中国・河南省焦作市(しょうさくし)武陟県(ぶちょくけん)の興華中学校で13日、生徒の雑踏(ざっとう)事故が発生しました。ネットユーザーが明らかにした情報によると、20人以上が負傷、4人が死亡しました。この事故は話題となり、海外からも注目を集めています。
死傷者数、民間と公式の情報の食い違い
中国公式メディ「新京報(しんけいほう)」11月14日の報道によると、13日午前10時過ぎ、河南省焦作市武陟県の興華中学校の階段で13日午前10時ごろ、試験終了後にトイレに行こうとした生徒たちが雑踏に巻き込まれました。中国ポータルサイト「搜狐(そうふ)新聞」は15日、現地政府の発表を引用し、興華中学校の1年生、2年生の男子生徒が中間テストの休み時間に、トイレに行く際、階段での混雑により転倒し、負傷したと報じました。負傷した生徒は病院に搬送され、1人が死亡、1人が重傷を負い、さらに4人が軽傷を負ったとのことです。
しかし、一部のネットユーザーは、公式の発表が事実でないとし、「我々の県では、民間が流した死傷数字と公式発表の数字に食い違いがある」と述べました。
中国の「紅星新聞」は、ネット上では20人以上が負傷し、4人が亡くなったという情報も広まっていると報じました。
ネットユーザーのコメント
この事故に対し、ネットユーザーから疑問の声が上がっています。
現地のネットユーザーは、この学校には「トイレに行く時間は2分以内、2分以内に戻れない者は罰として外に立たされる」という規則があると明かしています。
別のネットユーザーは次のように補足しています。「トイレに行く時間は2分もない。すべての授業が時間オーバーになっている。生徒はトイレに行く時間がないため、水を飲みたくても我慢して、飲まないようにしている」
「刑務所より厳しく管理している学校もある。幸運にも私は無事に卒業した。これは教育制度全体の問題だ。中国式の教育は本当に息苦しい。中学校と高校の生活は思い出したくないくらい辛かった」
「トイレに行くだけで雑踏事故が起きるなんて、信じられないことだ。子供が学校でトイレに行くことで命を落とすなんて、その子供の両親はどうやって残りの人生を過ごすのだろうか」
これまでの雑踏事故
実は、これは中国の学校で初めて発生した雑踏事故ではありません。
2017年には、河南省濮陽県(ぼくようけん)のある小学校で雑踏事故が発生し、1人の生徒が死亡し、20人が負傷しました。
2009年には、湖南省湘鄉市(しょうきょうし)の育才中学校で雑踏事故が発生し、8人の生徒が死亡し、26人が負傷しました。
この二つの雑踏事故の共通点は、学校の授業と休み時間の取り決めが不合理であることです。
河南省武陟県政府は公式な発表で、「深く反省し、教訓や過ちを学び、学校に存在するリスクや潜在的な危険を徹底的に調査し、改善することで、学生の安全を確保する」と述べました。
地元政府のこの発言に対して、ネットユーザーたちは疑念を示しました。
「安全を確保するために、あとどれだけの教訓や犠牲を払う必要があるのか?」
「子供たちに10分間の休み時間を返せ!実際には、子供たちに返してあげるべきは、休憩時間だけでなく、ゆっくりと食事をする時間、トイレにゆっくり行く時間、ゆっくりと眠る時間、そして落ち着いて成長するための時間を与えなければならない。教育の目的は、単に試験に合格できる人を育てるだけではない。効率だけを語り、成績という物差しで優劣を見分けるのは、工場としか呼べず、学校と呼ぶに値しない」
「授業と授業の間のトイレに行く時間がわずか2分間しかないという規則は理解しがたいもので、これほど厳しい規則には唖然とする」
なぜ学校が厳格な規則を定めるのか
なぜ中国の学校がこれほど厳格な規則を定めるのでしょうか?その答えは、学校がテストの成績を上げるために、生徒たちに自由に使える時間をすべて勉強に使わせようとしているからです。
生徒のテストの成績を上げるために、多くの学校が非常に厳格な規則を制定しており、これが学生たちを長期間にわたり高度な緊張状態に追い込んでいます。
例えば、全国的に進学率が非常に高い河北省の衡水中学校では、朝5時30分に起床ベルが鳴ると、生徒の寮全体が振動していると言われています。かつて同校に通っていた生徒の話によると、同校の生徒にはほぼ歩くことがなく、何かをするときは全て走っています。走って食事に行く、走って寮に戻る、走って教室に行くなどしています。朝起きてから数千人が同時に寮の中を走り回ると、もちろんその寮は振動することになるでしょう。
しかし、生徒は生き生きとした人間であり、機械ではありません。正常な考えを持つ人なら、生徒の成績を上げるためにそのような方法を採ることはないでしょう。このようなことは、共産主義国にのみ起きていることでしょう。
中国共産党は常にマルクス主義の思想を自身の理論的指針としてきたため、マルクス主義の思想は中国の国民に大きな影響力を持っています。エンゲルスは自作の『自然の弁証法』で、「生命はタンパク質の存在様式である」と述べました。この言説は人間の魂の存在を根本から否定しています。
この見解は中国の伝統文化とは背馳(はいち)しています。古代から近代に至るまで、中国人は数千年もの間、人間の上には神仏が存在し、人は死んだ後、善行を行った者は天国に昇り、悪行を行った者は地獄に落ちると信じてきました。また、人は輪廻転生を経て、今世で善行を積むと来世で幸福な報いがあり、悪事を犯すと来世で苦しむと考えています。しかし、中国共産党の洗脳宣伝により、多くの中国人はこれらの伝統文化を信じなくなり、中国共産党の生命観を受け入れるようになりました。
興華中学校で発生した生徒の雑踏事故による死傷者について、現地政府や学校の関係者は責任を取る姿勢を見せていないようです。これらの中国共産党の官僚にとっては、生徒の死は単なる死であり、生徒の死に対して嘆きも悲しみもなく、責任逃れのために死者数を意図的に隠した可能性さえあるでしょう。そのため、中国の国民が期待するような官僚たちの事態への反省はまったく起こる可能性がないでしょう。
長い間、中国共産党のテスト主義教育は、保護者、生徒、教育専門家などから多くの非難を受けています。
テスト主義教育
英国のBBCは以前の報道で、中国の小中学校を取材した日本のジャーナリスト山口氏の意見を引用し、中国共産党のテスト主義教育が中国の子供を功利的にし、他の生徒の学習を手助けすることを嫌がり、その結果、子供たちが利己的になる可能性があると述べました。
英国レスター大学のエマ・スミス教授は、「中国の学生は国際的な学力調査(PISA)で世界をリードしているが、だからといってテスト主導の教育が優れていると考えるのは間違いだ。英国もかつて中国のようなテスト主導の教育が行われてきたが、このような教育は多くの子供にとって不公平であり、創造力も阻害される可能性がある」と述べました。
(翻訳・藍彧)