対中投資、30年ぶりに最低水準

 中国国家外貨管理局(SAFE)が2月18日に発表したデータによると、昨年の中国の国際収支における直接投資の増加額は330億ドル(約4.9兆円)で、2022年の増加額と比較して82%減少し、1993年以来の最低水準となりました。このデータは、新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)のゼロ・コロナ政策の影響や昨年の経済回復の乏しさを反映しています。

 また、中国国家統計局のデータによると、去年、中国における外資系企業の利益は前年比6.7%減少しました。

 中国商務省が発表したデータによると、去年、中国に新たに進出した外国系企業の直接投資が3年ぶりの最低水準まで減少しました。

 上記のデータから、新型コロナウイルスの「ゼロ・コロナ」政策の実行を停止した後、中国当局は外資誘致するための努力が不十分であることが示されています。中国経済の低迷が続いていることは、地政学的な緊張や他国の金利上昇により、外国資本が中国から撤退する状況を浮き彫りにしています。

 経済先進国はインフレに対処するために利率を引き上げていますが、中国当局は経済を刺激するために利率を引き下げています。そのため、外資は中国ではなく海外に資金を残す動機がより大きくなっています。

 中国に進出している日系企業を対象に最近行われた調査によると、昨年はこれらの企業の多くが投資を削減したか横ばいにとどまり、2024年の見通しに対する楽観的な意見は少ないという結果が示されました。

 昨年、日本企業による新規投資は、過去10年間で最も少なく、日本の新規海外投資のうち中国本土への投資はわずか2.2%でした。日本政府が今月初めに公表したデータによると、これはベトナムやインドへの投資を下回るばかりか、オーストラリアへの投資の四分の一にも満たない水準です。

 台湾企業は長年、中国本土への最大投資家の一つでしたが、2010年にピークに達して以来、中国への新規投資を削減し続けています。先月、台湾当局が公表したデータによると、昨年の台湾企業による中国本土への新規投資額は2001年以来の最低水準であり、台湾企業のグローバル投資全体のわずか11.4%に過ぎませんでした。一方、2010年には83.8%に達していました。

 韓国企業も昨年、中国への投資を削減しました。2023年の1~9月の新規投資は、2022年の同時期と比べて91%減少し、2002年以来の最低水準に低下しました。

海外投資家、中国経済への信頼不足

 欧米企業は投資をする前にビジネス環境を広範囲かつ徹底的に調査します。日本経済新聞の中国語サイト2月19日の報道によると、2023年7月1日に施行された改正「中華人民共和国反間諜法(反スパイ法)」の影響を受けて、多くの調査会社の業務が停滞しているため、外資系企業は中国のビジネス環境の調査レポートを入手できない状況になっています。これが投資に水を差すのは明らかです。

 海外の半導体産業は、米国の対中規制強化の影響を受け、明らかに中国の資本市場からデカップリング(切り離し)をしています。米国の調査会社ロディン・コンサルティング(ロジウム・グループ)のデータによると、半導体産業の直接投資対象として、2018年には中国に占める割合が世界全体の48%でしたが、2022年には1%に激減しました。一方、同期間にアメリカは0%から37%に増加しました。インド、シンガポール、マレーシアの合計シェアも10%から38%に増加しました。

 コーネル大学の経済学教授で、国際通貨基金(IMF)の元中国地域担当責任者であるエスワール・プラサド氏はこのほど、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、中国の景気後退は、「中国経済が困難な時期に突入することを示唆している」と述べました。

 経済が低迷している状況下、投資家たちはリスクを回避するため、中国の資本市場から離れ始めています。

 英国の経済誌「エコノミスト」の記事によると、今年に入ってから中国の株式市場は、中国本土と香港の株式市場だけでも、1月に1.5兆米ドル(約225兆円)を蒸発させました。2021年のピークと比較すると、中国と香港の株式市場は7兆米ドル(約1000兆円)を蒸発させ、約35%減少しました。一方で、同期間に米国の株式市場は14%上昇し、インドの株式市場は60%上昇しました。

 記事の分析によると、外資と内資の両方がかつて中国経済の高成長に信頼を寄せていましたが、現在ではその信頼が失われ、中国経済に深刻な影響をもたらしています。

 「エコノミスト」誌の指摘によると、海外投資家が中国を好まなくなったことです。ここ数か月、海外投資家は中国企業の株式を売り続けています。

 「エコノミスト」誌は、北京当局は当面の間、株式市場を支えるしかできず、習近平氏が金融への支配を緩める可能性は低いため、投資家が中国当局の政治的干渉から逃れることはできないことを認識し、より慎重に投資を検討するようになるでしょう。

 ニューヨーク・タイムズ紙の中国語サイトに掲載された以前の記事では、中国経済は過去40年間、高成長の勢いを見せ、中国を世界的な超大国に押し上げました。しかし、中国経済は現在、一連の危機に直面しています。長年にわたる過剰建設と過度な借入れにより、不動産危機が引き起こされ、同時に債務危機も発生しています。さらに、若者たちは記録的な失業率に苦しんでいます。これらの悪いニュースが次々と報じられる中で、新たな危機が現れています。それが信頼危機です。

 人々は中国経済の将来に対する信頼をますます失い、絶望に変わり始めています。消費者はお金を使いたがらず、企業は投資や雇用創出に消極的で、起業家となる可能性のある人々も新しい会社を作りたがりません。

 オーストラリアの金融大手、マッコーリーグループの香港中国首席経済学家である胡偉俊氏は「信頼不足は現在の中国経済の主要な問題の1つです」と述べました。

 彼はまた、信頼の低下と景気後退は相互に悪化する悪循環を生み出していると述べました。中国の消費者がお金を使わないのは、雇用の見通しに不安を感じているからであり、企業がコストを削減し、採用を停止するのは、消費者がお金を使わないからです。

 これらのコメントは、外資と内資が中国経済の将来に対する懸念を反映しています。過去には、中国の急速な経済成長と巨大な市場が多くの海外投資を引き付けました。しかし、最近の経済の不安定さや政治的リスクが、海外投資家の信頼を揺るがし、投資の動向を変えつつあるようです。

 経済成長の減速は、習近平氏の威圧的な最高指導者としてのイメージを損なうものであり、10年以上にわたる習近平政権の最も持続的で難解な課題になる可能性があります。

(翻訳・藍彧)