手頃なブランドは、今や中国では完全に見捨てられ、富裕層には不人気で、貧しい人々にも嫌われるまでに成り下がっています。かつて街中にあふれていた様々な手頃なブランドのバッグは、現代の消費市場で「最大の詐欺」と呼ばれています。

 手頃なブランドバッグは、キャンバス(帆布)バッグのような軽量性と耐久性もなく、高級ハイブランドのように虚栄心を満たす機能も持っていません。中国で大人気のSNSおよび電子商取引プラットフォームである「小紅書(シャオ・ホン・シュー、RED)」などで「手頃なブランドのバッグを購入しないでください」という投稿があふれています。

 大人気なものから批評まで、手頃なブランドのバッグにいったい何が起こったのでしょうか?

見捨てられる運命に瀕する

 北京時間11月10日、手頃なブランドマイケル・コース(Michael Kors)の親会社であるカプリ(Capri)・ホールディングスは、最新の財務報告を発表しました。

 2023年9月30日までの3か月間で、カプリ・ホールディングスの売上高は前年同期比で8.6%減少し、約12.9億米ドル(約1900億円)になりました。純利益もほぼ6割減少し、その中でマイケル・コースの売上高は8.6%減少しました。中国を含むアジア太平洋地域の市場では、マイケル・コースの売上高が1.9%減少しました。カプリの時価総額も2014年の栄光の時期に比べて、200億ドル(約2.9兆円)から現在の56.3億ドル(約8200億円)に減少しました。

 マイケル・コースはすでに厳しい状況に陥っており、名声はあるものの長らく時代遅れとなっていることは明らかです。マイケル・コースの現況は、すべての手頃なブランドの縮図と言えるでしょう。

 他の手頃なブランドも同様に楽観できない業績報告を公表しています。コーチ(Coach)の親会社であるタペストリー(Tapestry)の経営業績も同様に厳しいものでした。2023年の売上高は昨年と同じ66.6億ドル(約9700億円)であり、ほぼ利益がなかったと言えます。

 高級ファッションブランドのコーチやケイト・スベードを展開する米タペストリーは、2023年8月10日、ライバルブランドのマイケル・コースの親会社カプリ・ホールディグスを85億ドル(約1兆2200億円)で買収することで同社と合意したと発表しました。

 売上不振の影響を受け、かつて人気を博したこれらの手頃なブランドは、店舗を閉鎖するか、事業規模を縮小するかのいずれかを迫られています。

 マイケル・コースは最近、北京市内の2つの店舗を閉店しました。マイケル・コースの公式サイトの情報によると、現在北京にはマイケル・コースのブティックが3店舗しか残っていません。

 コーチも最近北京市内の2店舗を閉鎖しました。北京市内のブティックはわずか8店舗しか残っていません。また、同じ会社に属するケイト・スペード(kate spade)も北京のブティックはわずか3店舗しか残っていません。

 かつては、一流のブランドイメージ、二流のデザイン、三流の価格を武器に、コストパフォーマンスを誇る手頃なブランドが、多くの都市の女性たちを魅了しました。女優やファッションブロガーたちはこぞって、これらのブランドの商品を買い求め、その人気を非常に高めました。当時、4000元(約8万円)もするコーチのキャンバスバッグを、誰かがそれを持って同僚や同級生の前を行き交うだけで、自分の経済力を示すのに十分でした。

 2012年、中国で新興の中流階級が台頭していた時期であり、「上に比べると劣るが、下に比べると優る」の彼らは、ハイラグジュアリーと低価格帯のブランドの中間に位置する手頃なブランドを狙いました。そうした数年間で、手頃なブランドの売上は急激な成長を遂げました。その中でマイケル・コースは、シャープなスタイルで手頃なブランドの中で「トップ」の存在となりました。

経済不振がもたらした、ブランド商品への影響

 手頃なブランドバッグは詐欺だと言う人もいます。多くの女性にとって、手頃なブランドバッグを持つことは他人に良い印象を与える手段と見なされています。しかし、手頃なブランドバッグの製造業者からみれば、これらの女性は利益を収穫されるターゲットになっているとも言えます。

 実際、手頃なブランドのバッグは一般の人々にも手が届く価格であり、それを持っているからといってそれほど裕福に見られることはありません。一方、ハイラグジュアリーバッグについては、本当に裕福な人であるなら、それを持つことで自分の富裕を証明する必要はありません。

 たとえば、ジャック・マー(馬雲)氏が偽物のブランドを持っていたとしても、それが偽物だと思う人はいないでしょう。なぜなら、彼が最も高価なバッグを買う余裕があることは誰もが知っているからです。

 それと対照的に、貧乏な人がお金を貯めて正規の手頃なブランドバッグを買ったとしても、それが本物だと思われないことがあります。なぜなら、その人がバッグを買うために、毎食インスタントラーメンを食べてお金を節約している可能性が高く、おそらく、その高価なバッグ以外に何も持っていないだろうと思われます。

 もし高級ハイブランドが富裕層をターゲットにしているであれば、手頃なブランドのターゲット層はもっと広いです。

 しかし、このように大規模な消費者層がなぜ突然にしてお金を使わなくなったのでしょうか?

 中国の経済の低迷を背景に、これまで何も考えずにお金を使っていた消費者も金遣いを慎重に始めています。彼らはいわゆる「面子(メンツ)や虚栄心」を捨て、インスタントラーメンを食べることで節約したお金で、単におしゃれであることをアピールできるバッグを買おうとはしなくなっています。

 現在、多くの消費者がディスカウント価格を提供する電子商取引プラットフォームに目を向けており、もはや衝動的に消費しなくなっています。面子や虚栄心のために消費するのではなく、製品の実用性と性能対価に重点を置いています。

 あるネットユーザーが言ったように「かつて手頃なブランドを購入した人たちは、今ではキャンバストートバッグを使っている」となっています。

 中国の各種業界を分析するコンサルティング会社「知萌(ちもん)」が最近公表した「2023年中国消費トレンドレポート」によると、消費者はより合理的に消費の選択を検討し、支出を慎重に計画するようになるでしょう。また、購入した商品の実際の価値と生活にもたらす変化に注目する傾向が強まっています。要するに、現在の消費者は商品の実用価値にますます重きを置いています。

 現在の若者たちは、いわゆるファッションや贅沢などが空洞的なものであり、自分自身の実際の気持ちや生活の必要性が最も重要だと自覚しています。

(翻訳・藍彧)