中国の不動産大手である恒大集団の創業者である許家印が9月27日、警察に連行されたことは、中国の銀行業界に影響を及ぼし始めています。最近、中国の滄州銀行と盛景銀行で預金者が一斉に預金を引き出しに殺到する「取り付け騒ぎ」が発生しました。このことは、中国中央銀行を驚かせたと言われています。世間はこのことの今後の発展、及び金融危機を引き起こす可能性があるかどうかに注目しています。

 ネット上で出回っている情報によると、河北省滄州市の滄州銀行は8日から、「取り付け騒ぎ」が発生しました。滄州銀行の異なる支店で預金者がお金を引き出すために、長蛇の列を作っていることが分かりました。

 滄州銀行は8日に発表した公式声明で、滄州銀行は現在、健全で安定して発展しており、ネット上で出回っているネガティブな情報は事実とは大きく異なるとし、滄州銀行は預金保険に加入しており、消費者の資金の安全を保証できると強調しました。

 しかし、公式声明は取り付け騒ぎを抑制することができませんでした。9日の夜まで、多くの人々は依然として、各支店でお金を引き出すために、長蛇の列を作っています。ネット上では、一部の支店での行列が道路まで続いている動画が出回っています。

 地元のネットユーザーによると、滄州市塩山県の滄州銀行が非常に混雑しており、早朝から行列に並ぶ人がいます。銀行側は引き出しを制限するため、番号札を発行しました。番号札を貰えない人々はお金を引き出せないといいます。

 滄州銀行はまた、ネット振替を一時的に停止しました。情報筋によると、中国中央銀行は急いで資金を援助した後、やっと再開しました。

 今回の取り付け騒ぎを引き起こした原因は、最近、恒大が銀行から借りている資金の明細がネット上で暴露されました。その内容によると、恒大は滄州銀行に34億元(約693億円)の借金をしているとのことです。

 一方、滄州銀行は恒大に3.46億元(約70億円)しか貸しておらず、担保物件もあると主張しています。

 しかし、滄州銀行の声明は、預金者の不安を解消できませんでした。現時点で、滄州銀行の取り付け騒ぎが収束するかどうかは、まだ確定していません。

 また、「恒大のATM」と称される盛京銀行もほぼ同じ時期で、大量のネット振替が発生しました。情報筋によると、9日から、盛京銀行はすでにネット振替を厳格に制限し始めているといいます。

 多くの学者と専門家は以前から、中国の不動産業界は活火山のような存在であると警告しており、不動産業界の崩壊がドミノ効果を引き起こし、最初に影響を受けるのは銀行業界であると指摘しました。

 米国在住の経済学者である李恒青氏は大紀元とのインタビューで、中国の銀行システムが脆弱であり、取り付け騒ぎが発生すれば致命的であるとし、もし全ての人が一斉に預金を引き出しに行けば、それはもう終わりであると述べました。

 李恒青氏はまた、「中国当局が今取っている方法は期待の安定であり、すなわち信頼の安定である。公式は、『私たちは大きな事業を行うために力を集中しており、政府が管理するので信頼できます』と宣伝し続けているが、実際にはこれは人々を欺いているだけである。信頼を維持するために人々の耳や目を塞いでいる」と述べました。

 中国の不動産危機が銀行業界の危機を引き起こすと、それは金融危機にエスカレートする可能性があります。それは中国経済の衰退という単純なものではなく、中国共産党政権および世界の他の国にも影響を与えます。

 李恒青氏は、「通常の経済危機は特定の人々にしか関わっていないが、金融危機はすべての人々の財産に関わるため、誰もが逃れることはできる。そのため、金融危機は常に政治的変化を引き起こすことがよくある。例えば、1948年から1949年の南京国民政府の金融危機、1997年のアジア金融危機で韓国、タイ、インドネシア政府を動揺させた。中国当局はお金で政権の安全を守ることができると考えてきたが、金融危機が爆発すると、お金は問題を解決するのには足りなくなり、政権を動揺させる可能性が非常に高い」と述べました。

 崩壊の警鐘が鳴らされました

 恒大の債権者は、恒大が海外の債務再編計画を中止したことが混乱と崩壊を引き起こす可能性があり、苦境に陥っている他の不動産会社にも壊滅的な影響を及ぼすかもしれないと述べました。

 恒大は先月末、2年近くにわたる投資家と合意した債務再編協議を断念しました。その理由は、子会社の恒大地産が調査の対象となっており、当局が新たな債券の発行を禁止されたことにあります。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、一部の投資家たちは、これは恒大が制御不能な崩壊になる可能性が高いことを意味していると分析したといいます。

 恒大が崩壊すると、影響を受けるのは債権者だけではありません。2021年末に債務不履行が発生した時点で、恒大は中国で最も多くの債務を抱える不動産会社になり、何千ものサプライヤーに支払いを滞らせており、大勢の未完成物件を残しています。

 中国の複数のメディアの報道によると、恒大が残した未完成物件は162万棟に達し、600万人が関わっているといいます。

 2023年6月までに、恒大の債務は2.44兆元(約491兆円)を超え、これにはサプライヤーへの債務、未完成のプロジェクト、債券、ローンなどが含まれています。

 恒大の債務危機は中国の経済にも圧力をかけており、今年に入って不動産業界の低迷、輸出の減少により、中国の経済は苦境に立たされています。

 一部の投資家は、恒大が債務再編を進められない場合、他の中国の不動産会社にも影響を及ぼす可能性があり、当局が最終的に債務再編を承認しない場合、他の不動産開発会社の海外債務再編も達成できなくなるだろうと分析しています。

 S&Pグローバル・レーティングのデータによると、中国の不動産会社は昨年、約300億ドル(約4.46兆円)の債務不履行に陥っており、そのほとんどが投資家と協議中となっているといいます。恒大の投資家らは、恒大が投資家との協議が完了できない場合、他の不動産会社の債務再編も一層厳しくなるだろうと分析しました。

(翻訳・吉原木子)