中国中央銀行、物価上昇を促す発言
中国人民銀行(中央銀行)のウェブサイトで発表された情報によると、2023年9月25日に北京で開催された中国中央銀行の金融政策委員会第3四半期会議は、国内外の経済・金融情勢について分析し、外部環境がますます複雑で厳しいことを指摘しました。
会議では、国際経済、貿易、投資が減速し、インフレ率は高水準にある中、先進国の金利も引き続き高水準であることが示唆されました。また、注目すべきは、「物価を合理的な水準に維持されるよう、低い物価水準に戻すことを促進する」とも言及していました。
これまでの中国中央銀行のスタンスは、物価を安定させ、国民の基本的な生活を保護することでしたが、現在は物価上昇を促進するためにあらゆる手段を講じることを公然と述べています。一部の学者は、これが今後の物価上昇の兆候であると考えています。
貴州大学の元教師である彭さんは、ラジオ・フリー・アジアとのインタビューで、中央銀行の金融政策会議が提起した物価を低水準に戻すことを促進するという提案は、はっきりとした兆候であると述べました。「つまり、価格が上昇する意向があるという兆候です。彼ら(当局)は今、世論を先導し、価格の上昇はすでに静かに始まっています」
北京の住民、郭利さんは、人々の収入が増加していない状況で、物価を引き上げることは経済を刺激するのに役立たず、むしろ住民の消費意欲に影響を及ぼすと述べました。「収入が減少しているので、これはますます多くの家庭にとって困難な状況をもたらすでしょう。一般的に、給与が上がらなければ、物価も上がらないでしょう。しかし、今は悪いニュースばかり耳にします」
河南省開封市の住民である張さんは、ガソリン価格の上昇に対処するため、自分の車を売却し、比較的燃費の良いオートバイに乗り換えたと述べました。「特に今年の下半期は、物価が急激に上昇しています。車に給油するためのガソリン価格があまりにも高騰しすぎており、負担が非常に大きいのです。また、現在、ビジネスも困難で、私の家の近くにある多くの店舗が経営困難で閉店してしまいました」
中国国家発展改革委員会(NDRC)の物価監視センターの予測によると、短期的には、パレスチナによるイスラエルへの侵攻情勢の進展が原油価格に影響を与える主な要因となるでしょう。現時点では、この衝突は中東地域の石油生産と輸送に実質的な影響を与えていないものの、状況の進展には不確実性が依然として存在し、地政学的リスクが急増し、状況が悪化する可能性も排除できません。そのため、原油価格への影響を継続的に注目する必要があります。
専門家、中央予算から400兆円を家庭収入に割り当てる提案
2023年10月9日、中国のテンセント(騰訊網)の報道によると、上海の複旦大学経済学院の院長であり、中国経済研究センターの主任である張軍教授は、今年の1月から8月までの経済データをもとに、経済成長は依然として弱いと指摘し、不動産市場や株式市場も低迷していると述べました。そして、2008年と比較すると、現在は刺激できるものも限られており、投資、不動産、貿易などあらゆる分野で成長潜力が著しく減少しているとも述べました。
張軍教授は、経済が現在、下降圧力にある重要な原因の1つは過度な投資であり、政府支援の投資を含む多くの投資が合理的な収益をもたらしていないと指摘しました。浪費的な投資の例は数多く存在し、この問題は未だ解決されていないと述べました。
一部の計算結果によると、中国の地方政府の債務は90兆元(1800兆円)に達し、2015年以降の債務置換(スワップ)や金利引き下げにもかかわらず、既存の債務の平均金利率は4%から5%になる見込みです。言い換えれば、地方政府は毎年少なくとも3.6兆元(74兆円)から4.5兆元(92兆円)の金利を支払わなければなりません。一般的に知られているように、中国の地方政府の債務返済の主要な収入源は土地の売却や賃貸料です。2021年に史上最高水準の8.7兆元(178兆円)に達しましたが、その後急激に減少し、2022年には6.7兆元(137兆円)まで激減し、2023年はさらなる減少が予想されています。
張軍教授は、現在の状況が持続する場合、将来的には地方政府の土地収入が利息を支払うのに不足する可能性があり、これは非常に大きな財政上の問題であると指摘しました。また、これは未だ解決されていない非常に重要な問題であり、すなわち地方政府の経済への過度な介入に関連しています。
中国経済は厳しい課題に直面しています。これまで、中国の不動産市場は経済の急速な成長と都市化に伴い、国民経済の支柱産業となり、2022年には不動産業の付加価値がGDPの6.1%を占め、固定資産投資の割合も20%以上を占めるようになりました。しかし、この経済成長を牽引していたこの重要な原動力が今では低迷しています。今年の不動産市場も持続的に低迷し、経済成長に大きな圧力をもたらし、多くの中国国民の財産も不動産に集中していると張軍教授が指摘しました。
張軍教授は、この問題は時間をかけて解決する必要があると考えており、総需要の観点から見て、中央政府が投資予算を削減し、国民の実質的な収入と福祉向上のための予算を確保する必要があると主張しています。「たとえば、現在約70兆元(1400兆円)の投資予算があると仮定すれば、それを4分の1に削減して、例えば20兆元(400兆円)の予算を確保し、その予算を家庭の実質収入の増加や福祉プロジェクトに充てることができるでしょう」
全体的な所得水準から見ると、中国の労働所得は現在非常に低く、約6億人の平均月収入がまだ3000元(6万円)未満で、月平均の可処分所得は1000元(2万円)未満です。
張軍教授は、これが中国の国力と見合わないと指摘し、中国の国力が数千億元から数兆元ものお金をあらゆる場面でイメージアッププロジェクト(工事)、つまり、幹部がイメージアップのために過度に派手な建物などを建造することに投じるのに対して、なぜこれらの資金を中低所得層の支出負担に充てないのかと、中央政府に疑問を呈しました。
張軍教授は、例えば、育児コストを国家によって負担すること、義務教育を9年から12年に拡充すること、高齢者の養老費用を所得税控除から大幅に増すこと、あるいは高齢者の口座や家族口座に直接現金で振り込むことなどの提案をしています。
しかし、テンセントのこの記事の下のコメント欄には、次のような読者のコメントがありました。「この専門家の指摘や意見はすべて理にかなっていますが、既得権益を持つ者(中国共産党の幹部たち)は、国民と国家の利益を考えないでしょう。彼らは道理を誰よりもよく理解していますが、自分たちの利益を損なうことは決してしないでしょう」
(翻訳・藍彧)