中国共産党の公式メディアは最近、高速鉄道の大規模建設によって新設された多くの高速鉄道駅のうち、少なくとも26駅が遊休状態にあると報じました。その無駄な投資に対して誰が責任を負うべきかを問い、非難の矢は主に地方政府に向けられています。

公式メディアが高速鉄道駅の遊休の責任を追及
 「中国経済新聞」5月21日の記事によると、中国には少なくとも26の高速鉄道駅が建設後、辺鄙な場所にあり、乗客数が少ないために使用されていないか、閉鎖された状態にあると報じました。

 例えば、海南省儋州市(だんしゅうし)の海頭駅は4000万元(約8.7億円)以上を投資して建設されたが、完成から7年以上経っても使用されず、1日の乗客数が100人に満たないことが原因でした。その後、世論の圧力により、海頭駅は2023年12月15日にようやく使用され始めました。

 海南省の海南環島高速鉄道の万寧市(まんねいし)の和楽駅(わらくえき)、北京ーハルビン高速鉄道の瀋陽西駅、丹東-大連高速鉄道の丹東西駅と広寧寺駅なども建設されたが、未だ運用されていない状態です。

 この記事は、これらの高額な高速鉄道駅が設計・計画から投資・建設に至り、最終的に遊休状態となった経緯について疑問を投げかけています。設計会社、高速鉄道運営会社、地方政府がそれぞれどのような役割を果たしたのか、また、こうした効果のない投資に対して誰が責任を負うべきなのかを問いました。

 ある地方政府の関係者は、近年、高速鉄道建設における地方投資の割合がますます増加するにつれ、地方政府の発言権も高まっていると指摘しました。地方政府は高速鉄道駅の保有権と政治的実績を関連付けており、高速鉄道駅建設への投資熱意が非常に高いです。そのため、ここ数年間に建設された高速鉄道駅の総数は鉄道部門が立てた計画を大幅に上回っています。

 アメリカのサウスカロライナ大学エイキン商学院の謝田教授は5月23日、大紀元時報のインタビューで、鉄道への投資は実際には中央政府と地方政府が共同で行っているが、本当の意味での実用性調査が行われておらず、乗客数や人々の収入と需要に基づいた設計は行われていないと述べました。謝田氏はまた、中国の各地方政府が先を争って高速鉄道を建設する目的は、「中国経済の高速成長といううわべの現象を作り出し、国際投資家を欺くためである」と指摘しました。

中国高速鉄道の急速な発展と巨額債務
 中国高速鉄道の建設運営を担当する中国国家鉄道集団は、中央政府が管理する100%国有企業です。高速で発展し続ける中国高速鉄道の背後には巨額の負債問題があります。

 2022年上半期までに、国家鉄道集団の負債は6兆元(約130兆円)を超えました。

 2024年5月、中国当局は国家鉄道集団が2023年に「赤字を黒字に転換した」と宣言しました。しかし、2023年末までに国家鉄道集団の負債率は依然として65.5%でした。

 北京交通大学の趙堅教授は、2019年初めに「財新網」で掲載した記事で、人々は中国高速鉄道のスピードや走行距離が世界一であることを称賛しているが、その裏には高速鉄道の負債と運営赤字も世界一であり、交通運輸構造が深刻に悪化していることは見ていないと指摘しました。趙堅氏は、高速鉄道の財務状況から見て、いずれ中国金融の「灰色のサイ」、つまり巨大な財政リスクとなる日が来るだろうと述べました。

雄安高速鉄道駅が未完成のまま
 最も高額で未完成の高速鉄道駅は、習近平氏の指示で建設された雄安高速鉄道駅です。中国当局は雄安高速鉄道駅を「アジア最大の高速鉄道駅」と主張しています。

 雄安新区は2017年4月1日、習近平氏が推進する国家重点建設プロジェクトとして正式に設立されました。公式には「1000年にわたる大計画、国家の大事」とされています。しかし、雄安新区は内陸部に位置し、経済基盤がないため発展にとって魅力的ではなく、評価が低いです。また、白洋淀(はくようてん)に隣接する雄安は中国北部の低地帯に位置し、洪水のリスクが存在します。

 ここ数年、雄安新区の建設は断続的に行われており、「アジア最大」と称される雄安高速鉄道駅も、2023年1月には駅の外に雑草が生い茂る様子が動画で暴露されました。

計画経済体制に計画なし
 中国共産党が実施している社会主義制度の経済の核心概念は計画経済です。

 アメリカなどの民主主義国家が実施する市場経済は無駄が多く、中国共産党の計画経済の方が良いと主張する経済学者もいます。

 確かに中国共産党は必要に応じて様々な経済計画を立てているが、問題は誰の必要に応じているかです。中国共産党の指導者たちは常に自分たちの必要に基づいて経済計画を立てており、国家全体の経済発展や一般市民の需要を考慮していません。

 例えば、中国共産党の党首である習近平氏が自ら雄安新区の建設計画を立てました。経済条件や地理環境を考慮すると、雄安新区の建設は非常に不合理です。習氏がこの計画を立てた真の目的は誰にも不明だが、習近平自らが立てた計画であるため、その計画がどれほど馬鹿げていても中国共産党の各級政府はそれを断固として実行します。しかし、都市建設が進み、高速鉄道駅も建設されたものの、入居を希望する人が非常に少ないため、雄安新区と雄安高速鉄道駅は未完成のプロジェクトとなり、巨額の資金が無駄に使われました。

 中国には「上行下效」という古いことわざがあります。これは、上の者が何かをすると下の者がそれをまねて行うという意味です。習氏が自ら雄安新区の計画を立てたため、各地方政府の官吏も自分たちの必要に応じて様々な奇抜な経済計画を立てます。

 中国各地の高速鉄道駅建設は、実は地方役人の出世欲を満たすためのパフォーマンス・プロジェクトであり、地方経済の発展を促進するためのものではありません。経済発展を目的としていないため、高速鉄道駅の計画において地元の乗客数や住民の収入などの要素は考慮されません。高速鉄道駅の建設による負債は政府の負債であり、決定を下した官吏が自分の財産で返済するわけではありません。つまり、政府の負債は最終的にすべての国民が返済することになるのです。

 中国共産党体制における計画経済の本質を見て、他国の経済学者たちは目を覚ますことができるのでしょうか?

(翻訳・藍彧)