中国の不動産大手会社である恒大グループの債務危機が2年にわたって続いた後、恒大グループの創業者である許家印は、違法行為の疑いで連行されました。中国メディアはこのほど、全国各地の恒大の未完成物件の分布状況を公開し、注目を集めています。

 恒大がこの前に発表した財務報告によると、昨年末までに、恒大が販売したマンションの数は累計で1241件に達したといいます。複数のメディアの報道によると、恒大は数百の都市で未完成物件を抱えていることが分かりました。恒大の財務報告をもとに試算すると、現在、恒大は993のプロジェクトを抱えており、総面積は1.62億平方メートルに達したといいます。各物件の平均面積が100平方メートルであると仮定すると、およそ162万の物件が未完成のままであることを意味します。

 これは162万の家庭、約500万から600万の人々が鍵の引き渡しを待ち続けていることを意味します。

 さらに、中国各地の恒大の未完成物件の数が公表されました。これには寧夏回族自治区8軒、上海8軒、甘粛省14軒、北京15軒、海南省15軒、雲南省18軒、天津市19軒、吉林省21軒、新疆25軒、陝西省25軒、内モンゴル27軒、貴州省28軒、黒竜江省29軒、山西省35軒、江西省37軒、福建省41軒、広西チワン族自治区45軒、河南省49軒、安徽省50軒が含まれます。

 このほか、未完成物件が50軒以上を超える省は浙江省が58軒、湖北省が59軒、遼寧省が60軒、湖南省が64軒、山東省が67軒、河北省が70軒、重慶が74軒、四川省が85軒となっています。100軒を超える省は、江蘇省115軒、広東省157軒となっています。複数のメディアの試算によると、恒大が残した未完成物件の数は162万戸に達し、600万人と関わっているといいます。

 ロイター通信は、巨額の債務、悪化し続けるキャッシュフロー、そして多くの未完成物件のため、恒大が生存できなくなった可能性が非常に高いと報じています。

 注目すべきは、恒大は、未完成物件を購入した人々に対して、ローンの返済を遅らせることができると主張しているものの、この政策は最大で2024年末までしか適用されないことです。また、恒大のいくつかの有名なプロジェクトも長年中断しています。例えば、合肥恒大センター、恒大済南国際金融センター、河南新郷御湖家園などです。これらのプロジェクトは今のところ、完成する兆候が見られない状態です。

 その中で、「恒大海花島築群」は2021年に「中国の最も醜い建築物」にも選出されました。

 世界最大の人工島といわれる恒大海花島は、3つの独立した島から成り、埋め立て面積は約8平方キロメートルで、海の中で咲く3つの花の形をした計画です。恒大海花島の総投資額は1600億元に達し、国際会議展示センター、博物館群、童話の世界、ウォーターパーク、海洋の世界、国際ショッピングセンター、モダンホテル群、五国温泉リゾート、華夏映画基地など28の異なるプロジェクトが計画されています。

 しかし昨年、恒大海花島で39の物件が違法建築とされたことが明らかになりました。このプロジェクトは一時、全面停止、分譲許可証の回収、適切な処分案の提出を求めていました。

 恒大が165億元(約3370億円)を投じて、建設を計画していた合肥恒大センターは、プロジェクトの敷地面積が13万平方メートル、総建設面積が115万平方メートルで、その中には518メートルの超高層メインタワーが含まれています。このプロジェクトは2013年に土地を取得し、2014年に着工し、2017年から現在まで工事が停止しており、このプロジェクトは合肥における最大の未完成物件として知られています。投資額が250億元(約5106億円)に達した恒大済南国際金融センタープロジェクトは、2012年3月に土地を取得し、12月に定礎しました。その後、恒大は多くの住宅用地を取得しましたが、超高層プロジェクトはなかなか着工されませんでした。2018年に工事が再開されましたが、一時的に工事が停止しました。

 このほか、河南新郷の恒大御湖天下プロジェクトも不動産業界最も大きい未完成物件と呼ばれています。恒大は当時、このプロジェクトのために、数千万元をかけて煌びやかな大門を建設しました。しかし現在、大門の周りは雑草だらけの荒れ地になりました。

 それだけではありません。債務危機によって、恒大はサッカー場を守ることができなくなりました。恒大は、広州に10万人の観客を収容できる国際的なプロサッカースタジアムを建設するために、120億元(約2451億円)の投資を計画していました。2020年4月、恒大は68.13億元(約1392億円)で広州番禺区にあるスポーツ施設および関連する産業地区を取得し、総面積は約50万平方メートルでした。

 しかし、2021年下半期に恒大は債務危機に陥り、多くのプロジェクトが停止し、不動産の販売も困難な状況になっていました。最終的に、恒大は2022年8月3日に売却先と契約解除を締結し、サッカー場を建設する用地の土地使用権を返却しました。

 鳳凰網傘下の「暴風眼」の報道によると、恒大の土地備蓄プロジェクトは2020年と2021年上半期にそれぞれ817個と778個であり、1年で40個の土地備蓄プロジェクトが減少し、土地備蓄の縮小速度は販売の速度をはるかに上回り、恒大が多くのプロジェクトから撤退または中止していることを示唆しています。

 不完全な統計によれば、2021年以降、恒大が撤退したプロジェクトは約62件で、その中には自主的に退出したプロジェクトと受動的に回収されたプロジェクトが含まれています。

 恒大帝国はかつて「7つの主要産業」と金融部門で構成されていました。7つの主要産業には、恒大不動産、恒大新エネルギー自動車、恒大不動産管理、恒騰ネットワーク、房車宝、恒大文旅、恒大氷泉です。金融には恒大生命保険、盛京銀行、恒大金融サービスが含まれます。恒大はわずか20年の間に急速に成長し、その背後に政府の支援があると広く認識されています。許家印も「私と恒大のすべては党が与えてくれた」と公言していました。

 公開された資料によると、恒大は1996年に設立され、2016年にはフォーチュン500に入り、2020年には152位となりました。しかし、恒大は2021年に、債務危機に陥りました。2023年7月までに、恒大は2021年および2022年の財務報告書を連続して発表し、2022年の売上高は2301億元(約4.7兆円)で、純損失は1258億(約2.6兆円)元でした。これに2021年の純損失6862億元(約14兆円)が加わり、2年間で総損失は8120億元(約16.6兆円)に達しました。2022年末時点で、総負債額は24兆元(約491兆円)に達しました。

(翻訳・吉原木子)