中国のファーウェイの電気自動車(EV)「AITO(アイト)M7」が4月26日、山西省運城市の高速道路で、散水車(さんすいしゃ)に追突しました。追突後に車が炎上し、窓とドアが開かなくなったため、3人が焼死しました。
複数の中国メディアによると、死亡者の姉が語ったところによれば、弟は4月26日の夕方、購入してからわずか3ヶ月のファーウェイ「AITO M7」を運転していました。彼女の夫と2歳の息子も車に同乗し、山西省運城市夏県(かけん)の高速道路で最も内側の車線を走行していました。
当時、最内側の車線に突然散水車が現れ、何の警告標識もなく中央分離帯の緑地に水を撒きながら低速で走行していました。この状況下で、ファーウェイ「AITO M7」がブレーキを踏むことに間に合わず散水車に追突しました。事故が発生した瞬間、彼女の夫は右前席から車外に投げ出されて死亡し、弟と息子は車のドアがロックされたため、逃げる事も出来ずその場で亡くなりました。
死者の家族は、約530万円(25万元)で購入したファーウェイ製の「AITO M7」が、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)やGAEB(障害物対応自動ブレーキ)機能を装備しているにも関わらず、事故時に自動的な緊急ブレーキが作動しなかったことに疑問を呈しました。さらに、衝突と同時にバッテリーが発火し、車内のエアバッグも運転者を守ることができませんでした。
中国のネット上で広く共有された後に削除された動画によると、事故発生時に通りかかったドライバーが窓ガラスを割って助けようとした様子が映っています。これは、事故時にこのファーウェイの「AITO M7」のドアが確かに開かなかったことを示しています。
また、中国のネットユーザーのスクリーンショットやソーシャルメディアプラットフォームXのユーザーが公開した情報によると、死者の家族が投稿した質問内容や、通りがかりのドライバーが撮影した動画も、後にネットワーク管理者によって迅速に削除されたとのことです。
ネットユーザーからツッコミや嘆くコメントが殺到しました。
「情報封鎖は群を抜いている」
「もしテスラ(の車)が炎上したら、全国のメディアが被害者のために正義を追求してくれるだろう」
「もう亡くなった方々の安息を祈るしかない。ファーウェイだから、不運を自分で耐えるしかない。今後はファーウェイの製品には手を出さない方がいい。理不尽なことを訴える場所もない」
「正直言って、今は新エネルギー車の購入を控えるべきだ。やはり古いブランドの自動車メーカーの方が安全である」
事故から約2時間後、死者の家族はファーウェイのカスタマーサービスからの電話を受けたが、車のアフターサービス体験について聞かれたのみで、救助などの話題には一切触れませんでした。これにより、彼女は非常に困惑しました。
中国のEV車の自然発火事故が頻発
中国製電気自動車の安全性が問題視されています。ファーウェイの「AITO M7」の事例に加え、比亜迪(BYD)の電気自動車も頻繁に爆発や自然発火が発生しています。
4月22日には比亚迪の車が路上で突然自然発火する事故が発生しました。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、今年1月、ロンドンで発生した比亜迪製バスの火災を受け、英国の関連部署が約2000台の公共バスに緊急リコールを行いました。調査の結果、放置されたバスが暖房、換気、および空調システムに問題により発火した可能性が指摘されました。
また、中国総合ニュースサイト大手である鳳凰網(ifeng.com)によると、中国製の電気自動車は平均して毎日8台が自然発火しており、これが公衆の安全に対する懸念を高めています。
中国のEV、燃料車よりも発火確率が高い
中国科学技術大学の孫金華教授は、2022年の世界動電池大会で、「新エネルギー車(EV)の発火確率が燃料車よりも高い」という研究結果を発表しました。
孫教授によると、2021年末の中国国内の電気自動車の保有台数は約784万台で、その年だけで3,000件以上の火災事故が報告されました。これに基づくと、火災発生率は約0.03%から0.04%と推計されます。
一方、過去のデータによると、燃料車の火災事故率は0.01%から0.02%であることから、中国の電気自動車の火災事故率は、燃料車より約2倍高いことが明らかになりました。さらに、電気自動車の火災発生のうち、走行中が40%、充電中が35%、駐車中が25%とされ、静止状態での充電中や駐車中の火災事故が全体の60%を占めています。
清華大学の宋健教授は、電気自動車の発火確率が高い理由について「衝突後に発火しやすいのは電気自動車の特徴である。ガソリンタンクは外部に密閉された構造で、ガソリンが外に漏れない限り発火しないが、バッテリーはそれ自体に酸化剤と可燃物質を含むため、より発火しやすい」と指摘しました。この情報は、新エネルギー車の安全性に対する新たな認識と警鐘を鳴らすものです。
EVの火災、消火がより困難で再発火のリスクも高い
電気自動車の火災は、その消火が特に困難であるとされています。一般的に、燃料車の火災を消火するためは約1トンの水が必要ですが、電気自動車の場合は、10数トンから100トンもの大量の水が必要となります。
公開情報によると、2022年4月に米国で発生したテスラ・モデルSの衝突事故では、消防隊が消火作業に7時間を費やし、合計106トンの水を使用した事例があります。
さらに、電気自動車の火災は再び発火する確率が高いという問題も抱えています。電気自動車のリチウムイオンバッテリーが熱暴走を起すと、エネルギーが一瞬で全て放出するわけではなく、熱が周囲のバッテリーセルに徐々に広がるため、消火後も再び火がついてしまうことがあります。ある関係機関の試算によると、リチウムバッテリーの火災は最大で15回まで再発火する可能性があるとされています。
EVの火災事故、車主の逃げ出す時間が短い
電気自動車の火災は、その発火の予兆が少なく、燃え広がる速度が非常に速いため、車内の乗客に逃げ出す時間が極めて短いことが問題となっています。一方で、伝統的な燃料車の火災は、比較的ゆっくりと進行し、最初に煙が出始めることが一般的です。このため、燃料車での自然発火による怪我や命の危険にさらされるケースは稀です。
電気自動車では、極端な衝突後の変形で即座に発火することがあります。公式の規定では、合格した電気自動車は事故発生から5分以内に発火や煙を起こしてはないとされているが、実際には極端な衝突で変形した場合、5分間の逃げる時間は短すぎることがしばしばです。さらに、衝突により車体の変形でドアがロックされると、救助の遅れが生じる可能性があります。また、新エネルギー車が自然発火する場合には、爆発や有毒ガスの放出など、さらなる問題が伴うことも重要なリスクとして考慮されます。
(翻訳・藍彧)