北京市全域は7月20日から連日にわたり大雨が降り続き、台風5号から変化した温帯低気圧などの影響で最高レベルの「赤色警報」が発表され、600年の歴史を誇る北京の紫禁城も浸水被害を免れませんでした。
北京の集中豪雨
北京は今年最大とされる大雨が降り、12年ぶりに最高レベルの「赤色警報」が発表されるなど警戒が続いています。この大雨は、台風5号から変化した温帯低気圧などの影響で、29日に最高レベルの「赤色警報」が発表される結果となりました。
中国メディアによりますと、今回の雨量は「ことし一番」で、8月1日午前5時時点までの雨量が多い所で700ミリを超えています。この豪雨により、北京市郊外では複数箇所で鉄砲水が発生し、停電や断水など市民生活にも影響が出ています。雨の影響で5万人以上が避難しており、これまでに少なくとも2人が死亡しましたが、被害の全容はまだ分かっていません。
北京紫禁城の排水システムも効果なし浸水
600年の歴史を誇る北京の紫禁城は、清王朝が268年にわたり、10人の皇帝によって統治されたにもかかわらず、これまで一度も浸水していなかったとされています。しかし、現代の中国の「全盛期」にあたる時期になると、この宮殿が浸水する事態が発生してしまいました。
北京紫禁城博物院のWeChat公式アカウントの紹介で、太和殿、中和殿、保和殿などの主要な建物は、無数の雨の中で、その精巧な排水システムのおかげで、何の損傷も受けていないと主張しています。
紫禁城は明朝の永楽年間(1403-1424年)に建設されました。すべての建物の庭には地面に石畳が敷きつめられているとともに、排水システムも緻密に整備されています。紫禁城の地面は、北京市全体の北西部が高く東南部が低いという地形に対応するように敷かれているため、全体的に北が高く南が低く、中間が高く両側が低いという形になっています。さらに緩やかな傾斜があり、水をゆっくりと排出することができます。
前三殿を例にみてみると、太和殿・中和殿・保和殿は3層の土台の上にあり、その周囲の欄干の底部には雨水を排出する穴が設けられています。欄干の柱の下には精巧な石作りの竜頭が1142個あり、その口の中に掘られた穴も排水口となっています。
また暗渠も地下で縦横に交差し、四方八方に通じている。雨水はその中に入ると、支流から主流に集まり、さらに内金水河に流れ出ます。内金水河は北西から東南方向に流れ、故宮の半分以上を経由したあと、故宮の南東の角から流れ出し、外側の堀に入ります。堀は北京の都市排水システムとつながっており、故宮の雨水がそこで都市排水システムに取り込まれます。
紫禁城ではどれだけ大雨が降っても、内部に雨水がたまる現象は一度も起こったことがなかったと史料が記していましたが、今回の暴雨で浸水してしまいました。
専門家の指摘とネットユーザーの意見
中国の多くの地域では豪雨による被害が拡大し、市民の生活に影響を及ぼすことから、地下排水システムに対する疑問が提起されています。
ニューヨーク・タイムズ紙以前の報道によると、北京の地下インフラに詳しい都市排水の専門家が次のように語りました。北京などの大都市の排水システムは建設時に基準が低く設定されており、主な要因は資金的な圧力よりも、地下空間が電力、電信、地下鉄などの公共施設に割り当てられていることに起因しているとの指摘があります。それらの施設はGDPに直接関係しているため、優先的に設置されてしまっているのです。専門家はまた、「北京市が数年前、市政排水の業務を北京排水集団に委託し、排水の責任と権限が明確でない。都市化の進展と共に、排水施設の計画と建設には多くの困難が伴っており、様々なコストもますます高騰している」と指摘しました。
現在の北京排水集団(北京城市排水集団有限責任公司)は、北京市の約10か所の汚水処理場の運営管理に加え、他省の汚水処理場の建設及び運営管理、農村汚水に係る事業、河川の水質改善及び緑化事業を行っています。
北京工業大学建築工程学院の教授で、給排水の専門家である周玉文氏によると、1949年の新政権初期には、都市排水は主に旧ソ連の設計概念と技術理論を使っており、当時の需要を満たせればよいとして、費用節約が主眼とされた経緯がありました。当時は小規模な排水パイプが建設され、浸水頻度が年に2、3回の頻度で設計されていたため、「年に2、3回の浸水は当たり前だった」との指摘もあります。
周氏はまた、中国の発展において常に「地上を重視、地下を軽視」という傾向があり、排水などの地下施設の発展が比較的遅れていると指摘しました。
これに対して、多くのネットユーザーからは、現代の建築された排水システムに対して批判するする声が上がっています。
「現代の科学技術が発達していると言う人が多いが、結局何も役に立たないじゃん」
「現代の中国人は技術を持っているとしても、良心と責任感が欠如しているせいで、たった一度の大雨で多くの地域が水没する」
(翻訳・藍彧)