中国で9月に出版された歴史書「崇禎:勤政的亡国君(勤勉な亡国の王)」が突然、回収処分となりました。この歴史書が急に回収されたのは、その内容が現在の中国の最高統治者を隠喩する可能性があると広く考えられています。
出版取次業者は16日、「印刷に問題がある」として、インターネット、書店、民間の販売業者に棚を下ろして、返品手続きを行うよう求める通知を発表しました。
「崇禎:勤政的亡国君」は上海文匯出版社から出版され、先月発売されたばかりの歴史書です。この本の著者は、中国で有名な明史の専門家である陳梧桐で、彼は今年の5月31日に北京で亡くなりました。この本は陳梧桐の没後、初の再版作品です。
ネット上で出回っているこの本の推薦文には、万歳山(煤山)で縊死した崇禎皇帝は、酒色に溺れず、贅沢三昧を極めることなく、政に勤しみ、倹約を心がけていましたが、ついには「亡国の王」になりました。この本の著者は、財政、政治闘争、軍事、人事などの観点から、崇禅皇帝がどのように誤った決断を繰り返し、亡国への道に進んでいったかを読者に理解させようとしていると書かれています。
推薦文はまた、崇禎皇帝は「中興の志」を持っていましたが、その志は大きくても実力に欠け、国を治める能力が不足しており、剛腹で独善的、猜疑心が強く、優柔不断、彼は非常に虚栄心が強く、自分の面子や尊厳だけを気にし、責任感が欠如し、歴史的な悲劇を招いた大きな決断の誤りや誤った措置が相次ぎ、最終的に明王朝の滅亡を招いたと述べられています。
崇禎皇帝は明朝の最後の皇帝でした。彼は質素に生活し、国政に励む努力をしましたが、最終的には亡国の運命から逃れることはできませんでした。西暦1644年、李自成が北京を攻略し、崇禎皇帝は北京の万歳山(煤山)の一本の木に自らを縊りました。これにより、明朝の276年にわたる統治が終わりました。
外界の分析によれば、この本の内容が現代の中国の最高統治者を隠喩する可能性があるため、当局によって緊急に回収されたとされています。
中国政法大学国際法の頼建平修士は17日、希望之声に対して、「この本は中国共産党および習近平の恐怖を引き起こした。この本は明の崇禎皇帝のことを書いているが、現在の中国の皇帝である習近平の性格、行動、そして最終的な結末、つまり滅亡の運命と非常に類似していると広く考えられている。したがって、これは今の最高統治者を隠喩するものと思われる。この本が回収処分となったのは、明らかに中国共産党指導層の命令だ」と述べました。
時事評論家の章天亮氏は、「この本が突然回収された原因は、習近平は自分を崇禎と比較し、これは不吉な前兆だと思うからだ」と述べました。
章氏は自分のYoutubeチャンネル「天亮時分」で、「この本が非常に売れているにもかかわらず、本当に印刷の問題があるならば、読者からの苦情がもう殺到していたはずだ。また、これだけの速さで撤去しているのは、明らかに上層部の命令だ。その理由は、この本の紹介に記載されている内容が、人々に習近平を連想させやすいからだ」と述べました。
章氏はまた、「習近平が崇禎皇帝と非常に似ており、とくに二人とも猜疑心が強い人間だ。これは、習近平が秦剛(しん・ごう)元中国共産党外交部長や李尚福(り・しょうふく)国防部長への対応や、李強総理を先に抜擢してから、後に抑え込んだなど一連の動きからも見て取れる。特に、習近平がロケット軍を制圧していることで、軍人のクーデターに直面する可能性があり、習近平はますます誰も信じられなくなった」と述べました。
実際、習近平が政権や党の崩壊に対する、危機感を露わにしたのは、今回が初めてではありません。今年の7月1日(中国共産党創立記念日)前に、党の機関紙である「求是」が、習近平が中央党校での幹部養成講座で行った演説を掲載し、習近平は「中国では東欧激変、ソビエト連邦の崩壊のような悲劇が起こる可能性がある」と警告しました。
明朝の崩壊の直接の原因は、経済の崩壊、特に銀の危機であるとされています。当時、大量の銀がヨーロッパから明朝に流入し、物価の上昇とインフレを招き、その後、商人が利益を得なくなりました。さらにヨーロッパで三十年戦争が勃発し、銀の需要が激増したことから、無数の銀が中国から流出しました。大量のホットマネーが流出した結果、明朝は体系的な経済危機が発生し、最終的に王朝の崩壊につながりました。
一方、現在の中国では、外資が急速に撤退しているほか、中国の中産階級も大量に移民しています。ブルームバーグの報道によると、多くの中国人が海外旅行を利用して、資産を移転しているといいます。一部の学者によると、観光データに基づいて、2023年には1500億ドル(約22.47兆円)の資金が中国から流出する可能性があると推定されています。
また、新型コロナウイルス収束後の中国は、財政が枯渇し、国民の不満が高まり、官僚の不作為などの状況は、明朝末期と似ています。明朝末期には大規模な疫病も発生し、鼠疫により10万人の軍隊が戦闘能力を失い、大量の人々が死亡しました。海外の専門家はこのほど、中国に新たな感染症の脅威が依然として存在する可能性があると指摘しました。
オーストラリア在住の学者である李元華氏は、「崇禎皇帝は『中興の志』を持っており、非常に早く起きて公文を処理したのに、どうして亡国の運命を逃れられないのか?実際、これは明朝の運命がすでに尽きたからだ。国家全体が腐敗している場合、いかに努力しようとも、それを救いたいと思っても、滅びる運命から逃れられないのだ。今の習近平は同じ状況にある。中国共産党政権はすでに崩壊しつつあり、習近平は自分の運命をその政権に結び付けたいと思うなら、結局、一緒に滅びることになる」と述べました。
(翻訳・吉原木子)