ここ2年間、日本に中国から多くのエリート知識人(インテリ)が押し寄せています。属性はジャーナリスト、人権派弁護士、ドキュメンタリー映画の監督、出版業者、学者、芸術家と多岐にわたります。この現象は、あたかも清朝末期に日本で西洋思想を吸収した後に帰国し、辛亥革命(1911年)をリードした先人たちのようです。

 では、近代中国の社会変革や近代化の過程おいて、日本はどのような役割を果たしたのでしょうか?また、現在のエリート知識人が日本に移住する社会的な流れが、将来の中国に新たな変革をもたらす可能性はあるのでしょうか?中国の専門家たちは、中国語大紀元時報の「エリート・フォーラム(菁英論壇)」番組で、これらの問題について深く議論しました。

インド太平洋は将来の世界の中核地域だ

 中国語「大紀元時報」総編集長の郭君(かくくん)氏は、国際政治や経済において日本の役割は今後ますます重要になり、これはアメリカのインド太平洋戦略と関係していると述べました。今後50年から100年の間、インド太平洋地域は世界経済の焦点となる可能性があり、また、世界経済成長の次の地域として確実に存在するでしょう。過去100年間、世界経済成長の中心地域は北米でしたが、その前の100年はヨーロッパでした。したがって、インド太平洋地域のアジアが将来どれほど重要になるかは想像がつくでしょう。

 インド太平洋地域は、東北アジアと東南アジアの2つの主要な地域で構成されています。東北アジアには、日本、中国、韓国、台湾が含まれ、総人口は16億人です。東南アジアはASEAN諸国で構成され、人口は7億人です。周辺地域には、14億人のインド人口が加わります。世界人口の大部分を占める国々がすべてこの地域に存在します。インド太平洋地域全体では、過去10年間の急速な成長によって、少なくとも5億人の中産階級の富裕層が生まれました。今後20年間でさらに5億人が増える可能性があると予測されています。これは、世界の地政学的な構図にとって非常に大きな変化をもたらすでしょう。

 人類の歴史上、人口が密集し、資金が集中する地域ほど、紛争や衝突もより大きく集中します。したがって、今後、アジア太平洋地域は急速に発展する一方で、さまざまな紛争も集中的に発生するでしょう。

 世界の主要な国々は、この地域における将来の展望について配置を行っており、アメリカ、欧州、ロシアが配置しています。日本、中国、インドなども同様です。
現在、アメリカと日本が最も積極的であり、アメリカのインド太平洋戦略は、最初に元首相である安倍晋三氏によって提唱され、後にアメリカが受け入れました。そのため、現在、アメリカのメディアは常に「インド太平洋」について話題にしています。これは非常に顕著な変化です。

 日本はアジアで最初に近代化を遂げた国であり、アジアに対する影響力は絶大であると郭君氏が述べました。今後は経済や技術だけでなく、軍事面での影響力も大幅に強化される可能性があります。また、日本のエリート層も意識的に、この地域の将来的な発展においてより重要な役割を果たそうとしていくでしょう。

現代中国語の語彙の4割は日本に由来

 郭君氏は、日本人の学習と模倣能力が非常に高く、自己調整能力も非常に強いと考えています。日本はアジアで最初に近代化を実現した国であり、また、ヨーロッパ文明を除き、世界で最初に近代化した国でもあります。そのため、前世紀の中国人は近代化を追求する過程で、日本のものを大量に取り入れ、特に中国語の構造的な見直しを行いました。

 前世紀初頭(1910年代後半)に中国で起きた文学革命(ぶんがくかくめい)もしくは白話運動(はくわうんどう)として知られる運動は、それまでの書き言葉としての古文や文語文(ぶんごぶん)から、話し言葉としての白話への転換を推し進める徹底的な変革をもたらしました。この運動の中心人物は、陳独秀(ちんどくしゅう)であり、彼の創刊した「新青年」という啓蒙雑誌(白話運動を推進する文学革命の中心的雑誌)に寄稿した、魯迅(ろじん)・銭玄同(せんげんどう)・胡適(こてき)などの人々がいました。

 白話運動は、中国人の書き言葉の習慣だけでなく、さらに重要なことに、多くの新しい概念を中国語で表現し、さらに創造しました。これらの新しい概念の中国語の単語や表現の大部分は、日本から学んだものです。例えば、共産主義、資本主義、封建主義などの近代政治の概念、科学、物理学、化学、生物学などの基本的な科学概念、そして近代ビジネス用語など、日本から大いに学んだものです。

 政府システムの概念も同様で、例えば議会、公安局、派出所、行政長官などは、直接現代的な日本語から取り入れられました。

 統計によると、今日中国人が記事を書く際、少なくとも40%から50%の中国語の語彙は実際には日本人によって創造されたものだと言われています。

 郭君氏は、これらの近代化語彙がないと、中国がどのようにして近代化のプロセスを始めるか想像するのは難しいと述べました。例えば、中国の古典文語で物理学の電磁気学や相対性理論を説明することは非常に困難であり、ほとんど不可能です。

 したがって、文化や文明の近代化は、まずその言語と概念の近代化から始まります。中国のこの最初の段階は、日本から学んだものであり、少なくとも日本人と中国人が共同でこのプロセスを完成させました。

中国の知的エリートが再び日本に集結

 台湾国立政治大学の陳文甲教授は次のように述べました。前世紀初頭、日本はアジア唯一の近代化国家であり、これは当時の中国にとって強力な魅力を持っていました。そのため、多くの中国の若者が日本に留学しました。孫文は日本で中国同盟会を結成し、後に蒋介石も日本の陸軍士官学校に入学しました。前世紀の日本は中国に対して深い影響を与えました。

 独立系テレビ・プロデューサーである李軍氏は、ここ数年間、中国大陸から日本への移住者がますます増えていると述べました。現在、日本には約300万人の外国人がいますが、そのうちの100万人が華人です。日本の統計によると、2015年の時点では、華人はおおよそ80万人でしたが、2015年から現在までに20万人増加しました。そして、この100万人の華人のうち、約3分の1が東京に住んでいます。

 また、ここ数年、特に中国で非常に有名な知識人も大勢来日しています。たとえば、中国の有名な歴史学者である秦暉(チンホゥイ)氏は、かつて清華大学の教授でしたが、現在は東京大学の客員教授です。秦暉氏は日本で講演会やサロンなどのイベントを頻繁に開催しており、これらのイベントに参加する人々はほとんどが華人で、その多くは北京大学の教授です。

 近代史に精通した作家の傅国涌(ふ・こくよう)氏も日本に身を寄せています。傅氏も都内で「在東京重造中国(東京で中国を再建する)」というテーマで、清朝末期に日本にやってきた中国人思想家についての連続講座を開いています。

 大紀元時報のシニアエディターおよびチーフライターである石山氏は、中国で次の変革の波が来ることを期待し、現在日本にいるこれらの中国の政治エリートや文化エリートが、中国に次の新しい風をもたらすことを期待していると述べました。

(翻訳・藍彧)