中国当局は最近、外資系企業に対する規制を強化しています。在中国米国商工会議所(以下、米国商会)はこのほど、声明を発表し、中国当局のこの動きは、中国でのビジネスの不確実性とリスクを高めていると指摘しました。このような背景から、一部の国際投資家は中国市場から撤退し始め、1週間で約4300億円の資金が引き上げられました。

中国当局、外資系企業への規制強化

 中国当局は最近、外資系企業に対して一連の措置を講じています。

 上海警察は、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの上海事務所を捜査し、従業員に事情聴取をしました。

 北京警察は、米国のデューデリジェンス(資産査定)会社ミンツ・グループの北京事務所を捜査し、中国人従業員5人を拘束しました。

 中国当局は、米国アイダホ州ボイシ市に本社を置く、半導体製造の多国籍企業でチップメーカーであるマイクロン・テクノロジーに対し、いわゆる「国家安全保障」と称する調査を開始しました。

 英フィナンシャル・タイムズの報道によると、中国警察によるベイン・アンド・カンパニーの捜索で、拘束された者はいなかったが、一部のスタッフの携帯電話やパソコンが没収されました。ベイン・アンド・カンパニー社は「中国当局と協力している」と述べました。同記事は、緊迫化する米中関係から、中国当局が米国企業に報復するのではないかとの懸念が在中米国企業の間で高まっていると見ています。

中国「反スパイ法」改正案を可決、スパイ行為の定義拡大

 2014年に成立した「反スパイ法」の改正案は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の常務委員会で4月26日に可決され、その後で詳細が公表されました。7月1日付で施行されます。

 改正法が可決されたことで、スパイ行為の定義が拡大され、政府機関や情報インフラに対するサイバー攻撃が含まれるようになりました。また、国家安全保障に関するあらゆる文書やデータ、資料、記事を含む国家機密の所持が禁止されることになりました。

 この改正により、外国人がスパイ容疑で当局に拘束されるケースが増える可能性があり、多くの外資系企業の経営陣は、外資系企業で働く中国人や外国人がいつでも逮捕される可能性があると不安を抱いています。

 これに対し、米国商会は新たに追加された内容により、中国でのビジネスはより大きなリスクと不確実性に直面するようになると述べました。一部の外資系企業の上層部は、この一連の措置により、外国企業が通常の事業運営に必要な関連情報を収集する能力を最大限に制限され、それによって中国企業に対する外部の評価と見方を制御すると考えています。

 中国経済を活性化させるため、中国の李強首相は3月30日、海南省で開催されている「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」の基調演説で、中国は「世界の平和と安定の錨」だと述べたほか、自国経済の回復について楽観的観測を示しました。しかし、外資系企業に対する彼のこの掛け声の効果は、明らかに当局の外資系企業に対する取り締まりの影響に敵わなかったようです。

外資系企業に高まる懸念

 台湾の国営通信社「中央通訊社」によると、米国商会は声明を発表し、中国に拠点を置く米国の専門サービス企業や米国のデューデリジェンス社に対する北京当局の取締りの強化に注目していると述べました。これらの企業が提供するサービスは、中国を含むあらゆる市場において投資家の信頼を築くために重要で不可欠であるとされています。

 4月26日に発表された米国商会の最新の世論調査によると、中国の都市封鎖が解除された後、中国に拠点を置く米国企業の9割近くが、米中関係の今後の行方について悲観的になっており、中国でビジネスを展開する上で最大の懸念事項となっています。

 また、欧州企業107社を対象に実施された在中国欧州連合商工会議所の新しい調査でも、欧州と中国の貿易・通商の見通しは不透明であり、中国での研究開発への投資に対する欧州企業の消極的な姿勢が増えていることが示されています。

 さらに、外国のファンド管理機構も中国株式市場から次々に撤退しています。米調査会エグザンテ・データの統計によると、上海と深セン・香港ストックコネクトのクロスボーダー取引メカニズムを通じて、過去5取引日に31.7億ドル(約4300億円)もの資金が中国株式市場から引き揚げられ、昨年11月以来最高額となりました。

(翻訳・藍彧)