最近、中国の多くの銀行が預金金利を引き下げ、注目を浴びています。若者の中には、より高い金利を得るために、朝6時に高速鉄道で都市を横断し、預金を行う人さえいます。一方で、一部の銀行ではまだ大口預金の金利が調整されておらず、多くの預金者が殺到しています。

預金者、高利率銀行に殺到

 中国のニュースメディア「潮新聞」はこのほど、最近、多くの銀行が預金金利を引き下げたことで、多くの住民が自身の預金収益に不安を抱いていると報じました。

 浙江省杭州市に住んでいる王さん(女性)は、複数の銀行の預金証書を所有しています。その中には、額面30万元(約586万円)、金利2.1%、期間1年の定期預金証書が2枚あります。これらの証書は今年6月14日に満期を迎えます。満期時には、それぞれの預金証書から6300元(約12万円)の金利収入が得らます。

 王さんは潮新聞の取材に対し、日常の経費は預金の金利から賄われていると述べました。2.1%の預金利率は高くはありませんが、まだ受け入れられる範囲だと語りました。しかし、ここ数日、預金利率が再び引き下げられたというニュースを見て、気分が一気に悪くなりました。来月満期を迎える2つの預金を継続すれば、1年間の利率がわずか1.85%になるため、それぞれの預金証書から得られる金利も6300元より750元(約 1.5万円)少なくなるのです。
王さんと同じ悩みを抱える若者たちは、より高い金利を得る方法を見つけました。最近、江蘇省や浙江省に住む多くの人々が上海の銀行に預金するために訪れています。

 江蘇省蘇州市に住む許さん(女性)は、ソーシャルメディア上で多くの人が都市間を横断して預金する経験を共有していると述べました。彼女は電話で問い合わせをし、情報を比較した結果、上海のある銀行が3年間の預金利率が最大3.5%であるだけでなく、ギフトや銀行ポイントももらえることがわかったと述べました。一方、蘇州市では3年間定期預金の利率は3.1%です。

 4月末、許さんと親友は朝6時過ぎに家を出発し、高速鉄道、地下鉄、バスを乗り継ぎ、午前9時半に上海の銀行に到着しました。到着したばかりの許さんは目の前の長い行列に衝撃を受けました。数えてみると、およそ50人が並んでいました。その中には、彼女と同じように週末を利用して別の市から来た若者もいました。許さんは最終的に3年間の定期預金を契約することができました。

 許さんは、「50万元(約1000万円)の預金は3年後に52500元(約100万円)の金利を得られる。蘇州市の地元銀行の利率と比較して6000元(約12万円)多く稼ぐことができる。だから、都市を横断して預金する価値はあった」と述べました。
 
大口預金に預金者が殺到

 一部の銀行は預金利率を引き下げましたが、大口預金利率をまだ引き下げていないため、多くの預金者の注目を集めています。

 5月8日の朝、杭州市の渤海(ぼっかい)銀行で、一人の銀行員は潮新聞に対し、「当行の預金利率が5月5日から引き下げられたが、「大口預金利率はまだ調整されておらず、開店からわずか30分で3.3%の3年間大口預金が完売した」と述べました。

 杭州市錢江新城(せんこうしんじょう)にある上場銀行では、わずか30分の間に4人の顧客が預金金利の相談のために訪れました。銀行の顧客マネージャーは潮新聞に対し、「忙しくて水を飲む暇もない!支店の上司から3.3%の大口預金の目標金額を報告するよう指示されており、現在金額を集計中だが、大口預金を希望する顧客からの催促が迫っている」と述べました。
 
中国経済の低迷が銀行金利の引き下げを招いた

 上記の現象について、米国在住の政治・経済アナリストである陸遠行氏は5月10日、大紀元に対して、これは実際には中国の経済状況が非常に悪いことを反映しており、投資で利益を上げるのが難しいため、「人々は投資を控え、銀行にお金を預けて金利を稼ぐことにした」と述べました。

 陸遠行氏によれば、経済状況が良好な場合、各種金融投資の収益率は銀行の預金利率よりも高くなるため、大口の資金を持つ人々は通常、数千元の金利には興味を持たない傾向があります。しかし、現在は人々が投資ではなく貯蓄を選び、細かい利益計算まで行っており、遠くまで足を運んで列に並ぶことさえ厭わないほどです。

 陸遠行氏はまた、この現象が国民の消費意欲の低さを示しているとも指摘しました。「人々は、将来に対して楽観視出来ないため、お金を使い切ると再び稼ぐことが難しいと認識している。特に中国共産党政権下では、医療や老後の年金などが十分に保障されていないため、緊急の事態に備えてお金を準備しておく必要がある。数年にわたる新型コロナウイルスの流行により、人々は政府に頼ることができず、自分自身でお金を貯める必要性を痛感している」

 さらに、陸遠行氏は、預金利率の引き下げも中国経済の低迷が原因であると述べました。「中国の中央銀行は経済を刺激するために通貨を発行し続けているが、消費の回復が十分ではなく、利率をさらに引き下げて消費を刺激しようとしている」

 中国政府は現在、預金金利に対して税金を課していないことがわかっています。なお、記事中の為替レートは2023年5月17日時点のものであり、1中国元=19.5363円となっています。

(翻訳・藍彧)