中国では、当局の暴力的な強制立ち退きによって数え切れないほどの悲劇が引き起こされています。SNS「X」の投稿によると、強制立ち退きは民家の取り壊しにとどまらず、村ごとなくなる場合もあり、村民の死活は眼中にないといいます。本日取り上げるのは、つい最近起きた2件の強制立退事件です。
山東省済南市 民家の強制立退
3月29日、山東省済南市の個人所有の建物が当局の強制立ち退きに遭いました。所有者とその妻は消火器や斧で抵抗したものの、最終的に警察に連行され、建物は当局によって取り壊されました。
ソーシャルメディア「X」のアカウント『真相メディア』は、3月29日、山東省済南市市中区文庄村(しちゅうく ぶんしょうそん)の民家が当局の強制立ち退きに遭ったとする動画を公開しました。 所有者とその妻は建物の屋上でプロパンガスのボンベや消火器、斧などで必死に抵抗しましたが、大人数の当局者には勝てませんでした。住宅は取り壊され、所有者は憤りのあまり建物に火を付けましたが、最終的に警察に連行されました。
動画では、四方を封鎖された建物から黒い煙が立ち上っており、手にガスボンベを持った中年女性がバルコニーで、かすれた声で叫びながら、石のような物を下に投げつけています。
その後、所有者夫婦は建物の屋上に上がり、男性は斧を持って必死に抵抗しています。 民家の前には黒い制服姿の政府関係者や大型のショベルカー数台が待機しています。所有者夫婦がまだ屋上にいるにも関わらず、ショベルカーが取り壊しを始めると、絶望した夫婦はショベルカーに向かって石を投げつけました。
これに対し、多くのネットユーザーが怒りの声をあげました。
「中国人の苦しみはすべて、司法が独立しておらず、政府がやりたい放題であることに起因している」「中国共産党の城管は匪賊そのものだ。政府が育てた地方の匪賊で、制服を着た不法な盗賊、ならず者、暴力団の犯罪者集団である」
「これは、中国人が悪魔のために賛美歌を歌ってきた代償だ」「これが彼らが銃を禁ずる目的だ。銃がなければ、このような場合、ちっぽけな庶民は一方的に殴られるしかない」「党の鉄拳がまだ自分に降りかかっていないと、彼らはまだ自分たちが社会主義の後継者だと思っている」「中国は共産主義国家であり、あなたの命、土地、財産を含むすべてのものは党のものであり、庶民は何十年生きていても、まだ自分たちのものであると勘違いしている」
湖南省吉首市 村単位の強制立退
最近、湖南省政府は大興寨(だいこうさい)ダム建設のため、湖南省西部の吉首市矮寨鎮(わいさいちん)のいくつかの村で強制立退を強行しました。
3月29日、ラジオ・フリー・アジア(RFA)はSNS「X」に動画を投稿し、湖南省西部の矮寨鎮政府が大興寨ダム建設プロジェクトのために地元住民の家屋を強制的に撤去し、住民と警察との激しい衝突に発展したと伝えました。当局の公式メディアは、このプロジェクトによって10年に1度の洪水の防止効果から、50年に1度の大洪水を防止できるようになると報じています。しかし、地元住民は、この地域で洪水が起きたことは一度もないとコメントしています。
映像には、大型ショベルカーが綺麗に並んでいる2階建て住宅を取り壊している様子が映し出されていています。当局は大量の警察官を派遣して、抵抗する村民を鎮圧しました。一部の村民は地面に倒れ、複数の村民は強制連行されました。
湖南省のあるネットユーザーは、「私は70年も生きているが、洪水に遭ったことは一度もない。 大興ダムを建設するために、10年に一度の洪水などと言っているが、これまでにどれだけの村民に危害を与えているのか。これは人々に害を与えるプロジェクトだ」「8834ムー(59ヘクタール)もの農地を強制的に占拠し、将来の世代はどうやって生きていくのか」と怒りをあらわにしています。
このことについて、中国の元メディア関係者の趙蘭健(ちょう・らんけん)氏は3月30日、SNS「X」で、2014年以前に3カ月間にわたって水力発電所建設のための強制立退や移転に関する調査と取材を行った際、家を取り壊された被害者たちと一緒に過ごしたことがあるため、「農業が盛んな肥沃な土地」から追われて行き場を失った被害者たちの窮状を深く理解しているとツイートしました。
趙蘭健氏は、彼らの多くは、自給自足の裕福な生活から「住む場所もない廃品回収者」へと転落し、「彼らの家はダムに沈んでいる」一方で、皮肉にも彼らが回収して生計を立てている廃品は「彼らの土地を強制収用した水力発電所が捨てたゴミ」だと述べました。また、当時発表できた内容は取材内容のごく一部にすぎず、それすら度重なる粛清を受け、ネット上から削除されたといいます。
趙蘭健氏は、「当時、警察や当局者に追われて落胆していた強制移転被害者たちは私たちの前で集団で跪いて懇願していたが、私たちもどうしようもなく、どうしたらいいかわからず途方に暮れていた」とし、これらの内容は報道できなかったといいます。
あるネットユーザーは、「将来、洪水が起きるかどうかは幹部によって決められる。地元の人が言うことは無視される」「洪水がなくても共産党なら作り出せる。涿州市が水没したのを見ただろう?」
アカウント名「自由派」は、「このような状況は、中国の至る所で見られる。 私も政府による強制立ち退きに遭い、北京に陳情に行ったが、その時初めてわが国はすでに腐敗した人々によって掌握されていることがわかった。彼らは自分たちが制定した法律すら守らないし、利益のためならなんでもする。それ以来、私は政府が庶民のために何かをするなんてことは信じない」とコメントしています。
中共当局は、民家や村を取り壊すだけでなく、宗教施設も取り壊しています。 安徽省のキリスト教徒である王さんはラジオ・フリー・アジアの取材に対し、寧夏回族自治区、甘粛省、青海省などの西部地区には回族が多く住んでおり、多くのモスクがあるが、近年、これらの地区のモスクのドーム型屋根が当局によって強制的に取り壊されている。キリスト教会の十字架はほぼ全部撤去されており、次は他の宗教がターゲットになるだろう」と述べました。
(翻訳・銀河)