中国のモバイルバッテリーシェアリング市場では、問題が多発し、不正な課金は当たり前、個人情報の強制抜き取りも常態化しています。最近、上海政府がこの現象の存在を公に認め、話題となっています。
モバイルバッテリーシェアリングとは、ホテル、娯楽施設、公共交通機関、コンビニなどの公共の場などにポータブル充電器を設置、QRコードをスキャンして充電ステーション(バッテリースタンド)からモバイルバッテリーのロックを解除、30分から1時間の使用に対して料金を支払います。
個人情報の強制収集
中国のモバイルバッテリーシェアリング市場において、消費者の個人情報が過度に収集され、不正な目的に使用されるなどの現象が広く存在していると、「澎湃(ほうはい)新聞」が8月30日の記事で報じました。上海市インターネット情報弁公室は最近、これらの違法行為に対する是正措置を発表しました。
中国のモバイルバッテリーシェアリング企業は、ユーザーのネットワークセキュリティに全く配慮せず、個人情報を過度に収集しています。
また、これらのデバイスを使用したユーザーは、アカウントを解除できないなどの問題を、普遍的に経験していると報告されています。市場に出回っている多くのブランド、例えば「電飽飽(Dianbaobao)」、「C站充電(C Zhan)」、「火電宝(Huodianbao)」などは、消費者が支払う前に、携帯電話番号、WeChatのニックネーム、プロフィール画像などの個人情報を強制的に要求しています。
市場をリードする正規の充電器企業にもこれらの問題が存在し、消費者のプライバシーと利便性に影響を及ぼしています。
最近、上海の充電スポット(POI)を密かに訪れた記者が調査した結果、一部のアカウントはポータブル充電器の利用解約ができないことや、位置情報を頻繁に要求されること、アカウントからログアウトできないこと、ターゲット指向の情報提供を停止できないことなどの問題が存在することが判明しました。
具体的には、「美団(Meituan)」を使用した際には、位置情報を4回要求され、電話番号を1回要求されたユーザーがいました。
「捜電(SouDian)」を使用した際には、充電器の返却後も、位置情報を頻繁に取得される問題が生じました。
「小電」はプライバシーポリシーの中で、「ユーザーの地理的位置情報、閲覧記録、取引習慣、電話番号を収集する」と明記しています。
アイリサーチ((i-research、艾瑞市場谘詢股份有限公司)が発表した「2023年中国のモバイルバッテリーシェアリング産業調査報告書」では、2022年には、怪獣充電(Energy Monster)、小電(Xiaodian)、美団、街電(JieDian)、搜電などの企業が市場シェアの96%以上を占め、その中で「最も使用頻度が高いブランド」として、調査対象者の61.3%が怪獣充電を選択し、次いで「美団」と「街電」の順で普及率が高く、いずれも50%前後であると言及されています。しかし、これらの大手企業のポータブル充電器には、「自動アカウント解除」の機能が備わっていないという事実があります。
強制課金
モバイルバッテリーシェアリング企業による不必要な個人情報の強制収集という侵害行為は、これまで当局に制約されていませんでした。その結果、消費者は依然として課金を強いられています。
中国の黒猫ビッグデータセンターの統計による、2022年には「モバイルバッテリーシェアリング」に関する苦情が5万件以上寄せられました。2023年7月31日までのデータによると、「モバイルバッテリーシェアリング」に関する苦情はすでに2.8万件以上に上り、平均して1日あたり100件以上の苦情が寄せられています。これらの苦情は、怪獣充電、街電など、複数のブランドに関連しています。
ポータブル充電器を返却後の問題に対する苦情が多数寄せられています。南京市在住の呂さんは、2022年2月に南京紙「現代快報」の取材で、「小電」のポータブル充電器を借り、30分ほど使用した後に返却したにもかかわらず、3日後になっても「未返却」という理由で自動的に料金が引かれたと述べました。
消費者が時間通りに充電器を返却したにもかかわらず、課金が行われる問題は、「小電」にとっては今に始まったことではありません。2021年には、小電は杭州市長ホットラインで「消費者がポータブル充電器を返却した後も99元(約2000円)課金された」として苦情件数1位に上り、その後も同様の理由での苦情が後を絶ちませんでした。
黒猫ビッグデータセンターの苦情情報によると、怪獣充電、街電、搜電などの大手企業に対する苦情が多数寄せられ、ポータブル充電器を返却した後も充電料金が請求される問題が報告されています。特に小電に対する苦情が最も多いことが指摘されています。
美団、怪獣充電、小電などのカスタマーサービスは、ポータブル充電器には課金を自動停止する機能がないと説明し、充電器を返却しない限り、課金が継続的に請求されると述べました。
記者の調査によると、ポータブル充電器の強制的な課金問題は2020年から顕著になり、2020年12月18日に「工人日報」に掲載された記事にも類似の事例が報告されていました。
他の隠れた落とし穴
中国の著名なテクノロジー専門メディアであるOFweekが2023年3月15日に発表した記事によると、モバイルバッテリーシェアリング企業がユーザーから利益を得るためにさまざまな隠れた落とし穴を用意していることが明らかになりました。
その手法の一つは、効率の低い製品を使用することです。企業はユーザーが携帯電話をフル充電するまでの時間を延ばすために、効率の低い製品を使用します。記事は、杭州市消費者権益保護委員会のテスト結果を引用し、来電、街電、搜電、怪物充電、小電などのブランドが、30分の充電で20%しかバッテリーを充電できず、1時間の充電でも50%を超えることはできなかったと報じています。
もう一つの手法は、レンタル製品の返却障壁を設けることです。企業はユーザーが製品を借りたままの状態にし、返却できないようにするため障壁を設けます。具体的な操作は、ユーザーがポータブル充電器を借りた後、チャージスポットのスタッフがすぐに補充品で充電ステーション(バッテリースタンド)を空きのないように埋め尽くし、ユーザーがモバイルバッテリーを返却できないようにします。一定的な期間を経過すると、一部のユーザーが99元(約2000円)で価値のない低効率の充電器製品を購入せざるを得なくなります。
新金融と新経済の詳細レポートに焦点を当てる「開甲財經」の報道によると、Eコマース(電子商取引)プラットフォームでは25.5元(約500円)で販売されている小型充電器は、店頭では99元という高価で消費者に販売されており、これは大きな利益をもたらすビジネスです。
米国在住の時事評論家である李燕銘氏は9月3日、大紀元とのインタビューで、中国当局は長期間にわたりハイテク企業に個人情報の強制収集を許容しており、それが人権を侵害しているかどうかを全く考慮していないと述べ、上海市インターネット情報弁公室による今回のいわゆる是正措置は、消費者にとって焦点となるモバイルバッテリーシェアリングの乱れた課金などの現象に触れておらず、その背後に利益関係が存在していると指摘しました。
(翻訳・藍彧)