あるイギリス人女性がこのほど、購入した英国ブランドのジャケットから、中国の受刑者とみられる証拠が見つかりました。この出来事で、中国における強制労働や囚人奴隷労働の問題が再び注目を浴びています。

 英紙「ガーディアン」12月1日の記事によると、イングランドのダービーシャーに住む女性が「ブラックフライデー」のセール期間中に、英国ブランド「レガッタ(Regatta)」の防水ジャケットをオンラインで購入しました。11月22日に商品を受け取った際、右袖から刑務所の身分証明書のようなIDカードが隠されているのが見つかりました。IDカードには、刑務所の名前、「法務部刑務所局制作」などの文字、中国の刑務所の囚人服を身にまとって名前を手に掲げた人物の写真、身長を示す測定表が記されていました。

 この女性は、レガッタのカスタマサービスに電話で問い合わせたところ、このような事例は初めてだと説明され、その身分証明書を捨てるよう頼まれました。しかし、その後、カスタマサービスの担当者は女性にそのIDカードを返却するように要求し、元のジャケットと引き換えに新しいジャケットを提供するとともに、感謝の意を示すために、さらに1枚ジャケットを提供すると約束しました。女性はこの「好意」を断りましたが、ゴミ箱に捨てたIDカードを取り戻し、レガッタ社に返却しました。

 レガッタ社の公報担当者は、「ガーディアン」紙に対し、そのジャケットは囚人労働の禁止規定に違反していないが、ジャケットに縫い込まれた囚人のIDカードについては引き続き調査を進めると述べました。

 レガッタは倫理的取引イニシアティブ(ETI)のメンバーです。2022年から2023年にかけて、同社は70のサプライヤーを対象に調査を行ったが、そのうち中国の工場の数は不明です。2023年には、「現代奴隷制度に関する声明」を発表し、強制労働や囚人労働の使用を禁止することを約束しました。

 一方で、中国外交部(外務省)や在英国中国大使館は、この事件に関して未だに何の回答も行っていません。

 中国の貿易社で働いていた法輪功学習者の呂氏は、希望之声とのインタビューで、中国共産党支配下の中国の製造業には多くの不透明な側面があり、20〜30年前から奴隷労働による製品が存在し、当時勤めていた貿易会社では、多くの製品が刑務所の囚人によって生産されていたと述べました。

 1999年7月以降、中国共産党は法輪功を弾圧し始めてから、多くの「真・善・忍」を実践する法輪功学員を労働収容所、拘置所、刑務所に不法に収容し、強制労働に従事させています。

 2005年5月から2006年7月まで、呂氏は法輪功に関する真相資料を制作したことで警察に不法に拘束され、広東省惠州市(けいしゅうし)の古塘坳看守所に拘禁されました。彼は看守所に収容された拘禁者が、法に基づく有罪判決を受けずに強制労働に従事させられ、ヨーロッパーに輸出される靴などの奴隷労働製品を生産している様子を目撃しました。

 呂氏は「毎日10数時間働かなければならず、その定められたノルマに達しなければ、彼らは殴られることになる。刑務所はブラックボックスだ。サプライチェーンから製品の出所を特定することはできない。最終的には、惠州市のある靴の輸出工場までしかたどり着けない。しかも、その靴工場は正規の営業許可を持っている工場であり、古塘坳看守所がその工場に靴を作らせていることを見つけることはできない」と述べました。

過去にも数回中国の良心の囚人などからSOSを発信
 中国の良心の囚人などによるSOSのサインが国際社会で反響を呼んだのはこれに限らず、これまで何度も繰り返されています。

 2012年には、米オレゴン州ポートランドの女性が購入したハロウィーンの飾りの中からSOSの手紙が見つかり、その中には法輪功学習者が拷問と迫害を受けている実態が綴られていました。

 2014年には、北アイルランドの女性がイギリスのファストファッションブランド「プライマーク」で購入したズボンの中から、「SOS!私たちは中国湖北襄南刑務所の受刑者で、輸出用の服を作っている。1日15時間働かされ、食べ物は犬や豚にさえやらないもので、牛や馬以上の仕事を強いられている。国際社会に中国政府の人権なき行為を責めるよう呼びかける」と書かれたメモが見つかりました。

 2017年3月、米国アリゾナ州在住のクリステル・ウォレス氏は、数か月前に地元のウォルマートで購入したハンドバッグの中に折り畳まれたメモ紙を見つけました。手紙には中国語で次のように書かれていました。

 「広西チワン族自治区にある英山刑務所の受刑者は1日14時間も働かされている。お昼に休むことすら許されず、真夜中まで残業をしなければならない。仕事を全部こなせなかった人は殴られる。私たちの食事には塩と油がない。受刑者は毎月2000元(約4万円)の賃金をもらえるが、病気にかかる受刑者は薬が必要な場合、賃金から割り引かれる。中国で投獄されている囚人は、アメリカの家畜以下の扱いを受けている」

 ウォレス氏の義理の娘であるローラ・ウォレス氏は、Facebookにそのメモの写真を投稿しました。

 2019年12月、6歳のイギリスの少女がスーパー大手テスコで買ったクリスマスカードに「助けて」と、中国上海の青浦刑務所の受刑者によるメッセージが書き込まれていました。テスコはこれを受け、中国でのカード製造を停止させ、調査を進めました。

 2021年12月、英国の国民保健サービス(NHS)職員(24歳、女性)は、中国の囚人IDカードが縫い付けられたコートをネットで購入したと、同月22日にツイートしました。これが助けを求める声ではないかと疑っていました。同職員は、49.99ポンド(約9000円)で購入したコートの裏地に縫い付けられた中国の囚人IDカードに「湖南省岳陽刑務所」などと書かれており、「これは奴隷労働者の遭難信号かもしれない」と語りました。このコートは、安価な労働力を求めて中国に製品生産を委託している英国企業ウィスパリング・スミス・グループ有限会社の中核ブランド「ブレイブソウル」の商品です。

真実を記録した映画
 悪名高い中国の刑務所・労働教養所(強制労働施設)は、当局による全体主義体制の産物です。こうした施設では、収容された民衆が奴隷のように労働させられ、輸出製品の生産のために過酷な労働に従事させられているとされています。

 2018年9月19日NHK-BS1で初放送されドキュメンタリー映画「馬三家(マサンジア)からの手紙」は中国国内で秘密に撮影され、中国の労働教養所における人権迫害の真実を記録していました。

 2012年10月、中国の労働教養所に収容されたある良心の囚人が、苦痛に満ちた手紙を書きました。その手紙は、同所で生産したハロウィーンのデコレーションセットに隠されました。デコレーションセットは、米国オレゴン州に出荷され、オレゴン在住のジュリー・キース氏(女性)の手に渡りました。手紙を見つけた彼女は、その内容をメディアに公開し、中国の労働教養所の驚くべき実態を世界に広めるきっかけとなりました。

 手紙は、孫毅(スン・イー、男性)という法輪功学習者によって書かれたものであると判明しました。彼は命を危険にさらしながら20通の手紙を書き、デコレーションセットの箱に隠しました。これらの手紙の1通がジュリー氏の手に渡り、中国の労働教養所の秘密が明るみに出されました。

 この映画の主人公である孫毅氏が中国から脱出後、インドネシアに逃亡し、2017年10月1日に亡くなりました。

(翻訳・藍彧)