中国の不動産危機は広がりを見せ、特に各地での未完成物件の問題が積み重なり、多くの世帯が重い借金の負担を抱え、絶望の淵に立たされています。最近では、不動産危機が中国全土でさらなる抗議デモを引き起こしています。
不動産問題に起因する抗議デモが急増
アメリカのワシントンに拠点を置く非営利団体「フリーダムハウス」の報告書によると、中国では住宅問題をめぐる抗議デモが急速に広がり、頻発しています。
不動産は中国の経済全体の4分の1以上を占める産業であり、現在その業界は前例のない危機に直面しています。中国のほぼすべての不動産デベロッパー、恒大グループや碧桂園(カントリーガーデン)のような不動産大手も、負債危機に陥っており、現在、建設資材サプライヤーや建設請負業者への支払いが数ヶ月も滞納しています。一方、計画されたものの未完成プロジェクトとなり、それを購入するために積み立てた貯金をつぎ込んだ数百万世帯は、購入した住宅物件を手に入れることができないまま、膨大な住宅ローンを抱え込んでいます。
複数のメディアの報道によると、中国の不動産危機が業界の混乱をもたらし、中国国内での抗議デモを急激に増加させています。非営利団体「フリーダムハウス」傘下の「チャイナ・ディセント・モニター(China Dissent Monitor)」によると、2022年6月から2023年10月までの間に、中国全土の276の都市で、不動産問題に関連する抗議デモ活動が合計1777件発生しました。これらの抗議デモは一般的に、比較的裕福な都市、特に深セン市、西安市、鄭州市などに集中していました。
これらの抗議デモの3分の2は、プロジェクトの遅延、契約違反、詐欺疑惑、おから工事、劣悪な建築などの問題に関連しています。約3分の1の抗議デモは建設労働者によって発起され、賃金の未払いを求めるために起こされたものでした。これまで、毎月約50から70件の抗議デモが発生していましたが、2023年8月には建設労働者による抗議デモが約100件発生し、昨年同期の3倍となっています。
2022年には、一部の住宅購入者が銀行の住宅ローンの返済を拒否し始め、抗議デモを行うことで、中国当局への圧力を強め、政府が彼らの不満に応えるよう迫る動きが始まりました。
中国当局は市民の怒りを抑えられない
中国共産党政権は、常に組織的な抗議デモを防ぐために全力を挙げています。特に習近平政権の支配下では、この状況が顕著です。習近平氏は数年にわたり、国民の権利活動を制限し、ネット上の言論を制限する規制を導入してきました。
地方政府の党幹部は監視、威嚇、暴力、拘束、検閲などによってあらゆる抗議デモを抑制してきました。住宅物件に関する抗議デモでは、少なくとも4分の1の活動が中国当局によって鎮圧されました。
中国共産党は大量な鎮圧手段を有しているにもかかわらず、2022年に全国各地で発生したゼロコロナ政策に反対する抗議デモにより、当局は急遽ダイナミックゼロコロナ政策を終了せざるを得なくなりました。これは中国当局の国民への鎮圧が効果を失い始めていることを示唆しています。
ここ数十年、中国当局は不動産の急速な発展を推進することで、地方政府に歳入を生み出してきました。これにより不動産会社が過度に借入し、国民も貯金を不動産に投資するよう奨励されてきました。その結果、不動産業界の問題は社会全体のさまざまな階層にまで影響を及ぼすようになりました。
中国の不動産危機と未完成物件の問題は、今後も中国国民に対する影響をさらに悪化させるでしょう。
中国の政治体制が変わらない限り、住宅購入者と建設労働者は抗議のために街頭に立ちつづけるでしょう。中国当局は、中国社会のあらゆる階層からの怒りと、より多くの制御が難しい状況に直面しなければならないのです。
深刻化する中国の未完成物件問題
ウォール・ストリート・ジャーナル紙11月20日の記事によると、中国の不動産市場は深刻な問題に直面しており、多くの予約販売された住宅物件が完成できず、引き渡しもできず、時間の経過とともに、その数は雪だるまが転がるようにますます増えていくでしょう。
同記事は、未完成の予約販売住宅の問題がますます深刻化しており、これにより国民は不動産市場への信頼を喪失し、これが悪循環となり、直接的に新築住宅の販売数の減少につながり、より多くの不動産企業が危機に陥る可能性があると指摘しました。
中国当局は未完成住宅物件の統計データを公にすることをずっと避けてきましたが、中国の不動産企業の苦境はすでに明らかになっています。2023年6月まで、海外債務を返済できない中国の大手不動産企業5社の契約債務総額は約2660億米ドル(約38兆円)に上り、この金額から、売却されたがまだ引き渡されていない住宅の総額を計算することができます。不動産大手カントリーガーデンだけでも約830億米ドル(約12兆円)の契約債務があります。
野村証券の中国担当チーフエコノミスト、陸挺(りくてい)氏によると、中国全体で約2000万戸の未完成住宅や引き渡し遅延の予約住宅があるとされています。これらの住宅物件を完成させるには、約4400億米ドル(約66兆円)の資金が必要であると、陸挺氏は推定しています。
中国当局の救済策はほぼ効果なし
中国当局は、資金不足に苦しむ不動産企業が予約販売プロジェクトの建設を完成させるために、約480億ドル(約7兆円)に相当する専用資金を用意しました。
中国人民銀行(中央銀行)もまた、大手商業銀行が同様の目的で不動産企業に融資を提供する場合、これらの銀行に対して最大270億米ドル(約4兆円)の無利子融資を提供する方針だと表明しました。
しかし、当局が約束したこれらの資金のほとんどはまだ使用されていません。中央銀行が発表した最新の四半期報告によると、2023年9月までに商業銀行は無利子融資枠の3%しか利用していないとのことです。
アナリストによると、不動産会社が予約販売した住宅の建設を完了できるよう融資することは、国有銀行にとって政治的な優先事項となっていますが、国有銀行は依然として未完成プロジェクトへの融資リスクを評価しており、銀行自体が損失を被ることを避けるための慎重な態度をとっているとされています。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の中国担当シニアエコノミスト、ベティ・ワン氏は、不動産業界が底打ちし反発の兆候が明確でない限り、国有銀行は予約販売住宅の完成を促進することに対し、非常に慎重な姿勢をとるだろうと述べました。
(翻訳・藍彧)