(Pixhere, CC0)

 皆さん、自分の青春は大草原を疾走する馬のように情熱的であるべきだと、考えたことはありますか?青春は、草原を走る馬のように情熱にあふれるべきですよね!
 大草原と言えば、モンゴルの大草原を真っ先に思い浮かべる方が多くいらっしゃるでしょう。あの人気ドラマで見た風景がいまだに記憶に新しいです。そして、モンゴルと言えば、モンゴルの初代皇帝「チンギス・カン」の話は避けられません。では、チンギス・カンがモンゴルにどのような文化を築き、その文化がどのような音楽史詩を生み出したか、ご存知ですか?
 モンゴルの文化というと、モンゴル人の強くて勇敢な民俗のように豪放で勇猛な遊牧文化を連想します。そしてモンゴル音楽といえば、雄大なモンゴル民謡、モンゴル民謡の長調や短調、モンゴル独特の喉歌「ホーミー」、モンゴルの楽器「馬頭琴(ばとうきん)」や「四胡(四弦胡琴)」などが挙げられます。
 モンゴル民族は北東アジアの主要な民族の一つです。モンゴル国を除くと、主に中国の内モンゴル自治区、新疆とその近隣の省、そしてロシアの一部に集中しています。現在、世界にはモンゴル民族の人口が約1,000万人であると推定されており、その半数以上が中国に住んでいます。したがって、前述のモンゴル文化やモンゴル音楽は「狭義」なもので、中国文化や中国音楽の一部である中国のモンゴル人の文化や音楽を指します。
 「モンゴル民謡」も主に「中国のモンゴル族の民謡」を指します。このうち「長調」は内モンゴルの草原地帯で流行しているモンゴルの歌を指します。「短調」は、内モンゴル南東部や遼寧省などの半農牧畜の地域で流行している民謡を指します。地域ごとのライフスタイルの違いにより、長調と短調の異なる特色が形成されました。
 長調は、広大で雄大な雰囲気を持ち、主に二つの楽句で構成されます。ゆったりした起伏のあるメロディー、自由なリズム、多めのビブラートと「上滑音(上昇グリッサンド)」が特徴で、「アー、ホイー」などの襯字(しんじ)がよく使われ、馬頭琴で伴奏することが多いです。短調は、メロディーが優美で叙情的で、まとまったリズムと「切分音(シンコペーション)」がよく使われて、三弦、四胡などの楽器で伴奏されます。

長調(YouTubeの動画): モンゴルの長調

 中国モンゴル民族音楽の中の独特な歌い方「ホーミー」が、2009年10月1日に世界無形文化遺産に登録されました。再び国際の音楽界から広く注目を集めただけでなく、世界各国の社会学、人類学、歴史学などの専門家や学者から高い注目を集めています。このユニークな芸術「喉歌」は、特殊な発声技術を使用しており、人の喉から高さの異なる二つの音を同時に出すことができ、つまり、一人の喉で二つの声部を同時に歌うという、珍しい多声部の歌唱法を形成します。
 「ホーミー」の発声原理は特殊です。歌者は息を止める技を使用して、口の中の空気を利用して声帯に激しく衝撃を与え、太くて深遠な基礎の低音(持続的で、時々ピッチの変化もある)を出します。この上で喉を締め、口の形や共鳴を巧みに調整し、舌先の隙間を調整し、息の勢いを利用して高い倍音を出します。口の形が平らであれば高い音、丸ければ低い音となり、透明感のあるクリアな高音で歌うと素晴らしい複音の効果が得られます。高音部のメロディーは時には口笛のように聞こえたり、時には金属音のように聞こえたり、二つの声部の間に最大6オクターブ離れることもあります。
 この喉歌の歌い方は、シベリア南部のトゥバ族、モンゴル人、アルタイやハカスなどの地域のモンゴル人による民俗音楽で使用されています。トゥバ語では「Хеломей」(英「xoomei」)と呼ばれ、「ホーミー」はモンゴル語の「Хũũмий」(英「khoomei」)の音訳です。モンゴル語での本来の意味は「喉」であり、それが拡張されて「喉歌(Throat singing)」という意味になります。研究によると、この古い歌唱法は数千年の歴史があり、世界中でも唯一無二で、2006年5月20日に中国の国の無形文化遺産に登録されました。

ホーミー(YouTubeの動画): モンゴル ホーミー

 特別な歌唱技に制限があるため、ホーミーの曲目は豊富ではありません。内容は大まかに三つに分けられます。一つ目は美しい自然の風景を歌うもので、二つ目は野生動物のかわいいイメージを表現・模倣するもの、そして三つ目は馬や草原などを讃えるものです。音楽のスタイルから見ると、ホーミーは短調の音楽が主流で、いくつかの短い長調の曲もあります。各地のホーミーには各地の特徴があり、ゴビ砂漠に住む人のホーミーはより渋く、草原の住民のホーミーはしっとりとしています。
 モンゴルの民謡には四胡と馬頭琴が伴奏されることが多く、この二つの弦楽器はモンゴルを代表する最も一般的な楽器でもあり、いずれも中国の無形文化遺産の一つです。四胡は中国の民族楽器の一種で、その四つの弦にちなんで名付けられました。13世紀からモンゴルで広まり、16世紀のモンゴルの宮廷の壁画にも四胡が見られます。四胡の琴筒は主に木製の八角形で、銅製の六角形または円形のものもあります。蛇の皮や牛革で張られ、馬の尻尾の毛で結ぶ細い竹の弓で弾きます。1960年代以降、弦楽器も大四胡、低音四胡、倍音四胡、二重管四胡などの種類もできました。実際、四胡は民謡の伴奏より、主に語り物の伴奏として使用されていますが、近年ベンセン・ウリゲルなどモンゴルの語り物の衰退に伴い、四胡も途絶える危機に瀕しています。

四胡(YouTubeの動画): モンゴル四胡

馬頭琴(モリンホール)(YouTubeの動画): 美しい草原 我が家

馬頭琴/モリンホール(内モンゴル式)(Mizu basyo at Japanese Wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 馬頭琴はモリンホール(モンゴル語: моринхуур) とも呼ばれ、楽器の頭によく彫られる馬の頭の形にちなんで名付けられ、チンギス・カンの時代にはすでに人気がありました。馬頭琴は硬木で作られており、共鳴箱は逆台形または長方形の形をしており、両面に模様のある馬革または羊皮で張られます。弦は複数の馬の尻尾を二つに束ねて作られており、その音色は他の擦弦楽器とは大きく異なり、弓が弦の外側にあるため重音を奏でたり、馬の嘶きまで再現したりすることもできます。

 四胡の弓も馬頭琴の弦も、馬の尻尾で作られています。モンゴルの民謡には馬を讃える歌が数え切れないほどあり、モンゴル音楽文化は馬を歌う音楽文化のようなものです。モンゴルの民謡では、馬の自然的特徴が人間の社会的特徴と統合され、馬が社会化され、擬人化されています。なぜなら、馬はモンゴル人にとって、戦闘、狩猟、日常生活で密接な関係を持ち、相棒であり親友であり、心の支えであり、民族の象徴でもあるからです。モンゴル文化やモンゴル音楽を理解するには、やはり「馬」から始めないといけないのかもしれませんね!

(文・周凡夫/翻訳・宴楽)