中国のある外科医が3月9日、中国国内の病院ではある現象が蔓延していると暴露しました。例えば、簡単な手術を大手術にしたり、手術しなくてもよい軽い症状であっても手術したりするということが日常茶飯事に行われているといいます。

 中国広東省深圳市にある香港大学深圳病院(深圳市濱海医院)は、深圳市政府が投資して建設した「三甲医院」です。三甲医院とは、国家が、医療レベルやサービスにおいてトップレベルに分類した病院のことを指します。

 中国メディア『新京報』と『和迅網』の2月29日付の報道によると、77歳の張玉華さんは2018年8月、同病院の人間ドックで胆嚢結石が見つかり、治療のために入院しました。その後の検査で「膵臓悪性腫瘍の可能性が高い」と診断され、膵臓と脾臓の摘出手術を受けました。 手術から約2カ月後、張さんは重度の肝不全と肝腎症候群により死亡しました。

 張玉華さんの娘、郇傑(しゅんけつ)さんは、母親の死亡後、母のカルテをプリントアウトしたときに奇怪なことに気づきました。なんと、術前の検査でも手術中の病理検査でも、膵臓にしこりや病変が見つかったという記録はなかったのです。

 郇傑さんと家族は2019年8月、深圳市福田区地方裁判所に医療損害賠償責任紛争民事訴訟を提起しました。 裁判所は広東中一司法鑑定センターに鑑定を依頼しました。 鑑定の結果、病院は他の医療機関のPET-CT検査報告に基づいて張玉華さんを「膵臓癌」と診断しただけで、複数の術前検査で膵臓の腫瘍や腫瘍細胞は確認されなかった。手術中でも膵臓に明らかな腫れや病変は確認されなかったが、家族に直ちに知らせなかった。 さらに、患者は高齢で、高血圧の既往があり、明らかな悪性腫瘍の組織学的所見がないまま膵臓を摘出したため、手術によるダメージが大きく、患者の全身の代謝や電解質バランスに重大な影響を及ぼした。ゆえに、「張さんの死亡は手術方法と一定の関係がある」と判断されました。

 郇傑さんはソーシャルメディアで最近、香港大学深圳病院が「強制的な臓器摘出」の疑いがあると訴え、この件を追及すると宣言しました。

利益最優先 喪失した医療倫理

 今回の事件を受けて、中国で外科医として働いた経験のある関(かん)さんは大紀元時報の取材に対し、中国の病院では、より多くの利益を上げるために、無闇に手術を行うことが一般的であると語りました。 小さな手術が大きな手術になることがあり、手術しなくても良い症例でも患者は手術を勧められることが多いといいます。

 関さんは、患者は弱者で受動的で、判断するための専門知識を持っていないと考えています。 医師が高い医療倫理を持ち、道徳水準の高い社会であれば、患者は医師の判断に任せればいいだけで、専門的な医療知識を身につける必要はありません。 しかし、中国では社会全体の倫理観や道徳が中国共産党によって徹底的に破壊され、医師と患者の医療紛争は増え続けています。

 上海市民の王さんは、大紀元のインタビューに対し、「多くの人が病院に行くのを恐れている。軽い症状でも重い病気として治療されたりするからだ。みんなお金が第一で、医者も金儲けを中心にものを考える。 この社会にはもう医療倫理はない」と述べました。

 中国のQ&Aサイト「知乎(ちこ)」では、ある女性ネットユーザーが自身の体験を語りました。女性は帝王切開で子供を出産し、医者には果物4箱を送りましたが、出産後に残った切開の傷跡は15センチでした。一方、近所の女性は2回出産していますが、2回の手術跡を足しても15センチに及ばなかったといいます。その女性は手術前には毎回医者に現金を送っており、医者はその見返りとして、ダメージを最小限に抑え、赤ん坊をゆっくり取り出していたとのことです。このユーザーによると、医者は袖の下を贈っていない患者に対しては、赤ん坊を取り出しやすいように大きく切開し、縫合は研修医の練習用に回すのだといいます。

 古代中国の薬局の前には通常「薬棚に埃が積もってもいいから、世の人々に病気がないことを願う」と書かれた対聯(ついれん)が掲げられていました。 横書きの掛け物には「世天下太平」と書かれており、病人に対する医師としての博愛を体現していました。 しかし、中国共産党支配下の現在の中国では、病院は患者の治療や回復より、金儲けを最優先しています。

 中国では、当局により公立病院の独立採算制が導入されてから、病院や医師が経済的利益を追求して手術を増やすという現象が起きています。 政府が推進してきた医薬品の高い利益で病院の経済的利益を引き出し、病院の運営を維持する政策は、つまり医師が自分でお金を稼ぐ方法を見つけなければならないことを意味するのです。

 米国在住の時事評論家唐靖遠(とう・せいえん)さんは、番組「エリート論壇」で次のように述べました。「病院の腐敗の根本原因は、中国共産党が医薬品の高い利益で病院の経営を維持するというこの政策にある。この薬とは広義のもので、薬だけを指すのではなく、医療機器、消耗品も含まれる。特に消耗品は非常に大量に使用されるため、莫大な利益の余地がある。医薬品の利益で経営を維持するということは、病院が医薬品や消耗品を購入する際に販売業者から受け取るリベートによって経営が支えられているということである。リベートの最高額は輸入医薬品の利益の約25%に達し、これを医師が山分けする。 医師の中には、患者に必要のない治療を受けさせようとする者さえいる」

医療の産業化 病院は利益の最大化を目指す

 2022年1月27日、広東省東莞市の康華医院は年度総大会で、「新年を勢い良く迎えよう、手術室は金でいっぱいだ」と書かれた横断幕を掲げ、騒然となりました。のちに世論の圧力を受け、病院側は最終的に公に謝罪しました。

 2022年8月9日、四川省瀘州市にある富康医院の内部研修ビデオがネット上で暴露されました。大型スクリーンに映し出された目次には、「いかにして患者を長期的に引き留め、行列を作って金を持って来させるか」といった内容が登場し、世論の反発を招きました。 利益至上主義による医療倫理の喪失が再び話題となりました。

 北京在住の憲法学者、陳永苗(ちん・えいびょう)さんは大紀元に対し、病院が利益最大化を追求するのは、政府の医療産業化政策の必然的な結果であると指摘し、「医療が産業化されてから、病院は利益を追求する営利機関と化し、医師は患者の金を奪い取ることを最優先事項としている。利益最大化を実現するためだ」と語っています。

 中国共産党の医療産業化について、唐靖遠さんは、「通常であれば、病院は公益機関であり、社会的責任を負うべきであり、利益を主要目的とする営利機関になってはならない。 中共がこの医療改革を打ち出して以来、大きな弊害が生じており、病院全体の業績が利益の額で測られるようになった。 また、一部の地方政府は病院を重要な企業とみなし、地方税を徴収する主要な財源とみなしている。 これは病院の公共福祉的性格を大きく損なっている」と述べています。

(翻訳・銀河)