捜索救難活動を行うために用いられるヘリコプター(pxhere パブリック・ドメイン)

 山林で行方不明事件が発生したら、行方不明者の救出を急がなければ、予期せぬ事態に巻き込まれる可能性があります。しかし、今日ご紹介する事件は、危険も被害もなかっただけでなく、結末が予想外すぎて、泣くに泣けず、笑うに笑えない出来事でした。

 トルコ人男性のべイハン・ムトルさんは建設作業員です。2021年9月27日、彼は友人たちとバーでお酒を飲み終えた後、深夜にもかかわらず、一行は近くの山林をぶらついていました。しかし、ベイハンさんの友人たちが下山して戻ろうとした時、ベイハンさんがいないことに気がつきました。ベイハンさんの友人たちはしばらく付近を探し始めましたが、人影さえ見当たりませんでした。

 事態が予想以上に深刻であることに気づき、友人たちはすぐに下山して、ベイハンさんの妻に事情を伝えました。ベイハンさんの妻が警察に通報した後、地元の捜索救助隊員が集められました。翌日早朝、行方不明となった山林の入口に集結し、一行はベイハンさんの行方を捜すために入山する準備を整えました。捜索救助隊にはプロの捜索隊員だけでなく、山林に詳しい地元住民も加わりました。ベイハンさんの早期発見に望みをかけ、捜索救助活動はただちに開始されました。

 捜索救助の過程で、酒気を帯びた一人の男性が捜索救助隊の横を通りかかりました。捜索救助隊が行方不明者を捜索していると聞くと、男性は捜索救助活動に協力したいと熱意を示し、すぐに捜索救助隊に加わりました。

 捜索救助活動が丸一日経過し、全員が深夜まで依然として懸命に山林、川の奥深くまでベイハンさんの名前を呼びながら捜索を続けましたが、ずっと彼らの呼びかけに対する反応はありませんでした。時間は刻一刻と過ぎており、いつベイハンさんの命が絶たれてしまうか分かりません。

 翌日の早朝になって、途中で捜索活動に加わった男性が突然立ち止まり、近くにいた捜索救助隊員に「ところで、私たちはどんな人を探しているんですかね?」と尋ねました。その後、彼は捜索隊員が手に持っていた写真を念入りに見つめては、捜索隊員が行方不明者の名前や特徴を丁寧に説明するのを聞いて、突然ハッと悟りました。

 なんと、大勢の人が動員され、昼夜分かたず必死に探していたのは、彼本人だったのです!

 男性はすぐに、皆が探している行方不明者が自分であることを打ち明けました。そのとたん、全員がその場で呆然としてしまいました。ベイハンさんの妻から提供された写真を取り出して照合したところ、目の前の酒気を帯びていた男性が、捜索救助隊が苦労して見つけ出そうとしていたベイハンさんであることが確認されました。

 この結末に、捜索救助隊は腹立たしいやら呆れるやらで、やりきれない気持ちになりました。そこにいた誰もが、なぜ彼が山林で自分を探しに行く人々について行ったのかが理解できませんでした。捜索途中、救助隊はベイハンさんの名前を呼びかけていましたが、彼は翌日まで自分がここにいたことを皆に伝えていませんでした。とはいえ、ベイハンさん自身も一日中苦労して人捜しを続けていました。そうしているうちに徐々に酔いから醒めて、やっと、皆が探している人物が自分であることをはっきり認識できたのです。

 実は、事件当日、ベイハンさんは友人たちと山林に入ってから、午前2時ごろに友人たちと別れて、バーのすぐ近くにある友人の別荘へ行き、そのまま寝ていました。ベイハンさんがいないと気づいた友人の一人が憲兵隊に通報し、憲兵隊がベイハンさんの携帯に電話を掛けようとしましたが、ベイハンさんが携帯電話を変えていたため、連絡が取れませんでした。その後、ベイハンさんは早朝5時に目覚めて、外に出てみると、道路に集まっていた捜索救助隊を見て、何か事故でも起きたかと思い込んでいたということです。

 すべてが大きな誤解だったのでした。警察が事件の経緯を記録した後、捜索救助隊は馬鹿げた捜索救助活動を終了し、“山林失踪事件”も幕を閉じました。

文・聞山/翻訳・夜香木)