最近、習近平総書記の「側近」が次々と姿を消していることは外界の注目を集めている。ラーム・エマニュエル駐日米国大使はこのほど、X(ツイッター)に、「習政権の閣僚陣は、今やアガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』の登場人物のようになっている。まず、外相だった秦剛が行方不明となり、ロケット軍の司令官がそれに続く。そして今、国防部部長の李尚福が2週間公の場に姿を見せていない」と投稿した。
秦剛前中国共産党(以下、中共)外交部長は7月25日、突然解任され、王毅前外相が外交部長に任命された。秦剛は6月25日に北京で最後に公の場に姿を現した後、今でも行方不明となっている。秦剛は、中共政権で最も若い外交部長であり、最も若い副国級の幹部でもあった。彼は習近平が自ら抜擢した「側近」と見なされており、外交部礼賓司司長を務めていた時期には、何度も習近平の外国訪問に同行していた。習近平が2015年にベラルーシを国事訪問した際、手配に関与したベラルーシの外交官であるパヴェル・スルンキン(Pavel Slunkin)は最近、「秦剛が深夜2時ごろに電話をかけてきて、習近平が訪れる予定の博物館に直ちに行くように要求し、習近平が階段を上るときに演奏される音楽まで詳細を再確認した」と暴露した。
中国の作家である袁紅氷氏は大紀元とのインタビューで、「習近平は当時、自分への忠誠心は具体的な行動で示さなければならないと考えていた。秦剛は外交部礼賓司司長を務めている間、自分に対する忠誠心を実際に示していると感じた」と述べた。
秦剛の突然の失踪について、様々な噂が飛び交っている。一説によると、秦剛が鳳凰衛視の記者である傅曉田と婚外恋愛関係を持ち、子供ができた不祥事が政敵によって暴露され、解任せざるを得なかったという。また、秦剛の昇進スピードに嫉妬した人々が、彼に関する多くのネガティブな情報を収集し、習近平が秦剛を解任せざるを得ない状況に追い込んだとする説もある。
秦剛に続いて李玉超元ロケット軍司令官も姿を消した。香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が最初に、李玉超が軍の反腐敗機関に連行され、調査を受けたと報じた。その後、中国中央軍事委員会は7月31日に王厚斌を上将に昇進させ、ロケット軍司令官に任命した。これにより、数か月間行方不明だった元ロケット軍司令官の李玉超が連行されたことが間接的に確認された。報道によると、李玉超と共に連行されたのは、現職および元職の高級軍人である劉光斌と張振中も含まれているという。
一部の分析家は、これは中国の軍事指導層における過去10年間で最も予想外の再編成であると指摘した。李玉超は2022年1月にロケット軍司令官に昇進し、わずか1年半で解任された。ロケット軍は、中国人民解放軍の三軍(陸・海・空軍)から独立した独立軍種である。かつては第二砲兵部隊と呼ばれていたが、習近平は2015年に行われた軍隊改革でこれをロケット軍に改編した。ロケット軍はまた、習近平自身が築いた部隊と見なされている。
次に、姿を消したのは中国国防部長の李尚福である。ベトナム政府は先月末、ベトナムと中国の第8回国境防衛友好交流活動を9月7日から8日にかけて、ラオカイ省と中国の雲南省で開催すると発表した。李尚福はファン・バン・ザンベトナム国防相と共に出席する予定であったが、中国当局はこのイベントの数日前、ベトナム政府に対し、李尚福が「健康状態」のためにイベントに出席できないとして延期を希望していた。
中国の前外交部長秦剛が突然解任され、ロケット軍指導層が急速に交代した背景で、李尚福の「失踪」が外界の注目を集めている。ニューヨーク・タイムズは、2人の米国政府関係者の情報を引用し、李尚福が現在、連行され、調査を受けていると報じた。
李尚福が行方不明になった時期は非常に敏感であり、なぜなら、もう1人の国務委員である秦剛がまだ姿を現していないからである。これは、習近平が直接任命した2人の副国級幹部が約10週間もの間、理由もなく失踪していることを示唆している。
現在、習近平の政治的地位は揺るがすことができないように見え、中共の指導層、軍の最高層、そして安全保障機関の中も、彼の忠実な支持者ばかりである。しかし、それにもかかわらず、これらの高官が突然姿を消し、失脚したことは、中共党内の闘争の残酷さや、習近平が周りの人々に対して猜疑と不信を抱いていることを示している。
(翻訳・吉原木子)