中国共産党政権(以下、中共)の不透明で独裁的な統治により、様々な力が秘密裏で中国の政治情勢を揺れ動かしていた2023年は、まもなく終わろうとしています。来る2024年に、中国の政治情勢にどのような「ブラック・スワン」が飛来するのでしょうか。専門家は4つの領域に起こりうる問題点を指摘しました。
「ブラック・スワン」理論(英語: black swan theory)とは、「ありえなくて起こりえないと思われていた(予測されていた)事件が急に生じた場合、非常に強い衝撃を与える」という理論で、このような事件が「ブラック・スワン」と呼ばれます。特に金融危機と自然災害などの「ブラック・スワン」に対する予測が増えており、これを毎年報じるメディアも少なくありません。
2024年、4つの領域にブラック・スワン
台湾国防安全研究院戦略と資源研究所所長の蘇紫雲(そ・しうん)氏は17日、中国語新聞『大紀元』の独占取材を受け、2024年に多くの領域で起こりうる中共の「ブラック・スワン」を分析しました。
一つ目は「悪化する経済問題による悪循環」。現在、習近平政権の様々な措置は、中国とアメリカなどの西側諸国とのデカップリングを加速させています。「デカップリングがない」と宣言する中共ですが、『反スパイ法(中華人民共和国反間諜法)』をはじめとする様々な仕打ちは多くの国際企業を中国から撤退させました。これは中国の失業率を高めるほか、年金問題と不動産問題も爆発の連鎖となりうるでしょう。
二つ目は「地縁衝突問題」。2023年、中共と欧米の関係の悪化が明らかになりつつあり、インド太平洋における地縁衝突が持続していました。中共政権はアメリカ・日本・韓国などの国による包囲網に取り込まれました。
蘇紫雲氏によると、中共政権はオーストラリアとの関係、経済の交流を改善しようとしていますが、これは表面上のことにすぎません。オーストラリアは「AUKUS(オーカス)」、つまり豪・米・英の3カ国の軍事・安全保障上の同盟の枠組みを根本的に固く守ろうとしています。また、中共の地政学的な拡張戦略は最終的に日本の海上生命線を脅かしかねないと強く感じる日本は、2024年、韓国と共にアメリカとの連携をさらに密にしようとするでしょう。
蘇紫雲氏によれば、中共の軍事的な拡張戦略によって、中共とフィリピンの関係において戦争が爆発する寸前になるほど悪化し続けているため、中共の南シナ海における軍事行動に対して、フィリピンは多国籍合同パトロール隊を結成し、この問題を収束させようとするでしょう。
三つ目の「ブラック・スワン」は「中共政権の内部紛争」だと蘇紫雲氏が考えています。2023年、外相の秦剛と国防相の李尚福が罷免されましたが、国防相は今でも不在の状況になっているので、習近平氏は自派閥の人を任命するか、それとも他派閥の人を任命するかという究極の選択に直面します。
蘇紫雲氏は「習近平氏が自派閥の人を積極的に任命すると考えますが、これほど長らく国防相の空席を埋めていないのは、習近平氏の自派閥の内部にも大きな問題が間違いなく起こっています」と述べました。
「秦剛氏も李尚福氏も、習近平氏が第二十回党大会で自ら任命したのです。他派閥はこの二人の就任後にスキャンダルを暴露させ、習近平氏の人を見る目を揶揄する『高級黒』となりました。これは政治権力をめぐる闘争の手段であり、今後も似たような事件が発生する可能性があります」と蘇紫雲氏は続けて述べました。
四つ目の「ブラック・スワン」は「中国における感染症の流行状況」。中共政権は新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の急速な感染拡大を極力隠ぺいしていますが、様々な情報を見ると、中国各地の病院がまだ混雑しており、医療ひっ迫の状況が続いています。この状況を「コロナ」と説明していない中共政権は、政治に透明性が欠如しており、ごまかしや情報の隠ぺい、良いニュースは報じるが悪いニュースは報じないという状況が長らく続いているので、状況によっては非常に悲惨なことが起こるでしょう。
蘇紫雲氏は「基本的に、中共政府は何もかも制御できない状態にあるので、強権による圧政しか使えません。この状況が累積していき、やがて爆発を繰り返すことになるでしょう」と述べました。
蘇紫雲氏はさらに「2024年、感染拡大がまだ続くと、先ほど話したすべての領域における問題をさらに悪化させ、連帯的に社会と政治の不穏を引き起こします。これらの様々な問題の根源はすべて、ワンマン独裁に移行した強権国家にあるのです」と述べました。
「ブラック・スワン」に全責任を持つべき習近平氏 その健康状況は?
蘇紫雲氏によると、中国における「ブラック・スワン」が起こると、その根本的な原因は習近平氏です。「習近平氏は中国の現代化を壊滅させた第一人者であり、全責任を持つべきです」と述べました。
「習近平氏の健康状況について、すでに多くの声が上がっています。2024年に習近平氏の健康状況に警報が鳴るかどうかは予測できませんが、中共の組織的な問題が習近平氏の仕事量を増やし続けています。習近平氏の無能さと誤った決断の数々が景気後退の原因で、すべての『ブラック・スワン』は習近平によるものです。情勢が収拾つかなくなると、これらの『ブラック・スワン』が習近平氏の健康状況に悪影響を及ぼすでしょう」とも述べました。
蘇紫雲氏によれば、中共が直面する様々な危機がそれぞれつながっています。外交安全保障問題での不安定さと国内景気後退の影響によって、2024年の「両会」では社会安定維持(維穏)により多くの予算を投じ、国民を監視する能力を強化していくでしょう。これにより、ネット上での言論の自由がさらに厳しくなる見込みです。また、強権国家になればなるほど、インターネットをはじめとする国外に対する脅威が増すばかりであり、浮き彫りになる脅威は中共とのデカップリングを加速していきます。
取材の最後に、蘇紫雲氏は「どれほどの『ブラック・スワン』が中国に現れても、一番大切なのは中国本土にいる民衆の覚醒です。軍事力の強さなどではなく、中共の強権によって消される脅威と恐怖を根絶やしできる自由と民主こそが、中国の復興の最も重要な根本であることを、中国の皆さんにわかってほしいです」と呼びかけました。
(翻訳・常夏)