イタリアのストレーザで開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、世界貿易における中国の過剰生産問題に批判が集中しました。アメリカ財務長官ジャネット・イエレン氏は各国に対し、「防衛の網」を構築するために行動を起こすよう呼びかけました。

中国の過剰生産がG7の中心議題に

 日本、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダの財務相・中央銀行総裁会議は、中国の過剰生産問題にどう対応するかを議論しました。共同声明の文面からは、G7全体として中国に対する報復措置を取る可能性も示唆されました。

 アメリカは、中国から輸出される電気自動車、バッテリー、コンピューターチップ、医療製品などに対して高額の関税を課すことを発表しました。

 ジャネット・イエレン財務長官は、他のG7メンバーもこの問題でアメリカと同調する姿勢を示すべきだと述べました。

 イエレン氏は、中国当局がソーラーパネル、半導体、電気自動車メーカーに巨額の補助金を提供している問題に対し、欧州連合(EU)も協力して共同で対応するよう呼びかけました。イエレン氏は、中国の生産能力が中国国内や世界経済の需要を上回っており、G7や発展途上国の関連企業の存続を脅かしていると指摘しました。

 イエレン氏はG7の財務相会合の前に、関係各国が共同の立場を取る必要があり、中国の指導者に「彼らが追求する戦略は防衛の網に直面している」と理解させるべきだと述べました。

 ドイツのクリスティアン・リントナー財務相は、ドイツの立場は非常に明確であり、中国はダンピングを停止しなければならないと述べました。

 フランスのブリュノ・ル・メール財務大臣は、中国が「われわれの経済パートナー」であり、貿易戦争を避けるべきだとしつつも、G7は自らの産業利益を守る必要があると強調しました。

 イタリアは今年のG7の議長国であり、ストレーザ会議の議長を務めたイタリアのジャンカルロ・ジョルジェッティ経済大臣は、アメリカが発表した中国製品の輸入関税大幅引き上げに関し、EUが追随するのは時間の問題との認識を示しました。

「中国製造2025」政策が過剰生産の原因

 ワシントン国際貿易協会(Washington International Trade Association)は5月23日、シンクタンク「アジア協会政策研究所(Asia Society Policy Institute、ASPI)」と共同でオンラインセミナーを開催しました。貿易と自動車産業の専門家を多数招いたオンラインセミナーでは、バイデン政権が5月14日に発表したさまざまな中国製品への関税引き上げの理由とその後の影響について議論しました。

 中国の不公平な貿易慣行に対抗するため、ジョー・バイデン米大統領は5月14日に、年間総額180億ドルの中国からの輸入品に対して関税を引き上げるよう指示しました。具体的には、中国の電気自動車の税率は25%から100%に、電気自動車用バッテリーの税率は7.5%から25%に、太陽電池の税率は25%から50%に引き上げられます。新しい税率は今後3年間で段階的に導入される予定です。

 ラジオ・フリー・アジアが5月23日に報じたところによると、バラク・オバマ政権に代理副貿易代表を務め、現在はシンクタンクASPIの副所長を務めるカトラー氏は、中国の電気自動車の過剰生産問題が、過去の問題の繰り返しであると指摘しました。アメリカの多くの産業が過去に類似の問題を経験しており、特に太陽光産業がそうでした。彼女は、今回のバイデン政権による関税措置は予防的なものであり、「これはアメリカの貿易政策における新しい展開のようなものだ」と述べました。 

 アメリカ自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国の自動車生産能力は年間約5000万台で、そのうち約3000万台が国内消費者の需要、500万台が輸出向け、残りの1500万台が過剰生産能力であると推計しました。

 ボゼーラ氏は、「これらの過剰な自動車は再編によって吸収されるか、世界中に輸出されることになるかのどちらかだ。これが現在の状況だ」と述べました。

 元米自動車大手ジェネラル・モーターズのインドネシア駐在高官で、現在は自動車コンサルティング会社「ダン・インサイツ」の最高経営責任者であるマイケル・ダン氏は、中国の過剰生産能力は2014年末にくだされたある戦略的決断に起因していると指摘し、「当時、習近平総書記が側近を集め、現在知られている『中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)』政策を策定した」と述べました。

 この政策が、中国で深刻な過剰生産問題を引き起こし、価格競争をもたらしました。ダン氏は「中国の企業家たちと話をすると、彼らは『私たちは国内では全くお金を稼げない。輸出しなければ、行き詰まる』と言っている」と明かしました。

中国による過剰生産能力の輸出は、広範な貿易戦争の火種になりかねない

 4月にアメリカ財務長官のイエレン氏と国務長官のブリンケン氏は相次いで訪中し、二人とも中国の過剰生産問題、特に電気自動車、リチウム電池、太陽光発電製品の輸出問題を提起しました。

 イエレン氏は、これらの問題がアメリカおよび他国の生産者に脅威を与えていると述べ、アメリカは中国政府から補助金を受けた安価な商品によって新興産業が破壊されることを容認しないと語りました。

 その後、中国を訪問したドイツのオラフ・ショルツ首相も、中国の過剰生産に対して懸念を表明しました。

 昨年10月、欧州連合はすでに中国の電気自動車に対する政府補助金の問題について調査を開始しています。

 中国の過剰生産製品を海外に輸出する問題は外部から大きな関心を集めています。欧米はすでに中国に対して直接警告を発しているが、中国当局は依然として反論しています。

 中国の過剰生産と政府主導の産業政策に関して、米サウスカロライナ大学エイケン商学院の謝田教授は、「中国の過剰生産の最も根本的な原因は、中国共産党の権威主義体制と政府の統制にある。実際、これは市場経済と権威主義体制の融合によって生み出された奇形の怪物である」と指摘しました。

 謝田教授は、「中国当局がこの問題を自ら解決することはないだろうなぜなら、自ら解決することはこれらの企業を破綻させ、これらの分野から撤退させることを意味するからだ。それは中国共産党自身が失業と倒産を引き起こすことになる。しかし、最終的には、中国共産党はそうせざるを得ないだろう」と述べました。

(翻訳・藍彧)