最近、中国の多くの都市で市民の生活基盤となる光熱費、特に家庭用天然ガス料金が異常に高騰しています。一部の人は、中国当局が市民の基本的な出費を増やすことで、地方の財政危機を緩和しようとしていると見ています。
成都市の範さん、4か月のガス代が約32万円
中国のウェブメディア「澎湃(ほうはい)新聞」は4月18日、四川省成都市に住む範さん(女性)の自宅のガス代が4か月で1.5万元(約32万円)に達したと報じました。
範さん一家は、別の都市で勤務しているため、この家にはほとんど住んでいません。ただし、毎年冬になると、高齢の両親が新疆ウイグル自治区から成都市に来て冬を過ごすため、冬季のガス使用量だけが多くなります。しかし、ここ数年、両親の使用習慣に変わりがないにもかかわらず、2022年の冬季のガス代は例年同期の3から4倍に急増しました。範さんは、ガスメーター自体には問題がないことが確認され、なぜこうなったのかを非常に理解できず、受け入れがたい状況でした。
この件について、ガス会社はガスの供給システムに不具合があったため、ガスメーターに表示された数字よりも実際のガス量が遅れていたと説明しました。その結果、2011年の入居から2023年2月までに遅れて計上されたガス使用量が料金計算に含まれたとされています。
また、2023年3月、範さんの家族がガス代を支払いに行った際、ガス会社がすでに家族の銀行カードから2000元(約4万円)以上を勝手に引き落としていたことが判明し、さらに1.3万元(約28万円)以上の滞納金があると言われました。
範さんがこの問題を訴えてから1年後、ガス会社は1.3万元の滞納分を8000元(約17万円)で請求することに同意しました。しかし、範さんはこの欺罔行為(ぎもうこうい)に納得せず、料金の支払いを拒否しました。
範さんは4月17日、澎湃新聞とのインタビューで、このガス代の支払いを拒否したために、最近ガス会社によってガス供給が停止されたと語りました。高齢の両親がガスのないことに困り、その日の朝に仕方なくこの8000元のガス代を支払いました。しかし、このような不明瞭な請求に対し、彼女と家族は大変不満を感じています。
中国のSNSウェイボーには、ネットユーザーが次のようなコメントを残しています。
「10年間も遅れて計上されたガスの使用量を、どうして今日まで請求しなかったのか?」
「問題の核心は、遅れているガスの使用量があることをどうやってわかったのか?10年間のデータがどうやって計算されたのか?」
「それはお金の搾取を正当化するための言い訳に過ぎない」
さらに、自宅の団地で、ガス管を止めた後もガスメーターが回り続けていることを示す動画を投稿した市民もいます。四川省の複数の都市に住む市民からも、同様の問題が報告されました。
スマートガスメーター交換後、ガス会社の収入は11倍に急増
重慶ガスグループが大規模にスマートガスメーターを交換した後、重慶市の住民はガス代が大幅に増加したことに気づきました。重慶市の住民、蘇さん(男性)は4月17日、ラジオ・フリー・アジアとのインタビュー、ガス会社が住民のガスメーターを強制的に交換したことによりガス代が急に増加し、これは明らかに収益を搾り取る行為であると述べました。
重慶ガスは2024年3月4日、同社の2023年の年次決算を発表しました。報告書によると、2023年の総収入が初めて100億元(約2000億円)を超え、前年比で17.26%増の102.47億元(約2200億円)に達しました。
広東省の週刊誌「時代周報」の記事によると、重慶ガスの2023年の第1から第3四半期までの利益は2022年を下回っていたが、第4四半期には大きな伸びを見せ、営業収入は前年同期比23.59%増、営業利益は1127%増となりました。この期間にガスメーターの大規模な交換が行われたため、メーター交換の時期と収益の増加が高度に重なっていることが示されています。
また、山東省の「斉魯晩報」によると、重慶ガスグループと成都ガスグループの株主は、いずれもチャイナ・リソーシズ・ガス・グループ(華潤燃気控股有限公司)となっています。世論の波紋を受けて、華潤燃気の株価は4月12日以降、連日下落しています。
ネット上で暴露されたガス料金急増の真実
今回の料金上昇の原因はガスメーターの誤差ではなく、重慶ガスグループがガスの濃度を下げたため、同じ熱量を得るために必要なガス量が大幅に増加したことが原因かもしれないと報じるメディアがいました。
これに対し、ネットユーザーからは、「これはガスに不活性ガスが添加されたためだ」と指摘する声や、「メーターを交換後、お湯を沸かすのに以前よりもずっと時間がかかるようになった」という経験を共有する投稿もありました。
さらに、一部のネットユーザーはメーター交換後のガス炎が以前より黄色っぽいと示す動画をソーシャルメディアにアップロードしました。
時事評論家の蔡慎坤(さいしんこん)氏はXプラットフォームで次のように投稿しました。「現在、初期調査の結果が出ており、重慶ガスにはガスの計量に大きな問題がある。1立方メートルのガスを実際の3倍の料金で販売しているような状況で、多くの家庭用の天然ガス料金が以前の2〜3倍、場合によっては通常使用量の10倍にまで上昇している。これにより、重慶市の584.64万世帯が苦しんでいます。
また、江蘇省南通市の多くの集団住宅の住民も、最近のガス料金が急上昇し、3月のガス料金は1月や2月に比べて倍増したと訴えています。
「江蘇省常州市でも同様の状況が発生している」と投稿したネットユーザーもいれば、「実際、ガス代が高騰する現象は全国で見られるが、重慶ガス会社があまりにも露骨に行ったため、すぐに皆に気づかれてしまった」と指摘するネットユーザーもいました。
地方財政の圧力の下での中国当局の「強奪」疑惑
時政評論家である唐靖遠(といせいえん)氏は、ガンジンワールドの「遠見快評(えんけんかいひょう)」チャンネルで次のように述べました。「不動産企業の破綻が相次ぎ、土地が売れなくなり、地方政府の財政が土地売買に依存する道は行き詰まりました。そのため、彼ら(地方政府)は金を稼ぐ手段を各家庭にとって不可欠な光熱費へと変わるのは避けられない流れだ」
唐氏は、ガス会社の不正行為を追及することには大きな意味がないと指摘し、「はっきり言えば、それは国有企業が公然と家宅侵入し強盗を行っているようなもので、政府の許可のもとで公然と金を奪っているのだ」と強調しました。
唐氏はまた、「中国共産党が政権を握って70年以上経つが、かつては灰色の軍服を着ていたが、今はスーツを着ている。外見がいくら変わっても、その匪賊(ひぞく)の本質は決して変わっておらず、金欠になると必ず強奪するのだ。習近平氏はなぜ、国有企業を大きく強くし、絶対的な独占を形成する必要があると繰り返し強調したのか?それは、金を奪う最高の道具になるからだ」と述べました。
(翻訳・藍彧)