中国の最大手不動産開発デベロッパー、碧桂園(カントリーガーデン)は10月10日、オフショア債務に関して、期限内または猶予期間内に全額を履行できない可能性があることを公表しました。
この債務危機の影響は、信託など他の分野にも波及し、カントリーガーデンを含む不動産関連企業が相次いで経営破綻し、金融システムと中国経済に影響を及ぼし始めています。
カントリーガーデンのオフショア債務
カントリーガーデンの株価は10日、下落トレンドを続け、10%以上下落し、年初から時価総額は約7割近く減少しました。そして、ますます多くの中国の不動産デベロッパーが債務不履行(デフォルト)の危機に直面し、中国で最大の債務再編の一環としての布石を打つ可能性があります。
カントリーガーデンは109.6億ドル(約1.6兆円)オフショア債と424億元(8700億円)相当の外貨建てローンを抱えています。債務不履行が発生すれば、債務再編が必要になり、同社及びその資産は債権者によって清算される可能性があります。
同社は、10日に香港取引所に提出した文書で、「不払いにより、当グループの関連債権者が関連債務の支払い加速を要求したり、執行措置を求めたりする可能性がある」と述べました。また、資産の売却に関して現在大きな不透明感に直面しており、「グループの流動性ポジションは短中期的に非常に逼迫した状況が続く見通し」と説明しました。
カントリーガーデンは、資本構成と流動性の状況を調査し、包括的な解決策を策定するために、フーリハン・ローキー、中国国際金融(CICC)、法律事務所シドレー・オースティンをアドバイザーに起用したと発表しました。
モーニングスターのアナリスト、ジェフ・チャン氏は「カントリーガーデンが債務不履行に陥るかどうかはオフショア債務再編の結果次第で、今後の2週間が極めて重要になる」と指摘し、「住宅購入者や金融機関は様子見を続ける可能性があり、同社の流動性が大幅に改善する見込みはない」と述べました。
10月9日には、2024年と2026年満期のドル建て債券に対する6680万ドル(約100億円)の利払い期日がありましたが、30日間の猶予期間が設けられています。
同社は利払いの実施については明言していないが、特定の債券に関しては4.7億香港ドル(約90億円)の元本支払いを行わなかったと述べました。詳細は明らかにしていません。
カントリーガーデンは、来週に重大な試練に直面する見通しです。9月に期日が到来した1500万ドル(約22億円)の利払いを来週17日(30日の猶予期間の終了日)までに行わなければ、そのオフショア債務は債務不履行と見なされる可能性があります。
また、同社は10日、未払い元本147億元(約3000億円)に相当するオンショア債券9本について、保有者から期間延長の承認を得たと発表しました。
クレディサイトのアジア太平洋地域調査部門共同責任者、サンドラ・チャウ氏は「カントリーガーデンの以前のビジネスモデルは持続不可能で、彼らは現在、債務負担を軽減し、事業規模を適切なものにしようとしている」と指摘、再編では債務の満期返済延長、債券の表面利率引き下げ、資産売却の加速が検討されるだろうと述べました。
一方、カントリーガーデンは、「物件の引き渡しを確保するために総力を挙げ、これは当グループの最も重要な企業責任であり、不動産市場を維持するための重要な柱でもある」と述べました。
カントリーガーデンは2023年1月から9月までの不動産販売成約額が1549.8億元(約3.2兆円)で、前年同期比で約43.9%減少し、2021年比では65.4%急減しました。
中国の不動産業界の衰退は、2021年に始まり、政府が債務による不動産開発ブームに規制を加えたことがその背後にあります。経済成長の鈍化、住宅および資本市場の信頼の喪失など、これらの要因は不動産デベロッパーの資金流動性をさらに低下させました。
2021年の資金流動性危機以来、中国の住宅販売の40%を占める企業(主に民間の不動産デベロッパー)が債務不履行に陥り、多くの住宅が販売されながら未完成の状態となっています。
中国の恒大グループなど、多くのデベロッパーが清算申し立てに直面しています。これまでに、2社が海外の裁判所から清算を命じられています。
主に不動産事業を行う中国を拠点とする投資会社であるカイサ・グループ・ホールディングス(佳兆業集団控股有限公司)は、強制清算に追い込まれた場合、債権者が資金の5%未満しか回収できない可能性があると述べました。
カントリーガーデンの崩壊がもたらす影響
カントリーガーデンは8月、メディアに対し、2021年以来、中国の不動産業界が持続的な不振に見舞われ、多くの不利な要因が重なり、住宅販売が続落し、オープンマーケットでの資金調達が難しくなり、前例のない困難な時期に直面していることを認めました。
さらに、同社は最近の売上高の低下、再融資環境の悪化、そしてさまざまな種類の資金規制の影響と相まって、会社の可動資金が減少し続けているため、流動性圧力が段階的に発生していることも認めています。
実際、近年の景気低迷の影響を受け、中国の人々の「頭金前払い」能力は劇的に低下しており、カントリーガーデンも現金が減り始め、残高は昨年(2022年)同期比40%にとどまっています。これがカントリーガーデンの債務不履行の主要の原因であり、中国の不動産デベロッパーにとって共通のジレンマでもあります。
クレディサイトのアナリスト、ニコラス・チェン氏は、「カントリーガーデン社は債務の元本全額の返済ではなく、利息支払いに焦点を当てて問題を解決しようとしており、これは、資金流動性が非常に緊張していることを示唆しているかもしれない」、「同社の規模を考えると、このような事態はこの業界全体にマイナスの波及効果をもたらし、特に現在も経営中の他の民間デベロッパーに対する投資者の心理に影響を及ぼすだろう」と述べました。
国際的な格付け機関大手、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは以前、カントリーガーデンの評価を「B1」に格下げし、資金調達ルートが限られており、今後12〜18ヶ月の間に多額の債務が満期を迎えることを強調しました。
カントリーガーデンの債務不履行が引き起こす連鎖反応は、恒大グループの債務危機に勝るとも劣らないものでしょう。2022年末までに、カントリーガーデンの総負債額は1.4兆元(約29兆円)に達しています。
国際投資銀行のゴールドマン・サックスは、中国の都市部の住宅需要は、2017年の1800万戸から今年は1100万戸に減少すると述べました。過去10年間、中国の不動産デベロッパーは年平均約1300万戸の住宅を建設してきました。
ゴールドマン・サックスは、未開発の土地や未完成のプロジェクトを含む中国の不動産デベロッパーの在庫価値が約9兆ドル(約1340兆円)で、今年の予想される成約販売額に基づいて計算すると、約4.8年分の販売が可能であると指摘しました。この在庫を処理するための圧力は非常に大きいとされています。
中国の公式メディア「新華社」の報道によると、2023年9月、中国の主要な100都市での新築分譲住宅の成約面積は前月比では10%以上増加したものの、前年同期比では約20%減少しました。
一部の経済アナリストは、中国で最も負債の多い15社の不動産企業の総負債額が13兆元(約265兆円)である一方、2022年の中国の最もGDP(国内総生産)が高い広東省のGDPは12.9兆元(約263兆円)に過ぎないと指摘しました。
(翻訳・藍彧)