中国の経済発展が持続的に低迷し、外資が次々と撤退しており、多くの工場は注文をもらえず、大量の企業が倒産し、失業率が高まっています。このような社会背景の下で、現在安定した仕事を持っていると思われる多くの人々も、非常に不安を感じており、いつ失業してもおかしくありません。さらに、辛うじて存続している企業も利益が出ないため、大量解雇せざるを得なくなっています。中には、解雇による補償金を最小限に抑えるために、従業員が自主的に退職するよう迫る、手段を選ばない企業もあります。

 最近、西安市のある広告会社で働いていた張さんは動画を投稿し、「2023年10月19日に、自分が勤める広告会社が突然、すべての従業員に対して、会社が新しいオフィスへ移転することを通知し、10月23日の朝9時に遅刻せず、タイムカードを打つようにと求めました」と暴露しました。

 張さんによると、元のオフィスは西安市の中心業務地区で、高新区錦業路にありましたが、新しいオフィスは長安区秦嶺の麓にある村にあるとのことです。

 地元の人は、「この村は長安区子午峪の中にあり、子午峪の出口から3キロメートルの距離にあり、すでに秦嶺山麓の範囲に入っています」と紹介しました。

 張さんは、「私は車を運転するのでまだマシですが、車を持っていない同僚は、3時間に1本のバスに乗り、さらに3キロメートル歩いて、30分以上かけて、山間の村道を歩かなければなりません。片道の通勤時間は約2時間で、最寄りの地下鉄駅からタクシーを利用すると50~60元(約1000円~1200円)かかります。さらに、会社は通勤手当を一切支給しないと主張していました」と語りました。

 張さんはまた、「その後、従業員の中には不満を生じ始め、私も社長に電話をし、説明を求めました。10月26日、会社の管理部は『我慢できない、または受け入れられない場合は、自分で退職届を出して、会社は9月と10月の給与を支払います』との声明を出しました。10月27日、私を含め14人が退職届を出しました」と述べました。

 しかし、予想外のことに、張さんたちが退職届を出した後、わずか4日で会社は再び市内に戻り、さらに、インターネットでの求人を始めました。これにより、張さんと退職した同僚たちは非常に憤慨しました。

 「会社の社長は一度も説明してくれませんでした。その目的はこのような悪質な仕事環境を利用して、従業員に自発的に退職させることです。この方法を使わなければ、正常に解雇する場合は、N+1の補償をしなければなりません」

 退職後、張さんは自分の社会保険が勤務開始から、1年後に納付したことを発見しました。また、一部の業績、残業手当、有給休暇が計算されていないことを発見し、数名の同僚とともに地元の労働仲裁部門に仲裁を申し立てました。

 なぜ2ヶ月後にこの事実を暴露することを選んだのかについて、張さんは「実は事実を暴露する動画は早くに完成していました。年末には多くの企業がリストラし始めたので、このタイミングで暴露することにしました。自分の目的は、より多くの労働者がこのような罠を避けることができるようにすることです」と述べました。
張さんのケースでは、会社が職場環境を悪くし、自発的な退職を促しています。一方、休暇を利用して退職させる会社もあります。

 中国のある請負会社は、1月15日から12月31日までの順次休暇制度を実施するという通知を下しました。通知には、「毎月2600元(約5.4万円)の基本給を支給しますが、社会保険は自己負担する必要があります」と書かれています。

 注意深く考えなければ、これは大変いいことで、完全な有給休暇のように思えるかもしれません。しかし実際には、これは完全な罠で、実際には解雇を休暇に見せかけたのです。この方法は、従業員を解雇する際に支払う補償金を最低限に抑えることができます。なぜなら中国の解雇補償制度は通常N+1の形式で、Nは前年の平均給与を基準に計算されるからです。表面上は休暇を与え、基本給を支給しているように見えますが、実際には平均給与を下げるための策略です。特にこの手法は、会社で長く働いている従業員に最も大きな打撃を与えます。

 新入社員の場合、会社での勤務期間が短いため、直接解雇しても支払うべき補償金はそれほど多くありません。しかし、会社で長く働いている従業員の場合、解雇すると高額の補償金を支払う必要があります。しかし、上述のように強制的な休暇を与え、最低賃金を支払う方法を使えば、多くの従業員は生活の重圧のために自発的に退職することを選びます。また、耐え忍んで退職しない場合でも、次の年に平均給与が低下したため、会社が強制的に解雇しても支払うべき補償金は少なくなります。

 一部のネットユーザーによると、このようなやり方は建築業界でよく見られます。中国の不動産業界が近年、問題が続々と現れ、多くの会社が財政危機に直面しているため、このような方法で、低コストで多くの従業員を解雇しました。

 以上の2つの方法に加えて、他のパターンもまとめられています。例えば、給与を下げる、年末ボーナスを支給しない、従業員福利を削減して従業員を退職に追い込むなどです。また、職務を変更したり、労働時間や労働環境を変えたりして、受け入れられない従業員に退職を選ばせることもあります。さらに、労働強度を増やし、高いノルマを設定することもあります。一部の企業では、従業員が達成不可能な高いノルマを設定し、多くの従業員が毎月基本給しか受け取ることができなくなります。そうすると、従業員は生活の圧力によりすぐに自発的に退職することになります。

 現在、「倒産、失業、解雇」に関する話題は中国のSNSで多くの注目を集めています。仕事が見つからない、あるいは解雇された人々は、必死に仕事を探しながらも、まだ仕事がある人々を羨ましく思っています。一方、現在仕事がある人々は、いつ解雇通知が来るか心配しながら、解雇補償を減らすための企業の罠に気をつけなければなりません。

 一部の専門家は現在のこの不安な社会的雰囲気が、社会の安定を大きく脅かす可能性があるとし、時宜を得た改善がなければ、大きな社会的動揺が起こる可能性があると分析しました。

(翻訳・吉原木子)