米国に亡命中の元中国民間企業家である陳霆(ちんてい)氏は最近、他3人の企業家と共に、「中国民間企業家の維権(権利擁護)連盟」を立ち上げました。この億万長者の企業家に何が起こり、米国に一人で逃亡せざるを得なくなったのでしょうか?弊社が陳氏に独占インタビューを行いました。
記者:中国国内では民間企業家として活躍されていましたが、当時はどのようなビジネスをされていたのですか?また、なぜ後に中国共産党に全資産を取り上げられたのでしょうか?
陳霆氏:私は江西省九江市出身で、かつて砂利鉱山や工場、ホテル、質屋を所有していました。これらの事業を約20年間近く経営し、総資産はおおよそ十数億元(約数百億円)ほどでした。
2020年5月8日、私の全事業が一夜にして突然差し押さえられました。家族の男性全員が(不法に)逮捕され、会社の管理層や経理担当者など20数名も(不法に)拘束されました。その理由は暴力団と関係があるとされました。しかし、警察は私や親族の犯罪証拠をオンラインで集め始めたのは、(不法に)逮捕された後のことでした。警察は私の家を7日間家宅捜査し、家の中の貴重品はすべて持ち去られ、すべての銀行口座(家族の個人口座を含む)も全部凍結され、未だに凍結状態にあります。
記者:その原因を分析していただけますか?
陳霆氏:原因は、私が地元の役人をうっかり怒らせたからです。以前、ある企業主にお金を貸しましたが、後に彼が資金難に陥り、銀行で7000万元(約15億円)の融資をだまし取ったのです。それを知った私は彼を裁判所に提訴し、警察が彼を逮捕しました。私が知らなかったのは、その企業には多くの政府関係者が出資しており、その中には地元の共産党紀律検査委員会の副書記や検察庁の副局長も含まれていました。その企業主が有罪判決を受けた後、私は関連する役人を訪ねて、「あなたたちがその企業で出資していることを知らなかった」と言いました。しかし、その役人は今更謝罪しても遅い、「あなたには間違いなくトラブルに遭う」と言いました。
私はトラブルに遭うだろうと予感がしていたため、2018年末に香港に移住しました。当時、自分が法を犯していないし、行いもすべて合法であるし、大量の資産を香港に移す必要はないと思いました。
記者:ご家族や会社の従業員が逮捕された後、どうなりましたか?
陳霆氏:南昌市の公安局では、警察が彼らを45日間も強制的に椅子に座らせました。食事や排泄もすべて椅子の上で行われました。椅子から立ち上がった時に、彼らはすでに両足とも歩けなくなり、筋肉が壊死してしまいました。
私の親族の多くが有罪判決を受けました。罪状は暴力団への加入、違法融資、違法採掘です。私の弟は15年、兄の娘婿は2年、妹の息子は5年、妻の妹の夫は8年の刑を言い渡されました。会社の従業員もそれぞれ7年から18年の刑を言い渡されました。しかも、控訴することを許されていません。
これらの罪状は全て濡れ衣です。いわゆる違法採掘の罪とは、当時、私たちが(砂利鉱山を)採掘していた際、境界線が明確でなく、時々境界線を越えることがありました。そのため、鉱業局はすでに調査を行い、罰金を科しました。しかし、地方政府は超過採掘の証拠とする文書を提出しました。私の弁護士は、その期間中には採掘していないので、そのデータはどこから来たのかと疑問を呈しました。
2013年までは、利息が3セントを超える貸付は高利貸しであるというのが国の規則でした。私(の貸付業務)は全ての対外貸付を3セントの利息で行いました。後に2018年には、利息が2セントを超える貸付が高利貸しと規定が変更されました。しかし、警察が親戚などを(不法に)逮捕しに来たとき、以前の3セントで利息を行っていた貸付は違法であると言いました。したがって、違法貸付という罪名も成立しません。
2022年7月1日、中国当局は私にレッド・ノーティスを発行し、25年の刑を言い渡されたとされているが、どのような罪を犯したかは書かれていませんでした。当時私は香港に滞在していたので、このことを知りませんでした。2022年12月1日に香港を離れて渡米した際、米国税関に拘束され、その時初めてレッド・ノーティスの存在を知りました。私はアトランタの移民拘留所に拘束され、移民局との裁判闘争を1年以上続けました。
記者:あなたの身に起きたこのようなことは孤立した事件でしょうか、それとも中国当局が大規模的な民間企業家に対する打撃・迫害でしょうか?
陳霆氏:おそらく2018年から地方政府が大規模に行っています。地元では、経営が順調な企業家がほぼ全員当局に目をつけられています。江西省内の裕福な企業主のほとんどが(不法に)逮捕されたことがあり、有罪判決を受けた者もいれば、大金を支払って釈放された者もいました。私の知る限り、ビジネスをしていて少し裕福な人がみな(不法に)逮捕されています。
記者:民間企業家に対するこのような弾圧や迫害は信じられないことですが、なぜ中国でこんなことが起こるのでしょうか?
陳霆氏:習近平氏が政権に就いてから、民間企業を打撃してきました。習氏のスローガンは、民間企業をなくし、すべてを国有化することです。これが、地方政府が民間企業を打撃する根本的な原因です。
記者:今年の全国両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)で、政府は民間企業を保護し、支援すると述べました。どう思われますか?
陳霆氏:それは不可能です。政府が本当に民間企業を支援するつもりなら、私たちのようなケースに関心を払い、冤罪の被害者を釈放し、過ちを正すでしょう。それが民間企業にとって為になることです。口先だけで、実際には民間企業を支援することはないでしょう。
記者:中国の経済は今、急激に後退しており、国民は今仕事を見つけることができません。このまま続けると、中国はどのような状況に直面すると思われますか?
陳霆氏:中国がこのまま続けると、国民は非常に悲惨な状況になり、暮らしがますます厳しくなるでしょう。中国国内の友人が電話で、中国を離れる方法を尋ねてきます。彼らは中国国内で仕事が見つからず、ビジネスができず、食事すらままならない状況にある人もいます。
記者:江西省の4人の企業家は、海外で民間企業家の連盟を立ち上げることにしたそうですが、この連盟は最終的にどのような目標を達成することを目指していますか?
陳霆氏:私たちは国際的に認められたいのです。例えば、私たちに対するレッド・ノーティスは無効であることを示したいと考えています。関連する国際法に基づいて訴訟を行いたいとも思っています。そうすることで、一方では私たちの問題を解決することができ、他方では、より多くの迫害されている民間企業家をサポートし、声をあげるプラットフォームを構築することもできます。
私の人生で最大な願いは、中国共産党が崩壊することを見られることです。そうでなければ、私は死んでも死に切れません。
(翻訳・藍彧)