スクリーンネーム「老蛮(ろうまん)」という経済・金融の専門家が最近、中国国家統計局が公開しているビッグデータをもとに、中国の不動産業界全体がすでに破綻しており、その原因を解析しました。

 ここでは、「老蛮」による中国の不動産業界に関するビッグデータの解析結果を紹介します。

 これは2000年から2023年第1四半期までの不動産業界のキャッシュフロー統計表で、中国国家統計局が公開しているデータから「老蛮」がまとめたものです。キャッシュフローとは、企業がある期間内における現金の入出金の状況を示したものです。

 統計表の1列目は不動産の売上額です。

 2列目は15%の税率(販売額×15%)で算出した納税額です。この税率は過小評価される可能性があっても、過大評価されることはありません。

 3列目は不動産デベロッパーの実際の投資額です。この金額は、固定資産投資に分類される開発投資額とは異なり、土地の購入、物件の建設コストや住宅の施設・設備の設置コスト、管理など実際の運営支出に使われるキャッシュフローを指しています。

 この3つのデータがあれば、「売上金額-税金-実際投資額」という計算式で、4列目にある不動産デベロッパーのキャッシュフローを算出することができます。

 明らかに、不動産業界全体の運営キャッシュフロー純額は常にマイナスになっていることが分かります。2000年以降から2023年3月まで、このマイナス状態が続いています。

 5列目は、建設中のプロジェクトを示す建設仮勘定(建設中の物件)であり、実際には不動産デベロッパーが保有する資金です。将来的には債務返済に使えるお金です。

 6列目は完工物件の面積を示しています。

 では、これらのデータについて詳しく説明していきましょう。

 2000年以降、不動産デベロッパーの運営キャッシュフロー純額は枯渇し、常にマイナスであり、しかもその額は非常に高くなっています。これはただ1つのことを示しています。つまり、住宅の商品化が開始された2000年以来、不動産業界全体が一度も黒字になったことがなく、運営キャッシュフロー純額はマイナス状態が続いているということです。

 不動産デベロッパーは、全ての利益を生産拡大に投資し、それでも不十分であるため、借金をして投資を続けています。その結果、キャッシュフローのマイナスがどんどん大きくなっています。

 2000年から2023年3月まで、不動産デベロッパーの負債総額は65.82兆元(約1300兆円、1元19.51円での換算、以下同)に達しています。このマイナスのキャッシュフローは、借金で埋めなければなりません。不思議なのは、この65.82兆元(約1300兆円)が地方政府の負債総額とほぼ等しいことです。これは偶然でしょうか?全国の不動産デベロッパーは全国の地方政府と同じく負債しており、しかもその負債規模も非常に近いです。

 不動産デベロッパーの年間投資額は、2021年が最も高く、20.11兆元(約400兆円)に達していました。2022年になると、不動産市場が急激な低迷に陥り、人々が新築物件を買わなくなり、そのため、不動産デベロッパーのキャッシュフローが急激に悪化しました。その結果、上位100社のうち40社以上が債務不履行に陥ったのです。

 また、2022年の年間投資額は14.9兆元(約300兆円)にまで激減し、減少率は25.9%に達しました。投資額の大幅減少は、必然的に物件の完工面積にも反映されることになります。2022年の完工面積は8.62億平方メートルで、2021年の10.14億平方メートルに比べて15%減少しました。

 2023年の第1四半期においても、不動産デベロッパーの投資額は3.47兆元(約68兆円)で、2022年同期の3.83兆元(約75兆円)に比べて9.2%減少しています。これは、不動産デベロッパーが依然として支出削減を余儀なくされていることを示しています。

 不動産デベロッパーの負債総額65.82兆元(約1300兆円)は、74.64億平方メートルの建設中物件に相当します。

 建設中物件は不動産デベロッパーの資産ですが、それらが売却された場合にどの程度の収益を生み出すか、それらの収益が65.82兆元(約1300兆円)の負債総額をカバーできるかどうかは、様々な要因に依存します。

 たとえば、建設中物件の地理的な位置、市場需要、完成時期、販売価格、販売戦略、地価の動向などが考慮されます。したがって、一概に回答することはできません。ただし、負債が巨額であることと、2022年に不動産デベロッパーが多数の債務不履行に陥ったことを考慮すると、建設中物件の収益が負債総額をカバーすることは困難である可能性があります。

 楽観的に考えて、不動産デベロッパーが建設中物件の工事費用を滞納していなく、予定通りに支払ったと予想しましょう。

「老蛮」の計算によると、不動産開デベロッパーが所有する全ての資産は最大で77.99兆元(約1522兆円)の収入に換算できるが、そのうち11.47兆元(約224兆円)の工事費用と11.7兆元(約228兆円)の税金を差し引くと、残りは54.82兆元(約1070兆円)で、不動産デベロッパーが背負っている65.82兆元の負債総額を返済するには全く不十分です。つまり、中国の不動産業界の負債と資産の間には、約11.7兆元(約228兆円)の巨大なギャップがあります。不動産デベロッパーが建設中のすべてのプロジェクトを順調に販売できたとしても、財務的なギャップを埋めることはできません。

 このギャップを補うためには、政府は不動産デベロッパーが納めるべき11.7兆元の税金を完全に免除することが唯一の方法であると考えられます。しかし、それは不可能だと「老蛮」考えています。

 したがって、中国の不動産業界は負債超過の状態にあり、つまり全体的に破綻状態にあると言えます。現在、彼らは破綻の嵐が発生するのを遅らせることに必死です。

 これが中国式の債務危機の根源であり、回避することはできないのです。

(翻訳・藍彧)