大分市成人式記念集会(Wikimedia Commons/陳清悅 CC BY-SA 4.0)
古代の中国では、まもなく成年になる男子のために、「冠礼」(かんれい)という成人儀礼が行われていた。冠礼は、若者に冠をつけて成年になる神聖な儀式として、中国の古代社会においてとても重要な役割を果たしていた。なぜなら加冠(かかん)された若者は、成人として新たな権利と義務を持つようになるからだ。
まず、古代においては、若い男子は加冠された後、初めて結婚する資格が得られる。次に、中国の古代社会、とりわけ儒家においては、君子に対して高い徳行が求められるため、冠礼は成人の品徳の向上に非常に重要な意義を持っていた。そして、嫡子は冠礼を行った後、はじめて家族の継承や宗廟(そうびょう)の主祭を司る権利が与えられる。さらに、天子は加冠された後に、初めて親政を行うことができ、士人もまた同じように加冠され、成年になって初めて官職を受けることができるようになるのである。
しかし、現在の中国ではこの成人儀礼はすでに喪失されている。一方、中国から伝わってきた冠礼という風習は随分前に、日本の貴族たちに受け入れられ、かつ日本の特色を持った「元服」(げんぷく)の儀式として受け継がれてきたのである。
今の日本における成人式は実は戦後に始まったものであり、これも「元服」という伝統行事に由来している。日本政府は成人式を1月の第2月曜日に行うことを定め、満20歳になった若い男女はこの日に、伝統的な和服に身を包み、地元の公民館や神社に赴き、各地方自治体が主催する行事に参加する。今の成人式は、若者が自立した社会人としての責任感を自覚させる役割を果たしながらも、時代の流れに応じてその形式や内容を若者の考えや嗜好に合わせるように変化している。
古代の冠礼は、個人的というよりも、むしろ宗族(そうぞく:同一祖先の父系血縁の集団)の大事な儀式であった。現代も同様に、成人式は社会レベルにおいて共同で祝典を行っている。このように昔も今も、成人儀礼を行うことは、若者が社会と家庭に対する責任感を高めさせることができるだけでなく、伝統文化や伝統的な価値観の継承においても積極的な意義を持つのである。
(文・一心)