中国の広州市では4月15日から「広州交易会(中国輸出入商品交易会)」が開催されていますが、今年の出展社数は昨年より激減しており、景気低迷が浮き彫りになっています。中国の輸出業者は、商品は「白菜価(破格の安値)」で出展されており、今のような状況が続けば経営が維持できなくなると話しています。
出展社数と取引量が激減
1957年に発足した広州交易会(中国輸出入商品交易会)は、中国商務部と広東省政府が共催し、中国対外貿易センターが主管する中国最大規模の国際見本市です。
135回目となる今年は、4月15日から5月5日にかけて、3期に分けて広州市で開催されています。
中国の政府系メディアは4月12日の報道で、第135回中国輸出入商品交易会の準備は順調に進んでおり、「今年の広州交易会には、世界50の国・地域から29,000社以上が出展し、過去最多である」と報じました。
しかし実際には、今年の出展社数は昨年を大幅に下回っています。
昨年5月9日、中国共産党機関紙『人民日報』海外版は、「(広州交易会には)220以上の国と地域から数十万人のバイヤーが登録し、オフラインの出展者数は3万5000社に達した」と報じました。
今年の参加企業数29,000社は昨年の35,000社を大幅に下回り、出展企業は昨年の220の国・地域から今年は50の国・地域に縮小されているにも関わらず、官製メディアは規模が拡大したと報じています。
一部の参加者は、海外からの注文が非常に少ないと述べました。
スピーカーやマイクを生産する広東省恩平市(おんへいし)双芸(そうげい)電子工業有限公司のセールス・マネージャー、張さんは「昨年は、初日に十数件の問い合わせがあったが、今日は名刺を3枚もらっただけだ」と語っています。
「今年は、ある大口顧客からの注文が昨年より25%減少し、他の顧客も注文を続けるかどうかまだ決めていない」。江蘇省の屋外用暖房器具メーカーのセールス・マネージャー、範(はん)さんは、顧客のほとんどは欧米の企業だが、欧米市場はあまり期待できないと語りました。
範さんは、顧客たちは引き続き在庫を減らしているが、今年後半には注文が回復することを期待していると述べました。
「低価格」が広州交易会のキーワードに
第135回広州交易会は、中国における戦略的な政策転換が行われている中で開催されました。中国当局は、大打撃を受けた不動産業界から製造業への資本シフトを加速しており、これによる製造業の規模拡大を図っています。
グリーンエネルギー分野での中国の台頭が注目されていますが、中国当局が宣伝する「新三大製品」である電気自動車、リチウム電池、ソーラーパネルの輸出は昨年、輸出全体のわずか4.5%を占めるにとどまりました。中国の製造企業のほとんどは技術レベルが低いうえ、国内需要が低いため、海外のバイヤーをターゲットにするしかありません。
香港大学ビジネススクールの金融学教授、陳志武(ちん・しぶ)氏はメディアに対し、「中国のローテク製品であれハイテク製品であれ、今年の展示会キーワードは、『低価格』になるだろう」「中国の内需が正常な水準をはるかに下回り、さらに多くの業界で生産能力過剰が深刻であるため、メーカーは輸出を増やすために値下げをせざるを得なくなっている」と述べました。
しかし、これは米国と欧州連合(EU)の警戒を招きました。現在、米国とEUは、こうした低価格の中国製品が世界市場に氾濫していることに不満を抱いており、特に中国のいわゆる「新三大産業」を警戒しています。米国とEUの当局者は、自国の産業が中国の巨大な工業生産能力に太刀打ちできないと懸念しているからです。
低価格は諸刃の剣
低価格販売は諸刃の剣であり、米国とEUの製造業に影響を与えるだけでなく、中国自身の製造業も打撃を受けています。
中国の生産者物価指数(PPI)の長期的な下落は、中国製造業の縮小を浮き彫りにしており、すでに中国経済の問題の一つになっています。この現象を招いた主な原因は、景気低迷により中国国内の内需が縮小したことで、多くのメーカー、特に技術力の低いメーカーは価格を抑えて輸出による販路を開拓しようとしているからです。
ロイター通信の4月17日付の報道によると、広東省仏山市にある冠威(かんい)輸出入有限公司の共同経営者である呉(ご)さんは、自社では以前は大口の注文しか受け付けていなかったが、経済状況が非常に厳しい今、会社の利益率は3〜4年前の2%から0.5%に低下したため、小口の注文でも受けなければならなくなったといいます。
呉さんは、「私たちの電化製品は、白菜のように安い価格で売られている」と話しています。
暗い対外輸出の見通し
中国国家統計局が4月16日に発表したデータによると、中国の第1四半期の経済成長率は市場予想を上回りました。しかし、これは今年の広州交易会の暗い雰囲気を打破することができませんでした。
中国の3月の輸出はある程度伸びたものの、ドルベースでは大幅に減少し、生産者物価指数(PPI)は1年半連続の下落となっています。これによって、コロナ禍の後、中国経済の持続的成長への期待が弱まっています。
加えて、中国の輸出企業は、米中間の経済的・政治的緊張の高まりや、ウクライナ戦争や中東危機の激化による世界貿易の減速に直面しています。中国の製造業も過剰生産能力に悩まされています。
このほか、トランプ前米大統領は今年2月、次期大統領選挙で勝利した場合、中国からの輸入品に60%の関税を課すと述べました。また、米国とEUの政府関係者は、中国の製造業に対する強化戦略は、生産能力過剰をさらに悪化させ、製品価格を他の経済国が太刀打ちできないレベルまで引き下げたことを非難しています。
このような国際環境を前に、中国の対外輸出の見通しは楽観視できないでしょう。
(翻訳・銀河)