2022年末に中国当局は「ゼロ・コロナ」政策を一転した後、世界観光業界は多くの中国人が海外旅行を熱望すると予想されたが、実際の状況はそうではなかった。業界では、中国人の収入の減少、および中国と西洋諸国の関係の悪化が原因とみている。
シフトリサーチ(Skift Research)が先週発表した「2023年旅行状況」報告書によると、中国国内の航空業界は回復しているものの、国際便の輸送力は新型コロナ発生前の半分以下で、約500万席が減少している。
当初、「ゼロ・コロナ」政策が一転した後、アジア太平洋地域の観光産業が主な受益者となると予想されていたが、ロイター通信によると、今年5月にタイ、シンガポール、インドネシア、フィリピンを訪れた中国人観光客の数は2019年の同時期と比較して少なくとも60%減少していることがわかった。
また、日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2023年6月に来日した中国人観光客は約21万人で、2019年6月の88万人と比較して、約76.3%減少しているという。
中国経済の不振によって、中国人は財布の紐を締め、旅行などの娯楽の消費に一層慎重になっているほか、中国の若者の記録的な高い失業率も若者の旅行への意欲を低下させている。
これに加えて、中国と欧米諸国との関係悪化も観光業界にダメージを与えている。モーニングコンサルティング(Morning Consult)の上級アナリスト、スコット・モスコウィッツ(Scott Moskowitz)氏は、「中東や北アフリカへのフライトはかなり回復していますが、北米、特にアメリカとカナダへのフライトの回復は非常に限られている。これは中国と西洋諸国の関係の悪化によるものだ」と述べた。
(翻訳・吉原木子)