中国の習近平総書記は近年、軍を徹底的に再編成し、より標準化され、より現代的な軍隊を作り上げようとしています。しかし、これは中国軍の本質と矛盾しています。中国軍は一般的な国家や国民を守る軍隊ではなく、共産党を守る軍であり、いわゆる「党軍」です。

 中国共産党軍(以下、中共軍)は共産党の全ての特徴を引き継いでおり、避けられない軍内の腐敗、形式主義、相互不信、思想統制、指揮システムの効率の低下などが含まれます。これらの特徴は軍の改革によって変わることはありません。大紀元はいくつかの退役軍人にインタビューを行い、彼らが見た中共軍の内情について語ってもらいました。

 中共は軍に対して極度の不信感を抱いています。中共軍の現状について、軍で服役したことのある李さんは大紀元に対し、「中共軍は戦闘力がないだけではなく、訓練資金が不十分で、極度に腐敗している」と述べました。

 李さんによると、中共軍はもともと党のために働く政党軍で、軍人の質も低いとのことです。多くは農村出身で、本当に能力のある人は軍人になることはありません。軍人になるのは単に食料を得るため、キャリアを積むためです。

 中共軍は国家や国民の軍隊ではないため、中共は自然と不安を感じ、軍隊の下級兵士から将校までを信用せず、厳重に警戒しています。

 李さんによると、中共は決して自分たちが軍を掌握しているとは考えておらず、独裁政権であり、うまくいかなければ命を落とす恐れがあると知っているため、武器の管理を厳しくしています。「アメリカの女性兵士は銃を携えて歩いていますが、中国では弾薬を渡すことはありません。なぜなら、あなたが従順かどうか分からないからです。私が軍隊にいたとき、銃と弾薬は分けられていました。銃には弾薬が入っておらず、弾薬は別の人が持っていました。なぜなら、彼らは部隊内の反乱を恐れていたからです。中共は世間を知らない農村出身の兵士を求めています。思考力が弱ければ弱いほど良いのです。兵士の思考力が強くなれば、いつか命令を聞かなくなる可能性があります」 

 中共は軍隊の思想をコントロールするために、下級将校や兵士の情報も厳しく制限しています。中共軍は独自のネットワークを使用しており、外部のネットに接続することは不可能です。また、部隊専用の番号を使用し、外部に電話をかけることもできますが、外部に電話をかける際には、基本的にすべて記録されています。

 李さんは、このような制度は習近平が権力を握った時に始まったもので、「10年ではないにしても、8年はあるでしょう。その数年間で軍の改革が行われ、軍規が多く変更されました」と述べました。

根治不可能な腐敗

 中共軍は数十年間戦闘に参加していないため、より高い軍事予算はより多くの腐敗をもたらしました。腐敗は軍内で拡大しています。中共公式も「軍の第一の敵は腐敗です」と認めています。中国国営通信社である新華社2015年の報道によると、軍隊での入党や人事変動には明確な価格があり、かつてはある軍区の司令官が中共中央政治局元委員である徐才厚に2000万元(約4億円)の賄賂を贈ったこともあったといいます。

 既に軍隊から退役して白さんは大紀元に対して、「軍の腐敗は普遍的です。誰もが彼らの腐敗を知っています」と述べました。「2等兵から1等兵、1等兵から上等兵、上等兵から伍長はそれぞれいくらか、軍学校卒業後に政治工作員になるためにはさらにいくらか、すべて明確に価格がつけられています。女性が軍隊に入るにもお金がかかります。約20万元(約405万円)です。それに軍学校に入るための費用を加えると、合計でほぼ30万元(約607万円)になります。特に親しい関係でない限り、お金を払わなければなりません」

 退役した元軍人の蔡さんは、「軍の腐敗は非常に深刻で、部隊自体もその管理を行えていません。軍事法廷は名目上のものに過ぎません。上との関係が良ければ、何も問題は起きないという状況です」と、大紀元に語りました。

 蔡さんは、「ある団長が連隊の施設建設に使われる3000万元(約6.08億円)の資金を、1千万元(約2.02億円)だけを使い、残りの2千万元(約4.05億円)を自分のポケットに入れました。しかし、この団長は何の罰も受けず、師団に異動しました。彼の義理の父が将軍だったため、何の罰をも受けることなく、済まされました」と暴露しました。

指揮システムの効率が低下

 近年、中国当局は軍改革を深化させ、師団・団級の建制を廃止し、多兵科協同作戦の合成旅団を編成し、指揮システムを簡素化しました。しかし、党は軍に対して絶対的な支配を持ち、基層の軍官により大きな指揮権を与えることができず、指揮システムの効率は依然として低いままです。

 李さんは、中共の指揮システムは効率が低く、戦術が時代に遅れているとし、「2、3年に一度の合同演習は形式的なもので、上に見せるだけで、装甲車の余った燃料まで売られるほど腐敗しています」と述べました。

 「ブルームバーグ」6日の報道によると、中共ロケット軍の戦略核ミサイルの燃料貯蔵タンクに、燃料ではなく水が貯蔵されていたとのことです。また、中国北西地域にある中共の戦略核ミサイル格納庫において、効果的な発射を可能とするようにはふたが機能しないことが分かりました。

 米国に亡命した中国海軍司令部の元参謀(中佐)である姚誠氏は、中共軍は形式的には米軍を模倣していますが、本質的にはソ連軍のやり方を続けていると大紀元に語りました。「司令官は軍事を、政治委員は政治を担当し、政治委員は人を、司令官は武器を管理しています。それは無秩序なものです。習近平は軍隊を理解しておらず、米軍のように見せかけたいと思っていますが、実際にはソ連軍のやり方を続けています。西側諸国のようにはなり得ず、体系が異なります」

中共が意外に崩壊するかも

 中共軍は党の命令に従いますが、兵士たちも人間であり、全ての人が党に対して真の忠誠を持っているわけではありません。

 李さんは、「私が知る限り、天安門事件で弾圧に参加した兵士の中には、後に部隊を離れる際、自ら受けた賞をすべて取り出し、破棄しました。彼はそれを望んでいませんでした。当時、兵士たちが学生を射殺していた時、彼らも混乱していました。今、これらの人々は年を取り始め、彼らの子供たちも大学に通っています。この出来事を振り返った時、どのような感情を抱くでしょうか?生身の人間ですから、共産党の歴史をわかると、(軍隊が)突然反乱を起こす可能性もあります」と述べました。

(翻訳・吉原木子)