最近、中国のある21歳の男性が感情的な悩みから自ら命を絶つ事件が広く注目を集めました。この事件は中国国内だけでなく、海外のネットユーザーの間でも熱く議論されています。

 この話の主人公は「胖猫」というネット名を持つ若者です。彼は友人の紹介でゲーム代行の仕事を始めました。年齢が若く、恋愛経験も少ないため、胖猫は愛情には非常に憧れていました。2022年、胖猫は「王者栄耀(おうじゃえいよう)」というMOBAゲームで27歳の譚竹と出会い、すぐに恋愛関係を確立しました。交際中、譚竹はさまざまな理由で、胖猫に金銭やプレゼントを要求し、胖猫はその都度彼女の要求に応じていました。譚竹は花屋を開く夢があり、開業資金として、10万元(約216万円)が足りないと言い、胖猫は迷わず、お金を振り込みました。

 2023年末、譚竹は「遠距離恋愛に耐えられない」として、別れを切り出しました。胖猫は湖南から、譚竹がいる都市、重慶へ駆けつけ、関係を修復しようとしました。しかし、重慶に着いたら、譚竹はすぐに同居することを望まないと言い、胖猫に外でアパートを借りるよう促しました。以前は同棲の約束をしていたにも関わらず、胖猫はアパートで待機し、引き続きゲーム代行を行いました。胖猫は技術が高く勤勉なため、これまでにかなりの金額を貯めていましたが、譚竹のために節約し、食事は一食約10元(約216円)に抑えていました。

 2024年3月、胖猫は譚竹に新しいスマートフォンを誕生日プレゼントとして送った後、譚竹は彼に対して冷たい態度をとり始め、4月初めまで続きました。その後、胖猫が情緒的価値を提供できないという理由で、譚竹はまた別れを切り出しました。この時、胖猫は愛情のために家族との連絡もまれになり、彼の世界は完全に譚竹を中心に回っていました。過去の努力に対する苦しみを感じながら、何度も復縁を試みましたが失敗し、最終的には一人で川辺に行き、自分の最後の貯金である6.6万元(約142万円)を譚竹に全額送金し、「自発的な贈与」と明記しました。その後、譚竹の花屋から花束を注文し、最後の挽回を試みましたが、譚竹は彼の努力を無視し続けました。絶望の中で、胖猫は重慶の長江大橋から飛び降りました。

 胖猫の姉によると、胖猫が譚竹に送った金額は51万元(約1100万円)に上るとのことです。多くのネットユーザーは「胖猫」の遭遇に同情し、チャットの記録からわかるように、譚竹が胖猫に対する請求は際限がないといいます。焼肉、ワクチン接種、住宅ローンの返済、運転免許の取得、車の購入、乳がんワクチンの接種など、彼女は遠慮なく「胖猫」に求めていました。

 この事件がメディアに報道された後、多くの人々が「胖猫」の遭遇に共感し、重慶の長江大橋に自発的にミルクティー、ハンバーガー、花を送り、彼が生前にちゃんとした食事やスナックを楽しむことができなかったことに心を痛めました。

 「胖猫」の話は多くのネットユーザーの関心と議論を呼び起こしました。その理由は、彼の真摯な努力が報われなかったことを痛ましく思い、そして中国には愛のためにすべてを捧げる多くの人々がいる一方で、愛を金儲けの手段として利用する人々も多いからです。

 バブル時代には「アッシーくん」「メッシーくん」「ミツグくん」と呼ばれる男がいました。アッシーくんは女性が移動したいときに、マイカーで送迎する男性のことを指します。メッシーくんとは女性を高級レストランに招待する男性のことを指します。ミツグくんとは女性に高級品を贈る男性のことを指します。一方、女性たちはアッシーくんやメッシーくんらに必ずしも恋愛感情を抱いているわけではありません。このような現象はバブルの終焉と共に、徐々に消え、これらの言葉も死語となりつつあります。しかし、中国では近年似たような現象が現れました。多くの男性が好きな女性を追求するためには、呼ばれれば即座に応じ、「帰れ」と言われば、すぐに去ります。映画鑑賞や高級レストランでの食事、時には贈り物を送ることもしばしばで、彼女たちを喜ばせるためには自分の生活費を最低限に抑え、ほとんどの給料を上納してしまう男性も少なくありません。このような男性は中国では「舔狗(ロデ男)」と呼ばれています。

 「ロデ男(ロデ男)」に対応するのが「撈女(頂き女子)」です。「頂き女子」は金銭や物質的な利益のために、原則や尊厳を犠牲にする女性のことを指します。彼女たちは目的を達成するためにあらゆる手段を選ばず、自身の体や魂を売ることも辞さないことがあります。「頂き女子」は男性の財産を移転するために感情、思考、身体を利用します。彼女たちは複数の男性と名目上の恋愛関係を維持し、性的関係を持つこともあります。これらの女性は時間管理に長け、可能な限り同棲を避けます。なぜなら、同棲すると彼女たちの実際の生活状況が露見するからです。この業界の価値観は、「一人の男性に全てをさせることはできないかもしれませんが、多くの男性に次々と投資させることが可能です」というものです。「頂き女子」は各種ソーシャルプラットフォームを通じて自らの容姿、スタイル、学歴をアピールし、男性を引きつけます。彼女たちは自分のイメージ管理を非常に大切にし、外見は清楚なものから名門大学出身のものまで様々です。通常の交際では、彼女が職業的な「頂き女子」であるかどうかを判断することは難しいですが、深く関わると彼女たちの本当の姿が明らかになります。彼女たちの目的は、金銭を得ることであり、そのためには意図的に対立を生み出し、無理な要求をして、喧嘩後の和解を通じて、感情を深め、男性に自発的に金銭やギフトを提供させるように仕向けます。

 ネットユーザーは分析していますが、胖猫が譚竹との交際中に多くの矛盾を見せていました。例えば、ゲームを通じて知り合い、めったに会わない、同棲を拒否する、態度が不安定、金銭を絶えず要求するなどです。しかし、経験不足で情に厚い21歳の若者として、彼は「頂き女子」が中国で一種の職業になっていることを認識していませんでした。彼女たちは未熟ながら経済的に自立している若い男性を最も上手く利用します。これらの男性は、すべての金を使い果たした後、自分自身を深く責め、彼女に十分な感情的価値を提供していないと自責の念に駆られます。

 胖猫を追悼する記事の下で、あるネットユーザーは「金だけを要求する人を信じてはいけません。本当にあなたを気にかける人は、あなたが無駄遣いをしないことを望みます。私が毎回実家に帰るときはいつも多くのプレゼントを持って行きますが、両親はいつも、お金を稼ぐのは簡単ではないので、無駄遣いをしないようにと言います」というコメントを残しました。

(翻訳・吉原木子)