産を保有しており、孫の江志成が管理しているとされています。
4月10日、米軍と密接な関係を持つメディア関係者のビル・ガーツ(Bill Gertz)氏が「ワシントン・タイムズ」紙に記事を発表し、米情報機関が中国共産党の最高指導部である「中央政治局常務委員会」の常務委員7人を調査しており、その報告書が作成されていることを明らかにしました。この「中国共産党指導部の資産と腐敗活動」に関する非機密報告書は、習近平をはじめ、中央委員205人、政治局委員25人、政治局常務委員7人を含む中国共産党幹部を対象としています。さらに、中国の29の省の党委員会書記も調査の対象となっています。
これは世界を驚かせるニュースですが、もしこのことが事実であるならば、アメリカの中国共産党に対する打撃はかつてないほど正鵠を射ているということになります。これはまさに、目に見えない原子爆弾であり、これによって中国共産党は極度の混乱に陥り、すべての公信力を失い、最終的に崩壊に至る可能性があります。
(翻訳・銀河)