中国の上場企業の株主が最近、持ち株削減(株式売却)を密に行っています。6月1日までに、約1100社の上場企業が株式売却計画を発表しています。中国のますます厳しい経済環境から、多くの富裕層が中国の経済見通しに悲観的な見方をしており、株式を現金化して資金を引き揚げることを選択していると、アナリストが指摘しています。さらに、その背後には政治的要因の影響も考えられると述べました。

 5月31日の夜、CIGシャンハイ(上海剣橋科技股份有限公司)、蘇州晶方科技半導体科技股份有限公司、東莞鼎通精密技術有限公司、広州海格通信集団股份有限公司、広州航新航空科技股份有限公司、深セン飛榮達科技股份有限公司など約20社の企業が株式売却計画を発表しました。

 

大化け株CIGシャンハイの株式売却

 中国のメディア「第一財経」は6月2日、その中で最も注目されているのは「大化け株(おおばけかぶ)」であるCIGシャンハイの株主が行った持ち株削減計画であると報じました。

 CIGシャンハイは、コンピュータの計算能力が大幅に向上するとともにコスト削減の技術を主要な事業としています。この技術は通信、コンピュータ、医療、工業など、さまざまな分野に応用することができます。

 CIGシャンハイの株主であるCambridge Industries Company Limited(以下、CIGケイマン)は、今回の持ち株削減で総株式の1%を超えない範囲で株式を売却し、約18.26億元(約360億円)を現金化しました。

 なお、今回のCIGケイマンの持ち株削減は、前回の持ち株削減からわずか2か月しか経っていません。2022年11月11日から2023年3月24日までの期間に、CIGケイマンはCIGシャンハイの株式を221.68万株売却し、約4500万元(約8.8億円)を現金化しました。

 最近、CIGシャンハイの複数の持ち主が持ち株削減計画を公表しています。例えば、同社の株主である康令科技が5月30日夜に発表したところによれば、同社は保有株式を257万株以下、すなわち総株式の0.96%を超えない範囲で削減する意向を明らかにしました。

 さらに、その数日前には、CIGシャンハイの株主であるHKホールディングも保有する株式比率が0.97%の範囲にあるすべての株式を売却する計画を発表しました。

 CIGシャンハイは、新技術の開発に取り込んでおり、そのため投資家の間で人気を集めています。2023年には株価が累計で500%以上上昇し、時価総額も約29億元(約567億円)から192億元(約3760億円)へと急速に上昇しました。

 「第一財経」の記事によると、業界別に見ると、TMT(テクノロジー、メディア、通信)、バイオ医薬品、専門機器製造業の企業が、保有株削減の発表に集中していると報じられています。また、半導体産業チェーンに属する一部の上場企業の株主も保有株の削減や売却を進めているとのことです。

複数の時価総額数千億の企業、株式売却を発表

 株式売却計画を発表した企業には、各業界のスター企業が含まれています。中国最大のソフトウェア開発販売会社の一つである「金山軟件有限公司(きんざんなんけんゆうげんこうし)」、新エネルギー企業の「トリナ・ソーラー」社、中国のエナジードリンク大手である東鵬飲料(集団)などが含まれています。

 金山軟件社は5月31日の夜に、9つの株主が合計600万株、総株式の1.30%に相当する株式を譲渡する計画を発表し、約28.26億元(約553.34億円)の削減を予定しています。

 東鵬飲料も5月30日に、株主が持ち株削減計画を公表しました。同社の13人の株主は、自身の資金需要を理由に集団で株式を削減することを発表しました。発表前の終値を基準にすると、今回の持ち株削減により、約60億元(約1174億円)が現金化される見込みです。

 また、トリナ・ソーラーも大株主による保有株のすべてが売却されることを経験しました。5月26日の夜、トリナ・ソーラーの二社の株主がそれぞれ自身の開発および資金需要を理由に、トリナ・ソーラーの総株式資本額の5.23%に相当する約1億1400万株、および0.42%に相当する約921.13万株の株式を削減(売却)する計画を発表しました。この持ち株削減のニュースの影響を受けて、トリナ・ソーラーの株価は5月29日に急落しました。二社の株主は合わせて約50億元(約979億円)を現金化する予定です。

株式を集中売却する「二つの要因」

 米国在住の政治・経済アナリストで、かつて中国企業のマーケティング担当役員を務めていた陸遠行は、中国の多くの企業が集中的に株式を売却する理由には、経済的要因と政治的要因という二つの要因が存在していると見ています。
陸遠行は、6月3日に大紀元とのインタビューで、次のように述べました。

 まず、経済的要因として、近年のコロナウイルスの流行に伴う封鎖措置が、中国の経済環境に深刻な影響を与えています。また、全体的な政治環境の不安定さも経済環境の悪化をさらに加速させている要因として挙げられます。現在、厳格な統制措置はますます強化され、市場環境は極めて困難であり、各業界が全般的に低迷しているため、多くの富裕層が現金化し、資金を撤退する道を選択しています。

 政治的な観点から見ると、江沢民や曽慶紅を中心とした「江沢民利益グループ」または「江派」と呼ばれる勢力が長年にわたり、中国経済の主導権を握ってきました。しかし、現職総書記の習近平が就任してからは、多くの企業に対して取り締まりを行い、これが江派勢力の反撃を引き起こしています。多くの企業の株主による大量の持ち株削減は、江派の反撃手段と考えられます。

密に行う持ち株削減、もたらす影響は?

 陸遠行は、集中的な株式売却がもたらす影響について、次のように述べました。「資本撤退の直接的な影響は、もちろん、株式市場に下落圧力をもたらすことです。今年の中国全体の環境は厳しい状況であり、経済が低成長の下り坂にあります。市場の消費は縮小し、多くの企業の業績も低下しています。こんな状況下で、多くの企業が現金化のために保有株式を売却し、資本を引き揚げることにより、中国の株式市場の見通しはさらに暗くなるでしょう」

 陸遠行はまた、一般的に、大株主の持ち株削減行為自体が一般個人投資家の信頼に影響を及ぼし、株価に圧力をかけることになると述べました。「大株主が保有化株式を減らすことは、その会社の将来に楽観的ではないことを示すものです。つまり、大株主たちはその会社の株式を長く保有することを望まず、資金を他の場所に移す意図を持っているということです。この行為は市場の信頼にネガティブな影響を与え、通常は株価の下落をもたらす効果があります」

(翻訳・藍彧)